囚われの姫 3

1…蓮の悩み

蓮side

ある日

出掛け先から帰ってる道すがら

サラリーマンや作業服の人、働いてる人達が沢山目に入る

大学を卒業してから、ずっとこれからの事を考えてる

兄貴や親父の関係する会社に就職するのも、全く違う事をするのも良し

催促されてる訳じゃねぇが、周りが働いてるのを見てると自然と考える


栞や紫音は、鷹と蒼鷹…組の仕事をしてる

それだけでいいのかって思うが

最近、色んなとこで問題があるらしく、2人は引っ張りダコだ

どんな事をしてるのか気になるが、俺は組に属してないから何も知らされない

聞いちゃいけねぇのも分かってるが、何つうか…蚊帳の外って感じがして


そんな日々が続く中、この前突然兄貴に呼ばれた


『何だよ』


兄貴は厳しい表情だ


『蓮、お前は…組の人間じゃない』

『…』


それだけで、兄貴の言いたい事が分かった

兄貴の鋭い視線から逸らす


『…んな事、分かってる』

『はぁ…。なら、栞と紫音に聞くのを止めろ』

『聞いてねぇよ』

『言葉には出さなくても、雰囲気や態度に出てんだろぉが』

『…』


分かってんだよ、そんな事

でも、いつも気丈に振る舞ってる栞がたまに疲れた様子で帰ってくると、心配になる

何があったって、どこか怪我してねぇかって…

 

 

楼side

蓮は悔しそうな表情で俯いて、グッと手を握ってる

…しょうがねぇな


『試しに、組の仕事してみるか?』

『!?』


蓮がバッと頭を上げ、目を見開いて俺を見る


『組に入ろうとする奴には必ず、そういう期間を設けてる

 仮組員って奴だ

 それを経て、本当に入るかを自身で決めさせる

 親父には俺から言っとく

 お前の場合、自分が納得するまででいい

 無理だと思えば素直に言え』

『やる、いつから出来る?』

『んな即決するな』

『あ?んでだよ』

『お前、分かってんのか?

 そこらの職業体験じゃねぇんだぞ?

 極道の世界は、人間の汚い部分が曝け出されるところだ

 …実際、そういうのに耐え切れなくなって精神を病んだ奴もいる』

『…』

『試し期間でも、そういうのに出くわすかもしれねぇ

 それでも本当にやるってんなら…、改めて言いに来い』

『やるんだったら、誰に付くんだ?』

『いつもなら酒向とかに付いてもらうが…』


ニヤッと口角が上がる


『お前の目的は、栞だろ?なら、栞に付かせる

 最近バタバタしてるが、栞なら何があっても大丈夫だ』

『分かった』

 

 

蓮side

考えながら歩いてたら、気付いたら家の前に

今日は久し振りに1日のんびりしてるっつってたから

俺もそうしよう

そう思いながら部屋に入ると


「あ?」


栞が居ねぇ


「どこ行ったんだ?」

「蓮、おかえり」


廊下から紫音が部屋を覗く


「おう、栞どこ行ったか知らねぇか?」

「姉さんなら仕事に行ってるよ」

「今日は無かったよな?」

「急に入った」

「お前は?」

「今回は姉さんだけって条件らしくて

 楼さんの部屋まで行ったけど、すぐに出ていかされた」

「そうか」

「昼は済ませた?」

「いや、まだだ」

「なら行こ。食べに行こうとしてたとこだから」

「おう」


早速、その仕事が気になるが

一先ず、紫音と昼飯を食べに行く