SSクエスト(1)

ギルドに加入してから数日

今日は、ある資産家の保有する希少な鉱石を狙う魔物の討伐だ

土属性の魔物でそれ自体はそんなに厄介じゃないけど

資産家が、依頼を受けるならSSランクの者をって条件を出してて

何か少しでもミスれば大袈裟に文句を言う厄介な常連らしく

そんな誰もやりたがらないクエストをラーガに押し付けられた


鉱石は夜に一番魔力を発するらしく

その特別な魔力を求めて、魔物が夜な夜な現れるらしい

私達が受けるまでは、職人に頼んで魔力を抑え込む箱に入れてたそう

その鉱石は資産家が有する森でしか発掘出来ず、高級武具の製造には欠かせないモノらしく

どれだけ魔物が襲ってこようが、絶対に手放せないんだとか


夜になってから、討伐の為にわざと鉱石を外に出してもらい

魔物が来るのをじっと待つ

資産家の家の周りは殆どが森だから、あらゆる所から魔物や動物の鳴き声が聞こえる

家の正面はサノ国の街並みが見え魔物が現れる可能性は少ないから

蓮は家の後ろ側、紫音と私はそれぞれ横側に

サイコメトリー》で魔物の位置を特定し


“蓮、2時の方向…3体向かってくる”

“了解”

“紫音は正面から5体”

“オッケ〜”


意識を正面に向ければ


〔グルルルッ…!〕


唸り声を上げながら6体の魔物が


〔ガァァァァッ!!!〕


飛び掛かってくる魔物の動きを《サイコキネシス》でピタッ…と止める

額に少し触れて、住処を探る


…ここから数m先に洞窟らしきモノが、そこか


探りが終われば、首をはねて火で燃やす


「終わったぞ〜」

「俺も終わったよ」


蓮と紫音が魔物の一部を持って来る

ソレに触れて、同じ様に住処を探る


「ま、魔物は倒せたのかぁっ!?」


依頼主が窓から顔を覗かせてる


「はい もう大丈夫です

 今から住処に行ってくるので、鉱石をしまって下さい」


依頼主が慌しく鉱石をしまって家に入るのを見届けた後


「じゃ、行こっか」

「「おう(うん)」」


住処は4ヶ所

別々に討伐に向かい、あとの1ヶ所はゼルファが人型になって行ってくれた


洞窟の手前まで行くと、地中から複数の気配が

でも、襲ってこない


〔主、どう致しますか?〕

「入ってみようか」


試しに中に入れば、ボコッ!と次々と外の地面から魔物が出てくる


「…なるほど」


住処に入った者の退路を塞ぎつつ、奥からもゾロゾロと現れる

まさしく袋の鼠


「知性が無いに等しいけど、本能的にちゃんと学習はする訳だ」


ラルフが肩から降りてサイズを変える


〔ヴゥゥゥッ…〕


魔物は少し怯んでるけど、唸り声を上げながら次々と迫ってくる

伸びてくる数本の腕を掻い潜りながら《サイコキネシス》で切り落とす

ラルフも腕や首を嚙み千切る

後ろから風の斬撃を浴びせれば、叫ぶ間も無く首が落ちていく

すると、ザッザッザッ…と奥から駆けてくる足音が


「ラルフ」


ラルフがこっちに走ってくると同時に

壁に手を付け


《ソーン(棘)》


あらゆる所から土の棘が形成され、向かってくる魔物に深々と刺さっていく

洞窟内の魔物の気配が無くなり、外に出ると

気配がまだ地中に

…でも現れない


《エクサイメント(盛り上がり)》


地面がボコッボコッ!と盛り上がり、魔物を無理矢理出す

空中に投げ出された奴等の首を《サイコキネシス》ではね

ラルフも飛び掛かる

見渡す限りに魔物を倒し、気配を探る


〔ここ等の魔物は全て倒した様です〕

「みたいだね」


魔物を火で燃やし、棘だらけの洞窟や盛り上がったままの地面を元に戻す

ラルフに付いてる魔物の体液も綺麗に落とす


〔ありがとうございます〕


頰を舐める舌を擽ったいと思いながら、蓮と紫音とゼルファの状況を把握する


「他も片付いたみたいだから行こ」

〔はっ〕


蓮と紫音も、燃やしたり風化させたりして魔物を消していった

私が2人と合流する頃にはゼルファも合流した

後は傷付いた自然の修復だ

自然を治すには、ゼルファから貰った力を使うとより上手くいく

しかも、悪い魔物が寄り付かなくなるらしい

 

 

紫音side

俺達は少しだけ離れ、姉さんとゼルファが森の中心に立つ

姉さんが目を瞑り集中すると、白く光り始め

開いた目は、ゼルファと同じ竜の目に

顔や腕にスゥ…と鱗が現れ、爪まで竜化する

両腕を横に上げれば、上空に白く輝く魔法陣が

ソレからキラキラと光の粒が森に降り掛かり、討伐で傷付いた痕が治っていく

姉さんを見れば、肩で息をしてる


〔もうよいぞ、ご苦労だった〕


姉さんがゆっくりと腕を下ろせば、魔法陣が消える

蓮は姉さんの頭を撫で


「お疲れ、後は任せろ」

「…、ん」


姉さんが蓮に凭れ掛かると、すぐに寝息が聞こえる

蓮が抱き抱え、顔を覗けば次第に鱗が消えていく

ゼルファの力を使うのはコレが初めてじゃない

ゼルファを体に受け入れて、絆もあるから

暴走、なんて最悪な事にはならない

でも神竜の力を使うのは、精神や身体に思った以上に負担が掛かるらしく

最初の頃は少し竜化しただけで気配や五感が敏感になり過ぎて困ってたし

魔法を使うどころじゃなくなった

竜化を解いたら寝るというよりも気絶してた

ゼルファが付きっきりで指導してくれて

今ではさっきみたいに魔法が使えて、竜化を解いても気絶はしなくなった

姉さんは蓮に任せて

俺は依頼主とギルドに結果を報告しに行った