5…披露宴

ドレスを着て髪をセットして、左目はカラコン

念の為に前髪で隠す


ホテルの駐車場に車が止まる

隅っこにいればいいとは言われたけど…

溜息を吐くと、蓮が手を握ってくれる


「怖いか?」

「…少し」


優しく抱き締められる


「皆が、俺がついてる」

「…ん」

 


披露宴には既に沢山の人がいる

他人の前で体が震えるのは、完全には治らない

不審がられない様に車を降りてからは《サイコキネシス》で抑えてる

そうして、披露宴が始まった

 

神崎家当主の紹介が終わり、全体で談笑タイムに

当主が各テーブルに挨拶に周り、こっちにも来た


「こんばんは

 この度、神崎家当主になりました。神崎 修二です

    今日は来て下さり誠にありがとうございます」

「こちらこそ、お招き頂き感謝します

 この度は神崎家当主になられ、おめでとうございます」

「ありがとうございます」


お父さんが代表して神崎さんと挨拶する


「こっちは長男の楼、次男の蓮です」


順番に学んだ通りに振る舞う


「神崎 栞、神崎 紫音の姉です」

「! 貴女が栞さん、話には伺ってましたが帰ってきたんですね」

「はい」


なんとか口角を上げて笑顔を作る


「…」

「?」


神崎さんは何故か呆然としてる


「…あの」

「! すみません、では」


神崎さんが歩いて行く方へ目を向けてると

ザワ…


「?」


反対方向から、何か感じた

チラッと視線を向けると一人の男性が


「…」

「栞?」

「…何でもない」


その男性が、こっちへ来る


「桜井家の皆さん、こんばんは 私は月影と申します」

「こんばんは」


月影さんはお父さんと軽く挨拶し

私達に意識を向ける


「そちらの二人は、神崎栞さんと紫音君だね」


月影さんは紫音に近寄り


「左目は、…カラーコンタクトが入ってるね。本当は何色かな?」

「青…です」

「青、良いね。素敵な色だ」

「ありがとうございます」

「お姉さんは、片目は髪で見えないが、オッドアイなのかな?」

「…はい」

「本当の色を伺っても?」

「……赤…です」

「赤ですかぁ、姉弟揃ってオッドアイとはっ!珍しいっ」


月影さんは少し前のめりになり、前髪を触ってくる


「…っ」

「良ければ、本当の色を見せては「それ以上は止めて下さい」」


グッと後ろに引き寄せられ、蓮が背中で庇ってくれる


「気分を害してしまったかな?申し訳ない

 ではまた、機会があれば」


月影さんはニコッと笑い、離れていく

蓮が振り返り


「大丈夫か?」

「ん、ありがとう」


さっき感じた妙な気配は、月影さんだったのか?

答えが分からないまま、時が進んでいった