15…心の傷

蓮side

後日、神崎に栞と話す場を設けてもらい

神崎と栞が住んでる神崎家のリビングに

 

ガチャ…とドアが開き、目を向ければ変装してない栞が、目を見開いてる

 

 

リビングのドアを開くと蓮が居る

思わず神崎さんに振り向くと


「話、聞いてやれよ」

「…」

「栞」

「…分かりました」


神崎さんは自室へ

私はドアを閉め、蓮に向く

少しずつ歩み寄り、手が届くだろう位置で止まる


「…栞」

「…」

「…っ」


肩を掴まれ、グッと抱き寄せられる

背中に回る手は、震えてる


「…悪かった」

「…」

「話を聞かずに怒って、置き去りにして…ごめんっ

 紫音から全部聞いた。家族の為に何も言わなかったのも、拒まなかったのも

 俺の為に力を使ったのも」

「…」

「それに、俺を庇って銃弾を受けただろ」

「…」

「助けてくれて、ありがとな

 また一人で苦しませてっ、悲しませてっ、すまねぇっ…!」

「…っ」

 

 

蓮side

栞はおずおずと俺の背中に手を回す


「…蓮」


栞を見ると、目に涙が溜まってる


「あの時、蓮に拒絶されて…どうにかなっちゃいそうだった

 蓮以外の人に触れられたくない

 でも…、神崎さんは私の力を知らない

 怯えられて、また…バケモノと言われるのが怖かった

 恐怖の対象として見られる恐ろしさを選んだ。

 でも結局、自分でも思った。私は…バケモノだって」

「…っ」


ギュッと抱き締める

栞にこんな…こんな思いをさせちまってたなんて

辛い時に、一緒にいてやれなかった


「バケモンなんかじゃねぇ」


栞の頬を両手で包む


「もし、そんな下らねぇ事を言いやがった奴は、俺が潰してやる

 お前も…、そんな事を考えれなくなる位に、俺だけしか考えられない様にしてやる」


栞の目から涙が零れる

指で摩り取り、唇を塞ぐ

少し離れ、見つめ合うとお互いに唇を合わせる

唇を啄み、舌を捻じ込む


「んぁ…っ」


口内を弄り、栞のと絡める


「ん…んぅ…」


暫くして唇を離すと、栞は息を切らしガクッと俺に凭れ掛かる

…我慢出来ねぇ

ふと机を見ると、そこにあるモノとメモが


『俺は桜井組の頭んとこに行ってる、終わったら呼びに来いよ』


…神崎の奴

でもまぁ、サンキュ

俺は栞を横抱きにして寝室へ向かった

 

事を終え一眠りし、目を覚ますと陽は落ちてて

慌てて神崎を呼びに行くと


「遅ぇよ」


半目で玄関に立ってた


「わ、悪い、眠っちまってて…」

「疲れ過ぎてか?…栞は?」

「起こしてねぇ」

「…はぁ。とりあえず、俺はここに泊まらせてもらう

 お前はそっちで寝ろ」

「え?」

「え?じゃねぇよ。…傷付けた俺が言えた事じゃねぇが、癒せるのは蓮、お前だけだ

 今日は甘えさせて、安心させてやれ」

「…ホントに、お前が言える事じゃねぇな」

「……うっせぇよ。分かったらさっさと戻れ」

「おう」

 

 

神崎修二side

蓮を見送り、溜息を吐く


「…ホントに、悪かったな」

「本当にな」


振り向くと紫音が

目付きや雰囲気が…殺気立ってる


「アンタの所為で、姉さんがどんだけ悲しんで…苦しんだと思ってる」


俺は紫音に向き、頭を下げる


「悪かった」

「…」

「紫音」

「!…楼さん」

「居間に来い、神崎…お前もな」


桜井組の頭…桜井楼に言われ、居間へ行く

 

するとそこには


「いらっしゃい、神崎さん」


声は明るいが、雰囲気が怖い栞の母親と


「…」


無言でジッと俺を見る、栞の父親


「座れ」


言われるがままに、正座し体を震わせる


「さて、俺の大事な娘に脅し紛いの取引をして

 悲しませて辛い思いをさせた分はキッチリと、落とし前付けてもらおうか?」

「…は、…はい…」

 

 

紫音side

家族総出で神崎を色んな意味で袋叩きにした後、俺は神崎家に目を向ける


「蓮、任せたよ」


姉さんは、幸せに微笑む姿しか似合わない

 

 

蓮side

神崎と話し、栞の待つ家に戻る

寝室を開ければ


「! 蓮っ…!」


体が上手く動かせなかったのか、床に座り込んでる


「栞!?」


駆け寄ると俺の胸元にしがみ付き


「蓮っ…蓮っ…!」


栞を抱き締め


「栞?どうした?」

「目が覚めたら、蓮がいなかったから…っ」


震えてる

心が、深いとこまで傷付いてるんだ


「…すまねぇ。もうどこにも行かねぇ、栞を一人にしねぇから」

「ホント?」

「ああ」

「もう、離れない?…置き去りにしない?」

「…っ、ああ。絶対にだ…もう二度と、」


お前を傷付けない


「良かったぁ」

 

栞は顔を擦り寄せてくる

…こんな姿、初めてだ


「栞」

「? 何?」

「俺にして欲しい事があれば言え、何でもしてやる」


栞は一瞬、キョトンとして


「…何でも?」

「ああ、何でもだ」

「…」


栞は少し俯き、俺の服をギュッと掴むと顔を上げて


「キス…して」


栞の頬に手を添え、キスする

離れると


「ダメ、もっと…して」


それを合図に俺は深く口付ける

 

どれ位経ったか、唇を離せば銀色の糸がプツ…と切れる

栞を抱え上げ、ベッドに移動する

栞の顎を指でクイっと上げ、トロンとしてる目を見つめ


「次は?」

「…蓮」

「ん?」


少し乱れてる栞の髪を整え、耳に触れる


「…っ」


今度は唇で触れ


「栞、次は何だ?」

「…あっ」


耳から頬、首筋、鎖骨へとキスを落としていく


「んっ…ん…」


顔を上げ


「何も言わねぇなら、俺の好きにするぞ?」

「…」


栞はゆっくり瞬きすると、フワ…と微笑み

自らキスし


「蓮の好きにして?私は蓮のモノ、蓮だけしか考えられないようにして?」


普段なら絶対に言わない言葉を、トロンとした目で微笑んで…

ブツッと理性が切れた

噛み付く様にキスしながら押し倒し

栞の意識が無くなるまで食らった


次の日

栞が全く動けなかったのは言うまでもない

そして、神崎は酷く窶れた顔でもう一度謝ってきた

…一体、何があった