17…本当の私

私が目を覚ました頃、捕らえた男達は楼が尋問し終わってた

でも、男達は洗脳されてるみたいで

神崎さんの親への憎しみはあったけど、知りたかった情報は何も無かった


そして意を決して…、神崎さんが待ってる神崎家に

玄関を開ければ、バタバタと慌しい足音が


「栞、蓮…」

「…神崎さん」

「……入れよ」


リビングに上がると、神崎さんはお茶を用意してくれた

 

「「「…」」」


長い沈黙

神崎さんは目を泳がせ、お茶を啜り続ける

お茶を置き、深呼吸をすると


「…栞、腹の、傷は?」

「…私は、自分で…治せるんです」

「そっか、良かった

 ……あれから、俺なりに色々と考えた。

 疑問も残るが、納得してる部分が多い」

「…」

「お前が組に属してるって知った時から、何で女の子がって思ってた

 確かにお前は強い、護衛を完璧にやってくれてる

 でもそれだけで、極道の世界に踏み込むのかって

 …お前の特別な力を見せられて、納得したよ」

「…」

「だから、お前に謝らなくちゃいけねぇ

 披露宴の時、お前に変な噂があると言った」


膝の上でビクッと反応する手を蓮がそっと握ってくれる


「俺がお前に直接的に言った訳じゃねぇが、お前を怖がらせた

 すまなかった…っ」


神崎さんは頭を下げる

 

「…ありがとう、ございます」


神崎さんはバッと頭を上げる


「私の力を見た上で色々考えて…、

 それでも、今こうして怯えずに、怖がらずに接してくれる

 …だから、ありがとうございます」

「…あ、あのさ」

「はい」

「ただの、興味なんだけど…、栞は他に、どんな力を持ってんだ?」

「…」



蓮side

栞の目付きと雰囲気が変わる


「!?」

「…」

「神崎さん」

「お、おう…」

「私は言いました、記憶を消すと」

「!」

「あの時は、貴方を一刻もあの場から遠ざけたかったから

 記憶を消せなかった、…だが、今は違う」


左目にペンタクルが


「今後も護衛はする。だが、あの時の記憶は消させてもらう」


ガタッと神崎が立ち上がる


「まっ、待ってくれ!じゃあ何で話してくれたんだ!?

 さっき会った時点で消せばよかっただろ!?」

「…貴方が私を見た瞬間、恐怖や怯えの感情が無かったから

 力の事を話しても…それ等の感情が現れるか、知りたかった…」

 

栞は視線を下げる


「…私は今まで、この力で色んな言葉を言われてきた」


 《殺戮人形!》《人殺し!》《バケモノッ》


栞は神崎に目を合わせ、無理矢理笑顔をつくり


「貴方は、こんな私を好きだと言ってくれた

 思いがけず、貴方に前で力を使ったから記憶を消さないとって思ってる…、けど

 欲が出た

 私を好きだと想ってくれてる人が、どんな反応をするのか」


栞は俺を見上げ


「蓮は、小さい頃からこの力を知ってる

 怖がらずに、怯えもせずに…、ずっと側にいてくれる」


俺は栞に微笑み、少しでも安心させる

栞は神崎に向き


「でも貴方は、私の力を知らずに側においた

 だから、本当の私を知ってどんな感情を持つのか

 記憶を消す前に知りたかった」

「…栞」

「本当の私を知っても、怖がらないで…怯えないでいてくれて、ありがとうございます」

「…っ」


栞が神崎に手を翳す

赤い光が出た瞬間、神崎が栞の手を掴む


「…待ってくれ」

「…」

「記憶は絶対に消さないといけねぇのか?

 俺が絶対に喋らねぇって約束しても、消すのか?」

「…消さないと、貴方が危険な目に合う可能性がある」

「んなの前から「貴方が経験してきた様なモノじゃない、最悪の場合…死ぬ可能性だってある。それも、普通じゃない殺り方で」」

「…」

「蓮にも、最初は正体を隠して接してた。離れる時には私の存在を消す覚悟で

 今、一部の記憶を消さなくても

 護衛が終わった時、私の存在を神崎さんの中から消す」

「護衛…か、なら、今命令する。俺の記憶は消すな」

「…」

「命令だ、逆らうのは許さねぇ」

「………はぁ」


栞の手から赤い光が消える


「命令に、従います」


神崎は微笑んで


「これからも頼むよ、栞」

「………はい」

 

神崎は俺を見て


「これであの時の事が納得する」

「あの時?」

「大学の前だってのに、周りは俺達に気付かなかった

 でもお前は気付いて、栞に駆け寄ってたな…」

「ああ。基本栞が近付けない様にしたら、気付けても近寄れない

 でもあの時は栞が怪我で弱ってたし、俺にはコレがある」


神崎に指輪を見せる


「指輪?」

「コレには、少しだけど栞の力があるんだ

 そして最近は俺の意思を汲んで色んな力を発揮する様になってる

 だからあの時、栞が力を使ってても近寄れた」

「……スゲェのな」

「蓮、そんなの知らなかった…」


栞まで驚いてる


「だってそんな事言っちまったらお前、コレから力取るかもしれねぇだろ」

「…」


…否定しねぇな


「ま、そういう訳だ」


こうして、また3人での大学生活が始まった