3…体、心の傷(3)

傍観者side

蓮は倉庫の入口をガシャンッと破壊する

入れば、鉄棒を持った男達が


「や〜っと来たかぁ、白狐(シロギツネ)共ぉ」

「栞を返せ」

「返す訳ねぇだろぉ?」

「姫さん今頃どうなってるだろうなぁ?奥でお楽しみ中だからよぉ。邪魔すんなよ〜」


ピクッと蓮の顳顬が反応する

紫音も目が据わり、白狐全員が殺気立つ


「お前等、潰される覚悟は出来てんな?」

「ぶっ潰す」


蓮と紫音の地を這う様な低い声


「やってみろよぉ?」


白狐と黒邪の争いが始まった

 

数分後には黒邪の9割が倒れており、まだ立ってる者は震えて戦う意思は無い

蓮が立ってる男に視線を向け


「さっさと栞を「おいおい何勝手な事してんだぁ?」」


奥から男が出てくる

蓮はその男に視線を向け


「栞を返せ」

「取り込み中なんだよ、終わったら返しても「ゴチャゴチャ言ってねぇで、返せ」」


蓮が殺気を出す

男はたじろぐが、ニヤッと笑ってスマホを取り出し


「おい、連れてこい」


数秒後、奥から数人現れる

そして男2人に両脇を抱えられ、頭を垂れてる栞


「「「!?」」」


最後に、怯えてる表情の宮園


「れ、蓮様…白狐の方々まで、どうしてここに?」

「いつまでシラ切るつもりだ。さっさと栞を返せ」

「…っ、蓮様!この女は白狐の姫にっ、蓮様の側にいるのに相応しくありません!

   図々しい女が!立場を分からせないと!!」


蓮や紫音達は手をギュッと握り締め、殴りたい衝動を抑える

本来なら栞が視界に入った時点で全員が動こうとしてたが、必死に堪えてる

何故なら、栞の首にナイフを突き付けられてるから

ナイフを持ってる男がニヤァと笑っている


動けば、分かってんだろうな?


今動けば、栞が傷付く

喋り終えた宮園は栞に近寄り、パンッと頰を叩く


「起きなさい」

「……ぅ…」


栞が頭を揺らし、ゆっくりと顔を上げる


「「「!?」」」


栞の頰に赤い線が

頰から首、胸元にまで血が伝っている

唇の端からも血が出て、制服も靴の跡だらけ


「下ろしなさい」


男2人が手を離し、ドサ…と栞が膝から崩れ落ちる

栞の襟を男が掴み上げ、首を締める


「ケホッ…ぅ…」


栞が腕を外そうと弱々しく動く


「おっと、動くなよ?」


グッと更に締め付けられ、栞は顔を顰める

そんな状態の栞を見て蓮は、白くなる程に手を握り締めている


「神崎、今ここで宣言しなさい。姫を辞めると」

「「「!」」」

「喋れない訳じゃないでしょ?それとも…」


宮園は栞の傷が無い頰にナイフを当て


「もっと痛い目に合わないとダメかしら?」

「「おい」」


蓮と紫音の一言で、この場に居る者の殆どが体を強張らせただろう


「テメェ…死にてぇのか」

「それ以上傷付けたら、分かってんだろうな」


ビクッと宮園が怯え、体を震わせる


「わ…私は、…ただ、白狐の、為に「黙れ」」

「テメェの言葉は聞きたくない。さっさと栞を返せ」

「…っ」

「んだよ、つまんねぇ〜なぁ?」

 

黒邪の総長が喋り出す


「せっかく白狐の姫を捕まえてるのによぉ?

    お楽しみも途中だったし、最後まで楽しもうぜ?

 散々痛めつけたから、抵抗出来ねぇだろうしなぁ?」


総長は栞に近寄ると、栞の顎を掴み舐め回す様に見る


「汚ぇ手で、ソイツに触んな」


総長は蓮を見て、ニヤァと笑う


「流石白狐の姫、綺麗な顔してるよなぁ

 今まで女をつくらなかった白狐の総長が、初めて側に置く女

    この女はどれ程の良い女なんだぁ?

    確かめてみて「それ以上口を開けば…、命は無ぇと思え」」


総長は栞の顎から手を離すと、栞の髪をグッと掴む


「…っ」


栞の表情が歪む


「お前等こそ、少しでも動いたらこの女にもっと傷が増えるぜ?」

 

総長が笑っている間に栞は目を閉じる

意識を集中し《サイコキネシス》のシールドで総長や下っ端、宮園を弾く

その隙を逃さず、蓮達は一斉に動き出し黒邪を潰していく


「なっ…、何だコレ!?何しやがったコイツッ…!」


総長が震えながら栞を見てると


「テメェの相手は俺だ」


総長が声の方に顔を向ければ、目の前には蓮が

 

栞が宮園に目線を向けると、尻餅をつき、ガタガタと震えてる


「な…な…によ、これ…。こんなの…、このっ、バケモノッ」

「…」


栞は《ヒュプノ(催眠)》で幻覚を見せる


「い、いやっ、あぁあああああああああ!?」


宮園は頭を抱えながら後ろに倒れ、気絶した

 

「栞」


栞が正面を向けば蓮が

シールドを解くと、そっと抱き締められる


「遅くなって、悪かった」

「ううん。あり…がと」


紫音や朔、春也も二人に近づく


「み…んなも、ありが…と」


蓮が少し離れ、栞の頰を撫でると


「…っ…」


栞が顔を顰める


「すまねぇ、痛い思いさせちまった」

「この位、大…丈…」


栞は言い終わる前に、意識を失った