19…限界

南雲…シュウも理子と同じ様に私の力を与えられた人間

しかもある能力に特化した

 

本性を現した南雲は

わざと蓮と神崎さんが一緒にいる時に私を異空間に連れ込み、遊びを繰り返す

蓮と神崎さんにとっては一瞬の間だから、どれだけ長くても気付かれない

抵抗すれば、二人に危害が及ぶ

ただ痛みに耐えながら、永遠と思える遊びが終わるのを待つ


でも、傷は治せても、いつかは体に限界が来る

 

 

蓮side

大学が終わり、家の前に着く

神崎がグッと背伸びし


「明日から連休だ!どっか遊びに「神崎さん、俺が会いに来るまで家から出ないで下さい」」

 

栞の表情は硬い

 

「?どういう事だよ?」

「…何も聞かず、俺の言う通りにして下さい。お願いします」


栞が頭を下げる

俺達にも緊張が走る


「…分かった、お前の言う通りにする。家事は何とかやっとく」

「ありがとうございます」

「じゃあ、またな」

 

神崎は家に入っていった


「なら、俺達も帰ろう」


歩き出すも、栞は神崎家を見上げて動かない

声を掛けようとしたら、また手を上げる


「? 栞?」


神崎家がドーム型に赤い光に包まれる

…ここまでする必要があんのか

栞は俺に歩み寄り


「帰ろ」

「…おう」


部屋に入ると


「蓮…」

「何だ?」


栞は真剣な表情で、俺の胸の前に手を翳す

赤い光が俺を包み込み、消える


「俺まで、する必要があんのか?」

「…」


栞は黙ったまま一歩下がり、両手を横に広げる

風が舞い、栞の髪が靡く

 

数秒後、栞が手を下ろす

まさか


「この家も、包んだのか」

「…蓮」


栞は俺と目を合わせ、力無く微笑み


「…ごめんね」

「え…」


栞は足から崩れ、倒れた


「栞!?」


抱き上げると、体が震えてる


「栞!どうしたんだ!?栞!?」

「蓮!?姉さん!?」


紫音が駆け込んでくる


「姉さん!?蓮!何があった!?」

「わ、分からねぇ…、急に倒れて…」

「何かいつもと違う事は無かったの!?」

「…っ、…栞は力を使ってた」

「それは普段と変わら「さっきと今、俺と神崎に力を使ったんだ。それに神崎の家と…この家にも」

「…何で、家にまで」

「何か、危険な事が起きようとしてるのは確かだ」

「…」

「倒れたのは、もしかして力の使い過ぎか?」

「…力の使い過ぎなだけだったら、疲れて眠るだけだ」


そういえば紫音と仕事から帰ってきた時、たまに紫音の腕の中で寝てた

 

「こんなに、体が震えるのはおかしい」


紫音は少し考え


「蓮、俺達の付けてるネックレスと指輪

 今では俺達の意思を汲んで、組み込まれてない力を発揮するだろ?」

「ああ」

「試しに、姉さんの記憶を見てみない?」

「!」

「流石に姉さんの様にはいかないだろうけど、少しなら…」

 

 

紫音side

ネックレスを握り、自分の意思を込める

蓮も指輪に意思を込め、姉さんの額に触れ目を瞑る


「「…」」

 

何も見えない、ダメか…

 

「ダメ元だったけど、…何も見えなかったな」


蓮を見ると目を見開いて、動揺してる

まさか


「蓮、見えたの?」

「…いや、何も見えなかった。

 ぜってぇに見えると思ってたから、ビックリしただけだ」

「そっか。とりあえず、姉さんを休ませてよ」

「…ああ」

 

 

蓮side

なんとか誤魔化して紫音を部屋に戻した

まだ心臓がバクッバクッと煩い

俺まで体が震え出しそうだ

栞を抱いてる手にグッと力が入る

記憶は、少しだが見えた

変な所で南雲の暴力に抵抗せず、ただ耐えてた

栞にしかねぇ筈の特別な力を持ってて、ソレも使って、栞を…っ

痛みに耐え、血も吐いて

俺達の元に戻る時には、全ての傷を治して

何も無かったかの様に振る舞ってた

そんな栞を南雲は嫌な笑顔で見てて

…だからか

栞をギュッと抱き締める


「そうだよな。

 体の傷を治せても、心がボロボロなんだから、倒れちまって当然だよな」


限界なのが分かってたから

倒れても俺や神崎、家族に危険が及ばねぇ様に、あんなに力を使ったんだな

栞を布団に寝かせ、手を握りながら俯く


「ありがとな、こんなになっても俺等を護ってくれて

 …それに、」


こんな状態になるまで、何一つ気付かなかった…っ


「何も気付いてやれなくてっ…、助けられなくて、ごめんな…っ」

 

顔を上げた蓮の目には、怒りの色

 

「南雲、ぜってぇに許さねぇ…っ!」