52…新たな力

蓮side

平穏な日々な…筈だった

栞と紫音は今でも、桜井組の影の存在…鷹と蒼鷹

兄貴は辞めさせようとしたが、栞が頑なに拒んだ

栞がやり続けるなら紫音も

俺はまだ組に属してないから、栞と紫音がどんな仕事をしてんのかも聞かされない

ただ帰りを待ってるだけだ

栞と紫音、2人に部屋はあるが栞は俺と一緒の部屋

俺がそうさせた

栞が仕事から帰ってくる時は、どんだけ遅くても起きてる

だから今日も


「おかえり」

「ただいま」


栞はローブを脱ぎ、俺に凭れ掛かる


「疲れたか?」

「…少し」


ちょっとの会話をして俺達は眠りにつく


ある日の事だ

仕事を終えてきた栞


「おかえり」

「…ただいま」


何だ?様子がおかしい


「栞?どうし…」


ガクッと栞が膝をつく


「栞!?おい!?」

「大…丈夫…」

「どこが大丈夫だよ!?」


栞を支えてると外からバタバタと足音が


「姉さん!蓮、入るよ!」


紫音が慌てて入ってきた


「紫音!栞が!」

「分かってる!姉さん!傷見せて!」

「はぁ…はぁ…平気…だから」

「いいから見せて!」


紫音が無理矢理、栞のローブを剥ぐ


「「!?」」


栞の脇腹に刺し傷が


「何だ、この傷…」

「姉さん。やっぱり、さっきの…」

「さっき?」

「組員さんが一人刺されて、姉さんが側に行ったと思ったら、すぐに治ったんだ

    でも姉さんの足取りが悪くなって、そのままここに帰ってきたんだ」

「栞、お前…何したんだ?」

「……傷を移動させた」

「傷を、移動?どういう事?」

「他者の…負ったダメ…ジを、私に、移す」

「「!?」」

「私の…新しい、力」


栞の新しい…力

でも


「何で、そんな力を…?下手すれば、自分が死ぬかもしれねぇのに」

「私は、大丈…夫。治せ…る…から」


栞が目を瞑ると、体が赤く光り出す

数秒後に光は消え、栞は脱力し俺に身を寄せる


「ほら…ね?」

「…そういう問題じゃねぇだろ」

「え?」

「他人の傷を自分に移す?自分はどうなってもいいってのかよっ…」

「だから、私は、自分で治せるから「そういう問題じゃねぇ!」