16…襲撃

数日経ったある日

大学を出て大通りに入った時、忘れ物に気付いた


「悪りぃ、忘れ物取ってくる」

「早くしろよ〜」

 

 

神崎修二side

蓮を待ってると路地裏から男が


「うわぁああ!」


叫びながら包丁を持って走ってくる


「!?」


栞は瞬時に動き、男を捻じ伏せる


「くそっ!お前の父親の所為でぇ!!」


またか…

栞が首に手刀を当て気絶させるのを見て安心した瞬間

別の路地から男が包丁を持って走ってくる

マジか!?

咄嗟に両腕で顔を庇い、目を瞑った瞬間

ズブッと嫌な音がした

 

でも、痛みは無い

恐る恐る腕を下げて目を開けると、目の前には栞が


「!?」


ポタ…ポタ…と音が

地面を見ると、栞の足元に血が


「し、栞…」


目線を上げると


「邪魔だっどけぇ!」


男は栞に刺した包丁を無理やり抜き、振り上げる

栞は男を抑え捻じ伏せ、気絶させた


「し、栞」

「まだ他に…いるかも、しれません、気を…抜かないで、下さい」


栞は刺された箇所を抑え、周りを警戒する

そうだ、いつもだったら相手が慌てて逃げてるが

…そういえば、ここは大学を出てすぐだ

慌てて周りを見るも、他の生徒はいつもの様に帰ってく

!? 何でだ?何で皆、この状況に気づかない!?

倒れてる男は自然に避けられてる

何が、どうなってる…


「神崎?…栞!?」


バッと正門に目を向けると蓮が


「蓮?」

「おい!?栞!?」


蓮は栞に駆け寄る

おい蓮、お前何で俺達に気付いてる

他の奴等は普通に帰ってくのに、何で…お前だけ

 

「…り、栞!!」


ハッと我に帰る

蓮は栞の肩に手を置き、必死に声を掛けてる

栞は息を切らしながら蓮を押し返す素振りを見せ

ゆっくりと立ち上がり、俺に近寄る


「し、しお「神崎…さん、動か…ない、で…下さい」」


栞の血だらけの手が俺の胸の前に

すると、赤い光が俺を包み込む


「!?」


栞を凝視するが、言われた通りにする

数秒後、栞は手を下ろし


「これで、俺が…いなくても、貴方に危害が、加えられる事は…無い

 本当なら、今すぐに…記憶を、消したいが」

「…え」


周りに風が舞い始め、瞬きした瞬間

もうそこは家のリビング

玄関へ走りドアノブを握るが


「!? 開かない!?」


まさか栞が、開かない様にしてんのか

俺はその場で呆然と立ち竦んだ

 

 

蓮side

栞が神崎を《テレポート》させた後、

倒れてる男2人に目を向けると、男達は一瞬で消える

栞は左目にペンタクルが浮かび上がったまま俺に目を合わせ


「蓮も帰れ」

「! 待っ「うっ…」」


栞は腹を抑えて座り込む


「栞!」


栞は出血してる箇所を抑え、息を切らす


「早く治せ!シールド張ってんだろ!?」

「死には…しない」


こんな傷でも、治さないのか!?

俺は栞の両肩を掴み、目を合わせる


「頼むからっ!今すぐ治してくれ…!」

「…」


栞は目を伏せ、出血箇所に手を添えると、赤い光が

 

数秒後、光が消え、栞はスッと立ち上がる


「これでいいだろ。帰れ」


栞が立ち去ろうとする


「待てっ」


栞の手を掴む


「どこ行くんだ」

「…さっきの男達のとこだ」

「何をしに」

「アイツ等は複数で襲ってきた、なら他にもいる可能性がある。情報を聞き出す」

「…一人でか」


栞は俺の目を見て


「蓮、俺は今…鷹だ。お前は、組の人間じゃない」

「…」

「組の人間じゃないお前に、これ以上は駄目だ」


ギリッと歯を噛み締める


「そう言うんなら、無理矢理でもお前を行かせねぇ」

「…」


栞は俯き、顔を上げると


「!」

 

鷹の時は常に無表情なのに、泣くのを堪える表情で


「お願い、蓮。これから私は…蓮に見せられない、見られたくない事をしに行くの

 …私はもう、紫音を巻き込んでる

 これ以上、大切な人を極道の…人間の汚い世界に巻き込みたくないっ…!」


栞は俺の胸に顔を埋め


「お願いっ…、自分の為にっ…私の為に…」

「…」


だったら…


「だったら、俺はどんな手を使ってでもお前を止める」


俺はあるモノを口に含み、栞の唇を塞ぐ


「!」


舌を捻じ込み、ソレを栞の口内へ入れる


「!? んっ…んぅ…!」


頭と腰に回してる手にグッと力を込め、動きを封じる

ゴクッと飲み込んだのを確認し、唇を離す


「はぁ…はぁ…何を…」

「お前専用に処方してもらった安定剤だ、飲むと眠くなる。速攻でな?」

「!」


栞の体の力が抜け、ガクッと崩れるのを支える


「…っ、れ…」


栞の頭がクタ…と垂れ、眠る

栞を抱き抱え


「お前がそう思ってくれてるのと同じ様に

 俺だって、出来る限りお前にそんな事させたくねぇんだ」


額に口付け、歩き出す

…そういえば

神崎、栞の力とペンタクル見たよな

まあ後からでも記憶は消せる

今は栞を家に帰らせるのが先だ

 

 

月影side

頭の中で映し出される映像を見終わり


「あ〜あ、失敗しましたか。…でも、ドールの力が見れたのは収穫でしたね

 次は、使い捨てのモノじゃなく

 貴方にやってもらいましょうか?」


振り向き、ある者に笑顔を向ける


「いいぜ?やってやるよ」

「任せましたよ?ああ…でも殺してはいけませんよ?

 生かしてこそ、ドールにも人質にも価値があるんですから」

「了〜解」

 

 

?side

久々に日本に来たと思ったら、鴉間はいねぇし、俺の可愛い妹もいねぇ

そこに月影が現れた

退屈しのぎになる事を提供してくれるから組んでる

そして漸く、俺の可愛い妹とも会える


「待ってろよ、栞。いや…人殺し人形」