穏やかな時間

蓮side

翌日

栞がカイに俺達が着けてるのと同じのを作るっつったから

それまでカイと遊んでる


「なぁ」

「何だ?」

「どうしたの?」

「皆が戦ってるとこは見てたけど、実際どんな魔法が使えるんだ?」

「「…」」


俺はフェニアを呼び出し


「俺は火属性の魔法が使える、コイツは俺に宿ってる精霊のフェニアだ」

「俺は風属性だよ、ジル」


紫音の隣にジルが出てくる


「レンは火、シオンは風…、じゃあシオリは?」

「栞は全部の属性が使える」

「!? …ぜ、…んぶ…っ!?」

「それと、無属性魔法も使えるよ」

「無属性魔法…。そんなの、聞いた事無ぇよ…」


その時だ


「出来たよ〜」


作業を終えた栞が手招きしてる


「? 出来たって?」

「いいから、行こうぜ」


栞の元に行けば、出来上がった物がカイの手に


「? 白い…、何だ?コレ…?」


俺と紫音も覗く


「素材は貝殻っぽいけど、形はドラゴンの牙みたいだね」

「っつうか、何で貝殻で?」

〔うむ カイが身に付ける物ならば、どうせなら海に連なるモノが良いからな〕

〔ですが、ゼルファが帰ってきた時点で形がソレに変わってましたね〕

〔まさか最初からそんな形があるとは考えにくいしな〕


レノとラルフが、何か呆れてる…


〔ハハハッ!我が家族になるのだからレン達と同様の物が良かろう?

 帰ってくる間に加工してやったのだ!〕

〔そして私の加護の力と、シオリ様の力を組み込ませてあります〕

「かご?」

〔悪い魔法から護る力の事です〕

「シオリの力ってのは?」

「私のは、攻撃されても跳ね返す力」

「昨日、アイツ等からの魔法を止めてたヤツか!?」

「そんな感じだね」

「スゲェッ!ありがと!!でもコレどうやって着けるんだ?」

〔首に近付けてみろ〕

「?」


カイが不思議そうに首に近付ければ、貝殻から銀の糸が出てきてネックレスに


「!? 何で?勝手に首に掛かった!?」

〔ハハハハッ!良い反応だ!

 それには我の力もあるからのぅ!

 身に着けておれば、動物の言葉が分かる様になるぞ!〕

「スッゲェッ!

 …あれ?さっき、レン達と同じ物って言ったよな?シオリ達も持ってるのか!?」

「蓮と紫音が持ってるよ、紫音は形が違うけど」

「? シオリは持ってないのか?」

「私は物じゃなくて、体にあるの」

「?」


栞がカイにドラゴンの鱗がある手首を見せる


「!? 全然気付かなかった…」


カイはジーッと鱗を見て


「触ってみてもいいか?」

「いいよ」


カイはそっと鱗を触る

鱗は日の光を反射して光ってる


「スベスベしてる、…綺麗だな」


カイは栞と俺と紫音の手首を見比べ


「何でシオリだけなんだ?」

「…、それはね…、」

「「…」」


あの事を話すべきか…

言い淀んでると、ラルフが栞の手をペロ…と舐める

栞は微笑んでラルフを撫でる


〔話しても良かろう〕

「ゼルファ…」


栞は不安な表情だ


〔カイは我が家族となったのだ

 これから共にいるのなら、隠し事となる前に話しておいた方がお互いの為になろうて〕


ゼルファはカイに、真剣な眼差しで


〔カイ、シオリ達は今…強大な敵がおる〕

「強大な、敵?」

〔うむ …悪魔だ〕

「!? あ…っ、悪魔!?」

〔うむ シオリ達と共にいるという事は、時に危険が迫る事がある

 無論、カイはシオリや我等が護る〕

「…」

〔我はの、その悪魔と契約しておる者に命を狙われておった

 それを助けてくれたのが、シオリ達なのだ

 シオリが疲弊した我を身に宿してくれたお陰で、我は生きておる

 我を宿したから、体に鱗があるのだ〕

「そうなのか…」

〔その後、悪魔と契約者はシオリ達の家族を殺め

 それをシオリの仕業にさせ、国から追い出したのだ〕

「!?」

〔故に、素性がバレぬ様に外では仮面を着けておるのだ〕

「…そう、だったのか」

〔カイ、お主は我が家族

 1人だけ何も知らぬのは辛く、寂しい事だ

 故に話した

 まだ理解が追い付かぬだろうが、知っておいた方が良いであろう?〕

「ああ、まだ頭がゴチャゴチャしてるけど…

 要は俺達には敵がいて、それが悪魔って事だろ?」

〔うむ〕

「俺でも、悪魔ってのが強いって位は分かってる

 だから俺、強くなる!

 今よりももっと強くなって、シオリ達と一緒に戦う!

 いや、俺がシオリを護るんだっ!」

「「…」」


思わず呆気にとられる

栞はカイにニコッと笑顔を向け


「カイ、ありがとう」

「シオリは俺を助けてくれた、だから今度は俺がシオリを助けるんだ!

 だから…」


カイはゼルファに目を合わせ


「ゼルファ!俺を強くしてくれっ!」

 


ゼルファはニヤ…と口角を上げ


〔良かろう。お主は若い、いくらでも力は伸びる

 我が直々に鍛えてやろうぞ!〕


そうしてカイはゼルファに色んな事を教えてもらう様になった

 


カイが新しい環境に慣れてきた頃

市場に一緒に来てる


「シオリ、今日は何するんだ?」

「カイの服を買うの」


ここへ来た時、ただで服を貰った店に行く

今では常連だ


「こんにちは、ケルトさん」

「!どうも!いらっしゃいませ!」

「あの、この子に合う服が欲しいんですけど」


ケルトさんはカイの目線に腰を下ろし


「こんにちは!私はこの店のオーナー、ケルトだ!」

「…こ、こん…にちは」

「お名前は?」

「…カイ」

「カイ君だね!何か好きな色はあるかな?」

「え…、っと…」


ケルトさんがカイの好みを聞いた後、子供コーナーに


「カイ君、コレはどうかな?」

「コレなんかどうだい?」

「コレも似合いそうだねぇ」


アレやコレと次々と服が増えていき

店を出る頃には蓮と紫音の手には買い物袋だらけ


「…一旦帰ろっか」

「「…おう(うん)」」


買い物が午前中に終わったから、昼からはカイの魔法の練習

それ以外にも武術、体術等

蓮と紫音が言う…チートなゼルファのお陰で

カイは子供ながらに色んな事を学んでる

そして、やっぱりというか…、カイは水魔法が得意だ

それに海の生き物と会話が出来る

海に入れば、水の抵抗なんか無視のスピードで泳ぐ

流石は魚人族…

あと必要なのは、持続とコントロールだけ

練習を見てる中で驚いたのは、魔力の保有量が凄い

ゼルファは恐らく血筋だと言ってた

前に、人身売買の奴が言ってた『魚人の王族』

きっとソレが関係してるって

まあ…、それはどうでもいんだけど

だから、今からでも少しずつ大魔法を教えてもいいだろうってゼルファが面白がってる


そんなこんなで、カイとの楽しい暮らしを満喫した