12…共に生きる

栞と微笑み合う中、改めてお前への気持ちが募る


「栞」

「ん?」

「お前が愛おしい…」

「…蓮」

「もう絶対に…、お前を失いたくない」

「…うん、私も、蓮を失いたくない」


ギューッと抱き締め合う


「栞」

「ん?」

「渡したい物があるんだ」

「?」

 

 

蓮と一緒に立ち上がる

蓮がクローゼットから白い袋を取り出し、袋から出てきたのは、また白い箱

蓮は目の前で、跪く


「栞」

「?」

「これからもずっと、俺と一緒に…生きてほしい」


蓮が白い箱をパカッと開ければ、光に反射して輝くモノが

…これって、……まさか

蓮と目を合わせれば、フワッと微笑み


「栞、俺と結婚してくれ」

 

 

蓮side

栞は目を瞬き


「……え」


俺は立ち上がり、唖然としてる栞の手をそっと握り

目を見て


「栞」

「は…はい」


今度は、ゆっくりと


「俺と、結婚して下さい」


ポロ…と栞の目から涙が流れる

ソレを指で掬い取り、頰を包み込む


「栞、返事をくれ」


栞は涙を流しながら、唇を震わせ


「…っはい。結婚…っ、します…っ」


ギューッと優しく、強く抱き締める


「…っ、…っ…!」


栞が全身を震わせながら涙を流して、俺の服を濡らす


「…っ、蓮…」

「ん?」


栞はギュッと俺を抱き締め返し


「ありがとう…っ」

「…おう」


栞の頭をポンポンと優しく叩く

そのまま上に向かせると、目が赤くなってる

俺は微笑み


「栞、愛してる」


栞も微笑み


「私も、愛してる」


お互いに唇を近付けた

その時

バンッ!と襖が開き


「やっと結婚までいったかぁ!!」

「「!」」


両手で襖を開けたのは兄貴


「ちょっ楼!何してんの!今とっても良いとこだったじゃない!!」

「ハハハッ!良いじゃねぇか!」

「アンタ!ちっとも良くないわよ!」


兄貴に続いて親父と母さんまで…

横からヒョコッと紫音が顔を出す


「ゴメンね2人共、一応止めたんだけど…」


紫音が近寄ってきて


「姉さん、おめでとう」

「ありがとう、紫音」

「蓮」

「あ?」

「姉さんを、頼むよ」

「…フッ、当たり前だ」


親父と母さんが落ち着いた頃

バタバタッと近付く足音が

襖に手が掛かり


「栞さん!!」


現れたのは、酒向


「…春」


酒向は息を切らし部屋に入ると、膝を床につけ首を垂れ


「すみませんでした…っ!」


声が震えている


「護る事が出来ず、危険な目に合わせてしまいました…っ

 全ては自分の失態ですっ!

 本当に申し訳ありませんでしたっ!!」


酒向は額を床に擦り付け、声を震わしている


「…」


栞は俺から離れ、酒向の前で腰を下ろす


「春」

「…っ」

「春、顔を上げて」

「…っ」


ゆっくりと酒向が顔を上げる


「春、春がいたから私はここにいる。春はちゃんと私を護ってくれたよ?

 そもそも、謝るのは私の方…

 春に痛い思いをさせた、力を暴走させた私を止めてくれた

 春、私を護ってくれて…ありがとう」


酒向が目を見開く


「これからも、私のサポートを続けてくれる?」

「…っは「おいおい、そこで返事したら駄目だろ」」


遮ったのは兄貴


「? 楼、どういう意味?」

「酒向がな、お前が治療をする前に言ってきたんだよ。栞を組から外してくれってな」

「!?」


栞が酒向を凝視する

酒向は決意の篭る目で栞と目を合わせる


「実は、紫音君にも話してあるんです

 栞さん、もう桜井組に鷹は必要無いんですよ」

「……え」

「貴女は桜井組の影…鷹として、今まで様々な仕事をこなしてきました

 方々でいざこざがありましたけど、全て収まりました

 これから何かしら起きても、鷹が動く程ではないんですよ

 すぐには納得出来ないでしょうが、もう決まってる事なんです

 紫音君、蓮様と共に…自分の人生を生きて下さい」


栞が紫音を見ると、紫音は微笑んで頷く

そして俺と目を合わせる

俺は安心させる様に微笑み、紫音と同様に頷く

兄貴が栞に近寄り


「栞、いや…鷹」


栞は兄貴の前に跪く


「正式にお前を組から外す」


栞は顔を上げ、兄貴と目を合わせる

兄貴は優しく微笑み


「今まで、ご苦労だったな。これからは…自分自身で道を切り拓いていけ」


栞の目から再び、涙が流れる


「…っはい。今まで…っ、ありがとうございました…っ」


俺は栞に近寄り、背中に手を添える

栞は涙を流しながら、俺に目を合わせる

俺は白い箱と輝くモノを見せ


「はめてくれるか?」

「…、はい」


栞の左手の薬指に指輪をはめる

栞は俺の手を握り


「蓮。これからは、貴方と一緒にいる為に生きていきます」

「ああ。俺も、お前と共にいる為に生きていく」

「それに…」

「勿論…」


栞と、紫音に目を向ける


「「紫音も一緒に」」

「…え?」


紫音はポカンとしてる

俺と栞はニコッと笑顔で


「当たり前だろ」

「紫音は、私と唯一…血が繋がってる姉弟なんだから」

「…っ、姉さん…っ、蓮っ…!」


紫音が泣きそうな表情で側に座る


「皆で、生きていこう」

「ああ、誰一人欠けさせねぇ」

「うん、一緒に」

「「「未来を生きる」」」

 

 

 

 


「やっと見つけました。…シオリ様」