31…鷹と蓮(1)

未だに不安な目をしてる紫音


「行ってくるね」

「行ってらっしゃい、気をつけて」


《テレポート》で桜井組の自室に移動する

ローブを纏い手袋をし、楼の部屋へ行く


「俺の隣にいろ。紫音はどうだ?」

「ちゃんと見送ってくれました」


楼と話してる内にスタ…スタ…と足音が


「兄貴、俺だ」

「入れ」


蓮は私を見ると立ち止まり


「昼間の…何で、コイツがいんだよ」

「関係者だ」

「…」


蓮は私を睨みながら近寄ってくる


「蓮、コイツは鷹だ」

「タカ?」

「組で、影で動いてる」

「影?どういう事だよ」

「誰もコイツの存在は知らねぇって事だ」

「誰も?」

「ああ、俺と酒向しか知らねぇ。だから蓮…」


楼が少し目を鋭くし


「鷹の存在は、誰にも言うな。何があってもだ」

「!?  分かった。でも…何で俺に教えるんだ」

「お前の護衛をするからだ」

「…………は?………はぁ!?何で!?俺は護られる程弱くねぇ!!

    しかもコイツが!?影で動いてんだよな!?護衛って、存在がバレんだろ!?」

「影で動くのは変わらない。誰にも姿を見せず、お前を狙う奴を潰す」

「誰にもって、じゃあ何で俺には教えんだよ」

「お前は気配に敏感だからな、知らない奴が側にいたら無駄に警戒しちまうだろ」

「…コイツを動かす理由は?俺は白狐の総長やってんだぞ」

「お前が弱かろうが強かろうが関係無ぇ。

    お前を狙う奴は、鷹が対処する方がいい…それだけだ」

「…どういう意味だ。コイツは何か違うのか?」

「それ以上は、お前が知る必要は無ぇ」

「んだと…」

「お前は、鷹を知っとけばいい。お前が敵に気付く前に処理する」

「…」


そりゃあ、なかなか納得出来ないよなぁ

…しょうがない、百聞は一見にしかずだ


「桜井さん、見せた方が早いです」

「…分かった」

「桜井蓮」

「!…何だ」

「一度だけ見せてやる、それで納得しろ」

「何を…」


蓮が言葉を発しながら瞬きした瞬間、蓮の背後に《テレポート》し

首に手刀を軽くトンッと当てる


「…っ!」


蓮は首を手で庇い、目を見開いて後ろにいる私を見る


「な…っ、い、今…何が…」

「お前が瞬きした瞬間、背後に移動し首に手を当てた」

「瞬きって、一瞬だぞ…!?お前、一体…」

「これで納得しろ。鷹、戻れ」

「タカってのは、鳥の鷹でいいのか?」

「ああ」

「そうか。じゃあ兄貴…条件がある」

「…条件?」

「コイツの素顔、見せてくれ」

「駄目だ。鷹はあくまで影の存在、存在を知ってても顔は見られる訳にはいかねぇ」

「…何も教えてくれねぇのか」

「本当だったら、蓮…お前にも言わずにおいていた。

    だが今回の敵はお前を狙い、鷹が適任だから話したんだ。」

「…兄貴と、酒向も知ってるっつったよな」

「ああ」

「酒向は鷹の何を知ってる」

「酒向に聞いても何も答えねぇよ」

「…」

「話は以上だ。部屋に戻れ」


蓮は襖を開け、振り向き様に私を見て出て行った


「もう、いいぞ」

「ん。楼…」

「何だ?」

「弟いたんだね」

「あ、ああ」

「紫音も高校から知り合ったって言ってた。」

「離れて暮らしてたからな。和士も知ったのは最近だ」

「そう。どうりで2人が似てる訳だ」


あれ、ちょっと待って


「楼、前に私が桜井蓮に似てるって言った時…偶々って言ってたよね?」

「…」

「どういう事?」

「その後だったからな、俺が蓮と再会したのは」

「ふ〜ん。あれ、でも「そろそろ、帰った方がいいんじゃねぇか?」

「あ、そだね。帰る」


長居してると紫音が不安がる


「じゃ…」

「ああ、蓮を頼むな」