46…もう、離さない

「うぁっ…!…っれ……ん…!」

「ゴメンッ…ゴメンッ…!何もしてやれなくて…!」


激痛が体中を走ってるのに、蓮に抱き締められてると安心する

だから、冷静に判断出来た

このままじゃきっと、蓮や皆は助からない

蓮と離れたくない

…でも私が、アイツの元に行けば


「蓮」

「栞…!」

「蓮、離し…て?」

「何言って…、!?駄目だ!俺はもうお前を離さねぇっ…絶対に!何があってもだ!」


蓮は私の肩に顔を埋め、更にギュッと抱き締める


ーー鳥はもう一度自由を捨て、闇に囚われた

       そこに、一筋の光が差し込む

       だが、光の方へ進もうとはしないーー


「お前を痛めつけても無駄なら、その男を殺せばいいか?」

「!?」


それだけは…ダメ!!!

パリンッと胸元で何かが弾けた

ネックレスの、私の力を抑えていたルビーが砕け飛び散る

その瞬間、体の底から力が溢れて出す感覚が…

ドンッ!


「栞!?」

「な!?何だこれは!?」


体から光が勢い良く溢れ、天にまで伸びる


「何だこの光は!?  ち、力が!?うあああああ!!!」


鴉間の中にある私の力に共鳴させ、暴走させる

蓮が光から腕で庇ってる隙に離れ、蹲る鴉間を見下ろす


「ぐあっ…くそ…!お前…何をした!!」

「アンタの中にある私の力を暴走させただけ。

    アンタじゃ制御出来ない、直に組織から破壊されてく」

「ぐっ…くそが!お前は弱ってたはずだ!体中に痛みが走ってるはず!」

「力を抑えてた物が壊れたから、普段の何万倍にも力が増幅する。

    掛けられた枷は、お前の言うコピーが掛けたモノ

    コピーがオリジナルに勝てる訳無い」

「…くっ、このまま俺を殺すか」

「私はお前とは違う、もう…誰であっても命は奪いたくない。」

「フッ…甘い考えだな。今殺しておけば、お前は…望んでたモノが手に入るぞ?」

「私は私のやり方で終わらせる、自由を得る」


鴉間に手を向け、力を吸い取る


「!?何を…!?」

「力を返してもらうだけだ」

「やっ止めろ…!止めろぉ!!」

 

 

蓮side

鴉間は力を抜き取られ、気絶してる

栞は兄貴に向き


「楼、そっちは?」


そっち?


「ああ、親父に頼んである。問題無ぇ」

「何の話だ?」

「鴉間を捕まえる、法的にな」

「法的にって、大手企業のトップなんだろ?大丈夫なのかよ」

「親父に頼んだっつったろ。表の会社はうちが吸収するし、暴力団は…」


兄貴の携帯が鳴る


「グッドタイミングだな。おう、和士

    そうか、ご苦労だったな。こっちも片付く、また後でな」

「和士さん、何を…」

「和士と今井には暴力団を片付けてもらってた。二宮と前原もな」


白狐のOBと現役幹部、負ける筈が無ぇな


「これで鴉間が捕まっても、会社も暴力団も心配要らねぇっつう事だ」

「…それを栞は知ってたのか」

「《プレコグ》で予知したから。流石、お父さん」

「お父さん…って親父の事か?」

「桜井さんて呼ぼうとしたら、そう呼べって何度も言われたから」

「…」


親父も栞の事知ってたのかよ


「まさか…栞の事知らなかったの、俺と紫音だけか?」

「そうなるな」


俺の気持ちを知ってて、隠してたのかよ

紫音もポカンと口を開け呆然、二人でガクッと項垂れる


「まあ、とにかく、鴉間は俺が連れてく」


兄貴が鴉間を連れて、俺を横切る瞬間


「何も障害は無ぇ。もう、離すなよ?」

「当たり前だ」


兄貴は乱暴に鴉間を車に乗せて行った

それを見送った時だ


「姉さん!?」


紫音の焦った声

栞に向くと


「しまっ、う…うぁ…あぁあああああ!!!」

「栞!?」

「姉さん!!」


栞からまた赤い光が溢れ出し、周りの物が次々と吹き飛ばされる

さっきとは違う

鴉間とのやり合いで無意識に収まってた力が気が緩んだ事で暴走してるのか!?