29…奴等

紫音と桜井組へ

部屋には楼と春が


「部屋全体を隠せ。」


《ヒュプノ(催眠)》


「もう、いいだろ。」


フードを外し

栞、紫音として対峙する


「で、話は」

「…楼が調べろと言った組、奴等が裏にいる」

「?  奴等?」

「私を誘拐した奴等」

「!?……なっ……!?」


紫音が目を見開いて驚く

春は驚いてるけど、なんとか冷静になろうとしてる


「今まで見つからなかったのに、なんで…」

「何か心当たりはあるか?」


心当たり…

そういえば、白狐の旅行で集団を潰した時…一瞬動揺した


「私が多分、やらかした」

「何をした」

「白狐で行った旅行先で絡まれた。その時、服を取られて…傷を見られたから…」

「姉さん…」

「こっちに影響は?」

「今のところ何も無い」


桜井組はまだ大丈夫か

 

狙われる可能性があるとしたら…


「白狐現総長の桜井蓮が狙われるかもしれない」

「姉さん、どうして蓮が?」

「傷を見られて動揺した時、近くにいた。

    奴等は恐らく私自身じゃなく、私に近い存在を狙う」

「それなら、俺も可能性が「紫音は大丈夫。ソレ(ネックレス)を着けてる限り」


私が久八高に行って、蓮達と関わったから…

やっぱり…こうなるのか

蓮や白狐に危険が及ぶのは避けたい


「楼、暫く仕事は無しにして」

「…姫なら、怪しまれねぇか」

「?」

 

 

紫音side

楼さんは何を言ってるんだ?


「一体、何を…」

「私が蓮の護衛をする」

「!?」

「それが一番手っ取り早いな。何かあれば酒向がサポートする」

「蓮に姉さんの…鷹の存在を教えるんですか」

「総長なら、気配には聡いだろう。

    日中は姫の立場が丁度良いし、

    離れてても存在を知っとけば、後からメンドくさくならねぇしな」

「若、鷹の存在を教えるのは、どういう…」

「直接会っとけ」

「「え!?いいんですか?」」


春さんとハモった


「言っただろ、後々メンドくさくならない様にだ

    鷹の気配を知っとかないと、無駄に警戒しちまう」

「そう、ですね。俺は何を「紫音」」

「紫音は、事態を把握するだけ。何もするなって言ったよね?」

「で、でも…!「条件、忘れた?」」


忘れてない

さっき、ここに来る前に姉さんと話した


『紫音は話を聞くだけ、何もしない。あくまで、事態を把握しておくだけ…いい?』

『…………分かった』


俺は渋々返事し、今ここにいる

でも、思ってた以上に深刻な話だ

俺だって、正式に桜井組の…姉さんと同じ影の存在になったんだ

何かやれる事はあるはず


「姉さん、やっぱり俺も「それ以上言ったら、記憶を消す」!?」

「今話してる記憶は無くなって、何も知らずに過ごしてるか

    私を信じて待っていてくれるか」

「…」

「待っていてくれれば。紫音の元に戻った時、心から安心出来る。

    何も知らない紫音の前で、隠し事したまま、側にいていいなら…消すよ?」


姉さんは無理矢理作った笑顔で、俺に問い掛ける

…っこれ以上、こんな顔をさせたくない

今の俺に出来る事は、姉さんを信じて待ってる事


「分かった。姉さんを信じてる」

「ありがとう」

「話は纏まったな?栞」

「ん」

 

 

《ヒュプノ》を解く


「酒向も、栞のサポートが出来る様、調整しておけ。普段の仕事は…に任せろ」

「はい」


春が出て行く


「楼、念の為、ローブの予備を」

「待ってろ」