38…栞の傷

俺と紫音は、栞が居る部屋に戻った

栞はまだ眠ったまま


「紫音、さっき何言おうとした」

「え…」

「栞が今の状態になってるって言った時、何か言い掛けただろ」

「…」

「俺が聞いたのは、お前が栞に気づいた時、旅行先の乱闘、酒向との事

    桜井組での影の事、俺の護衛の事だ。

    もう、知ってる事…全部吐いちまえ」

「旅行先での乱闘の中、蓮は見たんだ。姉さんの…体の傷を。」

「!?」

「姉さんは傷を見られたのを気にして、蓮の記憶を消した」


思わず、栞を見る

記憶を消す程


「そんなに、あるのか」

「…」


でも


「栞なら、痕を残さずに治せるよな?」

「…っ…」


紫音が唇を噛み、俯く


「どうした」

「致命傷じゃない限り、力で治すのを禁じられたらしいんだ」

「!?」

「その癖が今でも残ってるらしいんだ。今回は分からないけど、もしかしたら…」


何で、栞は


「女だぞ!?」

「俺だって、思ったよ。」

「お前は、栞がどんな事をしてきたのか知ってんのか」

「…」

「紫音」

「知ってる。

    俺は受け入れて、姉さんを護ると決めた。

    だから俺も姉さんと同じ、桜井組の影になったんだ

    いつ、どんな時でも、姉さんを護れる様に」

「…フッ、道理で喧嘩の仕方が違う訳だよな」

「酒向さんに鍛えられてるからね。…蓮」

「何だ」

「姉さんの過去を…闇を、受け入れる覚悟は、ある?」


栞の…闇


「…ん…」


栞が身動ぐ


「…姉さんに直接聞いた方がいい、聞けるか分からないけど」


紫音と、栞の側に行く

 

 

紫音side

「紫音、蓮」

「おはよ、起きれそう?」

「おはよ。…ちょっと待って」


上半身を起こそうと動くけど


「…ぅっ!」


顔を顰めて倒れそうになる寸前、蓮が支える


「ありがと」

「栞」

「何?」

「…」


蓮は姉さんの袖を捲ろうとする


「!?  駄目!」


姉さんが慌てて止めるも遅かった

腕には、無数の傷痕が

蓮が目を見開いて、動揺してるのが分かる

…俺もそうだった


「や…イヤ、見ないで…っ!?」


蓮が姉さんを抱き締める


「れ、蓮?」

「…辛かったな」

「え…」

「お前が今まで何をしてきたか…まだ何も知らねぇ

    きっと俺には想像がつかねぇ事をやって…やらされてきたんだろ」

「…」


姉さんの目には、戸惑いが


「けどな、俺は今まで自分自身に立てた誓いがある」


蓮は姉さんを少しだけ離し、目を合わせる

姉さんの目には戸惑いの色

蓮は姉さんの手を握り


「お前を見つけた時は、何があってもこの手は離さねぇ。

    お前は俺が護る

     だから…どんな過去だろうが、受け入れてやる」


姉さんが俯き、首を横に振る


「駄目、私に関わっちゃ…駄目っ…!私から離れないとっ」


俺が栞から離れる?

そんなの…ありえねぇ


「離す訳ねぇだろ。やっと見つけたんだ。もう二度と…離さねぇよ」


グッと頭を胸に押し当てる