4…招待状

ある日

神崎家の当主が決まり、その披露宴の招待状が来た

紫音と話さなくちゃと思ってた事が、知らないとこで進んでた


「紫音、どういう事?」

「20歳になったら継ごうと考えてたけど、姉さんを見つけた時から継ぐ気は無くなってた

 実は俺以外にも候補はいて、姉さんも継ぐ気が無さそうだったからソイツに譲った」

 

当主が決まったのは良いけど、披露宴か…


「祝辞だけってのは無理?」


お父さんならなんとか…と思って相談したら


「出欠の返事は出した、隅っこにいればいい」


ダメだった


「まだ1ヶ月ある、テーブルマナーとかやっとけ」

「「…」」

「親父、俺も行けるか?」

「桜井からは俺と楼が行く予定だが、1人増えても問題無いだろ」

 

披露宴までの1ヶ月

色々なマナーや作法を頭と体に叩き込む

 

 

ある日、朝早くにお母さんに呼ばれた

 

「お母さん、来たよ」

「入って〜」


襖を開ければ、箪笥をガサゴソしてるお母さん


「何してるの?」

「出掛ける服を選んでるの!」


出掛ける?


「母さん、親父には言ってあんのか?」

「当然じゃない!今日は栞と2人っきりで行くから付いてくるなって!」


…?


「私も行くの?」

「そうよ?だから呼んだのよ!」

「…」

「女だけで買い物行きましょ!」


普段は着物姿で凛とした雰囲気でカッコいいお母さんなのに

…でも


「「俺も行く」」


うん

言うと思った


「女だけで買い物したいの!アンタ達は留守番!」

「「行く」」


…このままだときっと終わらない、ん〜どうしよ

お母さんのあのキラキラしてる目、出掛けるのは決定事項だ

でも、蓮と紫音も絶対に引かないだろうし

しょうがない、どうにかお母さんを説得しよう

買い物、買い物……荷物!


「お母さん。蓮と紫音がいれば、荷物持ってくれるよ?」


お母さんは少し思案して、パアッと目を輝かせ


「そうね!荷物持ちが必要ね!」


…蓮と紫音は半目だ


「よしっ今日は買いまくるわよぉ!蓮!紫音!頼むわよ!!」

「「…お、おう」」

 


そして、披露宴まであと数週間の今日

今回はドレスを買いに出掛けてる


『披露宴はメンドくさいけど

    パーティにドレスコードしないで行くのはマナー違反よ

    折角なんだから、ね?』


ってお母さんに言われたから

でも、いつもと違って、こういう専門店には流石に蓮と紫音も躊躇してる


「すぐに戻る」

「「……おう(うん)」」


そうは言ったけど

ご機嫌にドレスを見てるお母さん


「栞!気になるのは無い?こっちにいらっしゃいっ!」

「うん」


ゴメン、2人共

店から出たのは、それから数十分後

 

蓮は溜息を吐き


「どんだけ掛かってんだよ」

「だって、沢山あるんだから迷うわぁ」


お母さんは特に詫びも無く


「今日はここまでにしときましょうか!」


お母さんの手には、先程の店で買った私のドレス

いつもだったら買い物袋は蓮と紫音に持たせてる


「母さんが買い物袋持ってるなんて珍しいな」

「ドレスよ?当日まで内緒なんだから、アンタに持たせる訳ないでしょ?」


目の前をご機嫌で歩くお母さん

外出をする様になったけど

元々物欲が無い私は、今でも奈緒さんや美弥に服を頼んでる

でも、最近2人が買ってくるのは少し露出が多い

理子が傷を消してくれてなかったら、絶対に着ない物ばかり


「? どうした?」

「傷があった時は、ドレスとか絶対に着ないなぁと思って」

 


蓮side

栞は腕や肩を摩ってる

傷があった時は…か


「傷が無くても、着れない時はあるぜ?」

「え?」

「ドレスとか着ちまえば、俺が付けたのが見えちまうからな?」

「…っ」


栞を挟んで歩いてる紫音は聞こえないフリ


「まあ、俺は見られてもいいぜ?」

「…何で」


栞の耳に唇を寄せる


「コイツは俺のだって、周りに知らしめれるだろ?」

「〜っ!」

「当日までに消す気も無いしな?」

「あら、それはダメよ」


突然、母さんが割り込んでくる


「何で聞こえてんだよ。っつか、何でダメなんだよ」

「折角綺麗な肌だもの。

    ドレス着ても、そこに目が行っちゃあ

    逆に栞を危ない目に合わせるかもしれないわよ?」

「…」

「披露宴には、各関係者が来るわ。そこには勿論、縁談を望む者も

 男相手には牽制になっても、女には…逆効果よ?」

「…」


母さんの表情は固い


「後悔したくなければ、当日までは我慢しなさい」

「…分かったよ」

「…」


栞は不安そうな表情だ


「大丈夫だ。要は見えるとこには付けなきゃいんだろ?」

「…え」

「隠れるとこには、しっかりと付けさせてもらうぜ?」

 



?side


「あ〜あ」


ある男が顳顬に当てている指を離し、目を開ける


「せっかくパーティーで手に入れた駒だったのに、親諸共潰されましたか

 まあ、収穫はありましたね

 神崎栞…貴女はいずれ、私の物になる

 宮園の御息女は失敗しましたが、次こそは手に入れますよ

    私には、貴女の力があるんですから

    鴉間から分けてもらった、貴女の人外の力が」