22…覚醒

南雲が蓮に指を指した瞬間

指先から黒い光が蓮の胸を貫いた


「え…」


蓮は倒れ、血溜まりが広がっていくのが見える


「………れ………ん………?」

「桜井蓮、お前が悪いんだぜ?俺をイラつかせやがって」

「れ…ん、嘘…」


体が震える


「コイツは死んだ。お前も、後を追わせてやるよ」


嘘…嘘だ

蓮が死ぬなんて、そんなの…


「じゃあな、栞。蓮を護れなかった事を後悔しながら死んでいけ」


蓮を護れなかった?

違う、蓮は死んでない

私が、私が死なせないっ!

 

ブツン

 

どこかで何かが切れる音が

 


南雲side

栞を殺す瞬間、ブワッ!と赤い光が栞から溢れる


「!」


咄嗟に後ろに跳躍する


「何だ、何が起きてる」


栞は俯いたまま、ゆっくりと立ち上がり

ブツブツと呟いてる


「…、…蓮を護る、私が蓮を護る、蓮は絶対に……」


栞がゆっくりと顔を上げる、左目だけだった赤い目が両目に!?


「死なせない」

 

俺に向かって衝撃波が放たれる

何とか《サイコキネシス》で防ぐ


「!?」


栞の黒髪が、金色になっていく

溢れ出す赤い光が栞に収まっていき、オーラの様になってる

周りでパリッと電気の様なモノが走り、傷だらけの体がみるみる内に治ってく


「何なんだよ、その姿は…」


栞が俺に手を向けるとパリンッと簡単にシールドが砕ける


「…っ、マジかよ」


栞はゆっくりと近づいてくる


「じゃあ…」


栞に向かって手を向け、掌に力を貯める


「これならどうだ?」


最大限まで溜め込んだ力の圧縮弾を放つ

床を抉りながら真っ直ぐに栞へ向かい、当たる瞬間

パンッ


「!?」


弾は弾け、粒となって消える


「くそ…っ」


何度も放つが、全て弾けて消える


「くそっ…くそっ!何なんだよお前!死にかけてたくせに!

 何で俺の攻撃が通じねぇんだよっ!」


腕に力を纏う


「力が駄目なら、物理的にはどうだよ」


手を剣の様にして、走る

栞の胸に突き刺す瞬間、突き出してた筈の腕が無い


「…え」


ガクッと体のバランスが崩れて倒れ込むと、ボトッと何かが落ちた音が

体を見れば、両足は太腿から切断され少し離れた所に

切断面から血が吹き出し、床や栞が血に染まる

腕が…足が、

認識した途端、激痛が襲う


「あぁああああああああっ!!!!」


のたうち回れば更に激痛が体中に走る


「ぐあっ…!くそっ!栞ぃっ…!テメェッ!!」


栞を見上げると


「!」


俺を見てる目には光が無い

ゾクッ

初めて、殺される恐怖を抱く

ガタガタと体が震える

栞が俺に手を向けた瞬間、目の前が血に染まった

 

 

ビチャッバタンッ

足元で何かの音が聞こえた

顔に何かを浴びるが、どうでもいい

視線を上げ、蓮を視界に入れる


「…」


蓮に歩み寄り、腰を落とす

そっと髪や頰を撫でる

蓮を仰向けにし、胸に開いた穴に手を被せる


《リヴァイヴ(蘇生)》

 


傍観者side

栞が蓮の胸に手を被せると、広がっている血溜まりが戻っていく

顔色も戻っていき、生前に負った傷も全て治った

栞は蓮の額に手を被せ、意識を覚醒させる

 

 

蓮side

体に力が入るのが分かる

額が暖かい

ソレが離れ、ゆっくりと目を開けると


「…………し、おり、か?」


目や髪の色が違う

栞は何も言わず、ただ無表情で俺を見下ろしてる

グッと起き上がり、栞を見る


「!」

 

血塗れの体と両目の赤色


「し、栞、お前何を…、南雲はどうした」


南雲がいるであろう場所に目を向けると


「!?」


血塗れで原型を留めてない、南雲らしきモノが


「お前が、あれを…やったのか…?」


栞は無表情で俺を見る


「何で!? あそこまでやる必要があったのか!?」


思わず栞の両肩を掴んで問い質す

栞は無表情のまま


「……、…ない」

「え…」

「れ…ん…、護…る。ぜ…たい…死なせ…ない」

「!?…俺の、為に」

「わ…が…護…る」

「…っ」


ギュッと抱き締める

こんなんになってまで、俺を…

少し離れ、目を合わせる

 

「栞!もういいっ!終わった!戻ってこい!」

「…」

「なあ!栞!戻ってきてくれ!頼むっ!!」

「…」

「…っどうしたらいんだ、一体…どうしたら」

「戻…る、か、える?」


俺と栞を中心に赤い光が渦巻き始める


「!」


栞を抱き締め、ギュッと目を瞑った瞬間

一際強い風に包み込まれ、そのまま意識を飛ばした