7…怒り

蓮は視線を私に向けると、怪訝な表情に


「…二人で、何してたんだ」


私が口を開く前に


「何も?栞と話をしてただけだ」

「!」

「じゃあな、栞」


神崎さんは私の頰をひと撫でして、蓮の横を過ぎ去っていった

 

 

蓮side

俺と紫音に群がる女をどうにか離して、栞に目を向けると


「あれ?」


栞がいない


「紫音、栞は?」

「え?」


紫音も周りをキョロキョロ見る


「姉さん、どこ行ったんだ?」


手洗いか?

それでもこんな場所で1人で行く筈が無ぇ

周りを見ても栞らしき姿は無い


「蓮、一応トイレを見て「紫音さ〜ん!お話しましょう?」」


探しに行こうとした紫音の腕にまた女がくっつく

仕方ない、俺だけでも


「ここは頼んだ」

「え!?ちょ、蓮!?」

 

会場には居ねぇみたいだし、残るはバルコニーだけか

最高クラスのホテルだけあって、最上階には1ヶ所だけバルコニーがある

カーテンに手を掛け、外に出れば

栞が神崎さんと…2人っきりでいる


「神崎さん、と…栞?」


声を掛けると栞がバッと俺を見る

栞の驚く表情、そして首には…、!?


「…二人で、何してたんだ」

「何も?栞と話をしてただけだ」

「!」


口調がっ

それに、呼び方


「じゃあな、栞」


神崎さんは栞の頰をひと撫でして、俺の横を過ぎ去る

瞬間


「お前が彼氏?悪いけど、貰うよ」

「!?」


神崎さんはニヤ…と口角を上げ、会場へ戻って行った

 

俺は栞に駆け寄り、両肩を掴む


「アイツと何があった!?」

「…」


栞は目を合わせない


「何で何も言わねぇ!?」


肩を掴む手に力が入る


「…っ、それとも、言えねぇ事をしてたのか」

「…」


栞は何も言わない


『悪いけど、貰うよ』


ギリッ…と歯を噛み締める

栞の首にある赤い傷

つまり、栞はここまで近づくのを許したっつう事か!?


「…何でだよ、何でこんなの付けられてんだよっ!?」


栞がやっと目を合わせる

だが、カラコンの奥で僅かにペンタクルが見える


「!?」


バッと咄嗟に目を逸らす

今…まさか、記憶を消そうとしたのか!?

目を合わせば、ペンタクルは消えてる


「栞、今何しようとした」


記憶を消して、神崎と会ってたのを隠そうとしたのか!?

 

「れ…蓮、話を「何を聞けって?」」


何でここまで近づくのを許したのかを?

それとも…、俺の記憶を消して、何も無かった様に側にいるって言うのか?

いいよなぁ、お前は


「お前はいいよな。俺に言えない…どんなやましい事をしてたって

 力使って記憶を消せばバレねぇんだから」

「!?」


俺は栞を置いて会場に戻った

立ち竦む栞が、どんな表情をしてたのも

栞の心を、どれだけ傷付けたのかも知らずに