悪魔(1)

クロト兄さんが帰ってきて数日

兄さん…、兄様はお父様と学んできた事を話してる

呼び方は、再会した時に元々の呼び方でってお願いされたから


蓮と紫音はゼルファを相手に稽古をしてる

どれだけやっても傷1つ付けられないらしい…

でも2人は、最初の頃とは大違いで

魔力を使いこなし、持続も出来る

勿論私もだ

知識、武術、剣術、魔法

人並み以上に上達したと思う

 

稽古が終わったら街に出掛けるのが日課

毎日を皆で楽しく過ごしてる

そんなこんなで

国全体で、穏やかに幸せな日々を送ってる

 

 

アイツが現れるまでは…

気付いた時には、手遅れだった

 

 

ある日の夕方

ある人物が召喚魔法を発動する

魔法陣は黒い光を放ち


「や〜っと召喚してくれたかぁ

 これでや〜ぁっと、アイツに絶望を味わわせれる

 そして想像を絶する苦痛を以て死ぬんだっ!

 さあ、案内してくれ

 アイツの死に場所へっ!!」

 

 

ザキロ王side

夕食を待つ間に自室でゆったりと読書をしていると

コンコンッ


「お父様、クロトです」

「入りなさい」


ガチャッと扉が開き、クロトが近寄る


「何だ?」


クロトに目を合わせるが


「? クロト?」

「…」


何かがおかしい…

目は合ってるが、光が無い


「クロト、どうした?」


すると

クロトから黒い霧が出てくる


「!?」


クロトは表情を変えず、剣を抜く


「!? クロトっ!?」

〔主!〕


ワシの精霊が目の前に現れ、クロトが見えなくなったのと同時に

胸にズブッ!と剣が刺さった


「…っ、ク…ロ……ッ!」

〔へえ、流石一国の王 良い精霊持ってんなぁ〕

 

視界が霞んでいく中で見えたのは

クロトの横にいる、見覚えのある者の姿…

 

 

同時刻

蓮と紫音、ラルフや精霊達と自室で過ごしてると


〔!? シオリ様!〕

「レノ?」


レノが焦りの表情で


〔闇の力を感じます!それも国王の部屋で!!〕

「「「!?」」」

「手を!」


蓮、紫音と手を繋ぎ《テレポート》をしようとするも


「栞?」

「姉さん?」

「…っ」


何で?


「…《テレポート》出来ない…っ」

《!?》

〔…〕


レノが天井を見上げる


〔この城、…いえ、国全体に闇の力が働いています

 《テレポート》出来ないのは、その所為かと…〕

「国全体!?そんな大きな闇の力に皆気付けなかったのか!?」

〔…申し訳ありません

 私が皆様に光の加護を付与している所為です

 この加護は闇や悪魔の力から護るモノ、シオリ様のお力で効果が増大しています

 故に、気配すらも感じ取れなかったのです」

「レノ、そんな凄い加護をありがと」

〔…っはい〕

「とにかく、お父様の部屋まで急ごう…っ!」


もう少しでお父様の部屋に着く時

ふと…


「レノ、ラルフ、私の中に入って、…ゼルファも」

〔〔〔ですが(だが)っ!〕〕〕

「早くっ!!」


私の中に入るのを確認し


「蓮と紫音も、フェニアとジルを隠して…っ、早くっ!」

「栞、どうしたんだ?」

「分かんない…、けど、感じたの」


皆を護る為に、精霊を隠さなきゃって


お父様の部屋の扉をバンッ!と開くと


〔あぁあああああああああああっ…!?!?〕

「「「!?」」」


お父様の精霊が、黒い霧に侵食されてる!?

そして、精霊界に還る筈の魂をも黒い霧が飲み込んだ

精霊が消え、奥に居るお父様が見える


「「「!?」」」


お父様が…、血を流して


「お父様ぁっ!!??」

「「父さんっ!!??」」

「お?漸く来たかぁ」


黒い霧の横に1人


「!」

「!? お前は…!?」

「アル…っ!?」


黒い霧を纏うアルはニヤァと笑顔で


「久し振りぃ?

 あの後さぁ?君をどうやって殺そうか考えたら

 コイツが良い案を出してくれてね?」


アルが黒い霧を指差す

霧が徐々に薄くなっていき、現れたのは


「!? 兄…さ…ま…?」


兄様が緩慢な動作で振り返ると、光の無い…真っ黒な目で私達を見る


「ああ、案を出したのはコイツじゃないよ?

 ただ体を借りただけだ、ここに来る為にね?」


アルが兄様の背中をトンッと押すと、人形の様にバタンッと倒れる

アルは兄様に手を翳すと、黒い霧を剣の形に変えていく


「国王は死んでるけど、コイツはまだ生きてるよ?

 まだ、ね?」

「!? 止めてっ!!」