47…死ぬな、生きろ

「栞!」

「姉さん!」


呼び掛けても反応しない


「蓮!姉さんは体が弱ってるんだ!このままじゃ体が…うぁっ!」

「紫音!?」


力が衝撃波となって紫音を襲った

紫音は辛うじて意識がある


「くそっ!どうしたら…!」


紫音はネックレスを手に取り


「もしかしたら、コレで、どうにか…出来るかもしれない!」

「ホントか!?」

「コレには、姉さんの力がある!可能性はある!」


ブワッと一際大きな風が舞う


「うっ!…くっ!力が強すぎて、近く事すら無理だ」


手で顔を庇ってると、指輪が光ってる?

紫音の胸元も光ってる気がする

こうなったら、一か八かだ


「紫音!ネックレスを貸せ!」

「!  頼むよ…蓮!!」


紫音の頭がガクッと垂れる

俺は風が吹き荒れる中進んでいく


「栞!」


1歩…1歩と近づく


「栞っ!」


あと少しっ…、あと少しで!


「…っ、くそ!」


グッと手を伸ばし栞の手を掴もうとするが、届かない

くそっ!俺は、誓ったんだ!

もう二度とっ…お前を!お前の手を!!


「離してたまるかぁああああ!!!!」


栞の手をグッと掴み、抱き締める

その瞬間、紫音のネックレスと俺の指輪が赤く光り

俺自身も光り始めた

すると、栞の目に光が


「れ…ん…?」

「!  栞!」


暴走した力が弱まっていき、風が止む

栞はフラッと俺に寄り掛かる


「あ…りが…と」

「ああ。一か八かだっだが、上手くいった。まさか本当に効くとはな」


俺は手に持ってるネックレスと指輪を栞に見せる

栞はポカンとした表情で


「…あれ」

「?  どうした?」

「ソレと、蓮が赤く光って暴走が止まったんだよね?」

「ああ」

「元々、私の力が暴走した時の為に、仕込んでおいたの」

「!  そうだったのか…」

「でも、変だな。何で生きてるんだろ」

「……は?」

「鴉間が私に従わせる為に蓮を狙うと分かってから

    蓮が死ぬくらいだったら私がと思って

    あの時、蓮から離れる時に蓮の体に力を流した。

    ネックレスと指輪、蓮に流した力で

    暴走した力を抑えると同時に、私が死ぬ様に仕込んでたのに」

「!?」

「なのに…死んでない」

「…んだよ」

「蓮?」

「んだよそれ…!ふざけてんじゃねぇぞ!?

    自分を殺す為に俺達に着けさしてたってのか!?」

「あ、あくまで、暴走した時にって「関係無ぇよ!」

「力が暴走して、しかも今のお前の状態じゃ死んでたかもしれねぇ。

    それを止めたのに…死んでないだと?」

「…何で?何で…死んじゃ駄目なの?何で死なせてくれないの」

「おま…何言って…」

「今まで散々、数え切れない位の人の命を奪ってきたの!

    奴等に命令されて、罪の無い人でも…躊躇無く…!

    血を浴びても、どんな言葉を言われようが何にも感じなくなった

    私は感情を持たない人形…だから、平気で命を奪える

    こんな私が、生きてていい訳が無い!

    お願いだからっ…死なせて!!」

「…」

「お願いっ…、死なせて…!」

「断る」

「!?  どうして!?  私は死ななきゃいけない!

    命を奪ってきた人の為にも、私は死んで…償わなきゃいけない…!」

「…兄貴が前に話してくれたのと同じみてぇだな

    さっきからふざけた事ばっか言ってっけどな。

    全部自分一人で解決するな」

「だって…これは私の問題「お前が死んだら…俺はどうなる」

「え…」

「俺や紫音、兄貴や和士さん…皆はどうなるんだ」

「…前にも話したでしょ?記憶を…私の存在を消すの」

「…」

「私が死んでも誰も何とも思わない。初めから神崎栞という存在は居なかったんだから」

「それを…俺が受け入れると思ってんのか」

「受け入れなくても、そうなるの。

    大丈夫、次に目を覚ました時には私の事は忘れて皆と一緒だから」

「…あの時の言葉も、無かった事にするつもりか」

「あの時?」

「鴉間に連れ戻される時、お前…俺に言ったよな?好きだって」

「…」

「キスだって…初めてだったんだ。ソレを忘れさせるつもりか?」

「…なら聞く。

    私の過去を知って、どう思った?軽蔑したでしょ?

    私の側になんかいたくないでしょ?関わりたくないでしょ?

    こんな…殺戮人形なんかの側に…!っ!?」


グッと後頭部に蓮の手が回り、引き寄せられたと思ったら

唇に柔らかいモノが当たる

チュッと唇が離れた頃、蓮にキスされたと理解した


「これが、俺の答えだ」

「…え」

「お前の過去も、何もかも全部…受け入れてやる。

    お前が苦しむ時…辛い時は俺が傍にいる

    何があっても、ぜってぇに離れねぇ。

    もう、お前一人で抱え込む必要は無ぇんだ

    これからは、俺が一緒にいる」


困惑してる栞を優しくギュッと抱き締める


「いい加減…俺を頼れよ、栞」

「!!」

「無理だなんて…言うなよ?」

「私は…蓮の側にいていいの?生きてて…いいの?」

「当たり前だ。それに俺は…お前としか一緒にいるつもりは無ぇ、一生な」

「蓮…。でも、私は普通じゃない。蓮にはもっと「もう黙れ」」

「全部受け入れるっつったろ。それに…」


蓮と目が合う


「小さい頃からいつもお前が側にいて、それが当たり前になってた。

    お前がいなくなってから…心ん中がポッカリ空いたみてぇで、苦しかった。

    もう…お前しかいねぇし、お前しか考えられねぇよ。

    だから…」


蓮が耳元に唇を寄せ


「お前は何も考えずに、俺だけ見てろ。俺の側で生きろ」

「!…うん。私も、蓮の側にいたい」


一筋の涙が頰を伝う

お互いに見つめ合い

蓮の顔が近づき、私も目を伏せ

唇が重なる


ありがとう…蓮


「栞?  栞!」


私は蓮の腕の中で、意識を手放した

 

 

蓮side

栞を抱き抱えると、気がついた紫音が近寄る


「蓮、ありがとう。姉さんを受け入れて、救ってくれて」

「んなの、当たり前だ」


紫音は一息吐き


「帰ろ」

「ああ」


こうして、俺達は桜井家へと帰った