SSクエスト(2)

それからも

私達はSSランクのクエストを日々こなしてる

集団で来たり囲まれたりと

色んな戦闘スタイルを強いられるけど、腕を上げるには丁度良い

私達が戦ってる間、ゼルファに動物が巻き込まれない様に安全な所に誘導し護ってもらう


ギルドに報告しに戻れば

ワイワイと賑やかな音と声が


「お!お前等、もう帰ってきたのか!早ぇな!!」

「早くこっちに来いよ!」

「「お〜」」


蓮と紫音はすぐにここの人達と仲良くなった


「報告は任せて」

「え?」

「でも…」

「ミルデに言うだけだから

 早く、呼ばれてるよ?」


ミルデとは、ここの受付嬢だ


「おう」

「行ってくる」

「ん」


2人が騒いでる中に行くのを見届けて

私はミルデの元へ


「ミルデ」

「おかえりなさい」

「ただいま」

「今回も早かったわね」

「ん 被害も「出てないのよね♪」」


ミルデによると、平気で建物を破壊する人とかがいるらしい

そうじゃなくても自然や動物、一般人に被害が及ばない様に討伐をするのは大変らしい

そんな中、SSクエストで被害を全く出さずに遂行するっていうのは

依頼人含め運営側にとっては、とってもありがたい事…ってミルデが言ってた

実際を言えば、修復出来てるだけで私達だって壊しちゃう時はある

自然なんかはゼルファの力があってこそだから、話さずにいる


「ミルデ、いつもの「はい、どうぞ♪」」


言葉を言い切る前に出されたのは

エストを終えてから必ず飲むミルクティー

最初はこっちの世界でもあるんだってビックリした


「ありがと」


カウンター席に腰を下ろし、ホッと一息つく


「ねえシオリ、少しだけでいいから…仮面、取ってくれない?」

「…何度言わせるの、ダメ」

「やっぱりダメか〜…」


ここに来てから色んな人が仮面を取ってと言ってくる

そういえば、ミルデが最初だったな


『ねぇ、何でいつもフードと仮面着けてるの?』


カウンター席に座ってたら

カウンターの内側に居るミルデが首を傾げてる


『…、』


蓮と紫音を横目で見る


『大切な人達を、護る為』

『…』


ミルデは少し考えた後


『…そっか。じゃあもう1つ質問!

 何で1人でここに居るの?』

『…』

『レンやシオンと一緒に、…皆と一緒に、…どう?』

『…』


私はミルデが分かる様に、微笑んで


『…ありがと』


ミルデは私が初めて見せる口元の表情に驚く

でもすぐに優しく微笑んで仕事に戻る


最初は、見た目で討伐は止めた方がいいと言われたけど

エストの受注と報告をしてる内に、今の感じになった

ミルデはお姉さん的存在で

あまり話したくない時とかは、深入りしないでくれる

蓮と紫音も、皆と話してても気に掛けてくれてて

無理に輪の中に入らせようとせず、静かに見守ってくれる


報告後はミルクティーを飲みながら、ギルドの書庫から借りてきた本を読む

ちなみにラルフは子犬サイズで私の腕の中で寝てる

何故、人の目がある所で堂々と寝てるのか

実はゼルファが


〔人間には動物を常に連れておる者もおる

 狼ではなく犬だと思われ、言われるのを耐えられれば、

 外で堂々とシオリの側におれるぞ?〕

〔…〕

『ラルフ、…どう?』

〔主の側にいられるのであれば、何にでも耐えられます〕


という訳で、家以外でも気兼ね無くラルフといられてる

 

 

紫音side

皆と話してると、離れてる席で複数人が姉さんをジッと見てる

でもそれは、良い視線なんかじゃない…

疑ってる様な…、警戒してる様な視線だ

ムカつくけど、誰にだって仲良く出来ない人はいる

姉さんも視線には気付いてるだろうけど、気にしてないし

だから俺も、気になるけど何もしない

俺が何かして姉さんに変な言い掛かり付けられても嫌だしね


もう少しで日が暮れるな、周りは帰り支度をしてる

俺と蓮も姉さんに近寄り


「そろそろ帰る?」

「ん」

「帰るかぁ」


ギルドを出て、市場で食材の買い足しをして

少し離れてる森の中に

進んでいけば、そこそこ大きなツリーハウスが

ここが俺達の新居だ


ステータスカードを貰った日に、ミルデさんに住める処も聞いたところ

ここを紹介された

昔、どこかの金持ちが別荘として建てたらしいけど

思った以上に夜の動物の鳴き声が煩かったらしく

こんなとこで寝れるかっ!って怒ったらしい…

取り壊すにも費用が掛かり、別荘として管理するのも面倒くさがって

結局そのまま放置したそうだ

ただ…、いつまででも新築同様にと

年月がいくら経とうが、人の手を加えずとも朽ちる事が無い様にと魔法が掛かってるらしい

その金持ちはもう亡くなってるし、ご家族からも好きに使ってくれとの事だ


正直、とても助かってる

必要な家具は揃ってるし、部屋が沢山ある

夜の動物の鳴き声は、何もしなくても解決した

何でも、ゼルファとラルフの気配で大人しくなってるらしい

ここなら人ともあまり出会わないし、何より静かで心地良い


そして

自然に囲まれてる場所で心が落ち着いてれば

仮面を取っても大丈夫だとゼルファが言ったから

だから…、ここは姉さんにとって心から安らげる場所になってる

俺と蓮は、その事に心から安堵した