警備隊

カイside

今日は今までと違って、シオリ達の服装が違う

仕事をしに行く日だからだ

前からこの日はゼルファと留守番って言われてるけど…

やっぱり…、俺だって魔法の練習を頑張ってきたんだ!


「シオリ!」

「ん?」

「やっぱり俺も行く!」

「…」

「カイ、ゼルファと留守番するって約束だろ?

 お前は子供だし、魔法も練習中なんだ」

「やだ!子供だから何だってんだ!魔法は沢山練習してきたんだ!

 寧ろ一緒に行って、実践すればもっと上手くなるだろ!?」

「確かに沢山練習してきたけど

 俺達が行く仕事は、とっても危険なんだ

 カイは大切な家族だから、危険な目に合わせたくないんだよ

 な?ゼルファと待ってて?」

「〜っ、ゼルファッ!!」

〔ん〜…、ここで魔法の練習をしてても良いかと思っておるが

 シオリ達の戦い方を見させるのも良いと思っておる〕

「戦い方?」

〔うむ 実際にシオリ達の行く仕事は人間、ましてや並の魔導士が出来る仕事ではない

 実践には参加せずとも戦い方を見るだけでも、学びになろう〕

「シオリ!ゼルファがこう言ってるんだから!」

「…」

〔まあ、シオリが駄目だと言うのであれば我はソレに従おう〕

「!? …、シオリ〜…?」

「…」


シオリは考え込んでる

頼む!連れてってくれっ!


「…はぁ、分かった。一緒に行こ」

「! やっ「但し」」

「ギルドにはいいけど、仕事に連れてくかは別」

「え!?」

「仕事に連れてっていいか聞くから、許可が出たら行こ

 ダメだったら、ゼルファと家に戻って」

「! じゃあさっさと聞きに行こうぜ!」


狼の仮面を着けたシオリの手を握り、森を抜けて街中を歩く

ふと、シオリを見上げると


「…あれ?」

「? どうしたの?」


仮面を着けてるけど、シオリの表情が

俺を見て、不思議そうにしてるのが見える


「もしかして、カイにも見えてんのか?」

「え、見えるの?」

〔カイはシオリから作った魔水を飲み、かつ…シオリの力が篭ってる物を身に着けている

 レンとシオンと同様に見えるのは不思議な事ではない〕

「そっかぁ、俺にも

 仮面を着けててもシオリがどんな表情してるのか見えるのか!

 それに…」


ジッと見れば、あの綺麗な目で俺を見てる


「これからいつでもシオリの綺麗な目が見れるんだな!」

「「!」」

「綺麗な目…。ありがとね、カイ」

「おう!」

 

 

紫音side

ギルドに着くと

皆が俺達を見てザワザワしてる

? どうしたんだ?

とりあえずカイと一緒にミルデさんの所に


「おはよ、ミルデ」

「はよ」

「おはよ、ミルデさん」

「おはよう。…って、挨拶してる場合じゃなさそうよ?」

「何が?」

「何がって…、

 貴方達、凄い事やらかしちゃったそうじゃない」

「? 凄い事?」

「何の事ですか?」

「ここら辺の人身売買の組織を壊滅させたんでしょ?」

「「「…、あ〜」」」


なるほど

最近ギルドに入ったばかりの新人がデカい組織を壊滅させた事が話題になってるのか


「警備隊に突き出した時、誰も名乗らなかったんでしょ?

 そこ等辺のチンピラなら問題無かっただろうけど

 突き出されたのはこの国で問題になってた奴等!

 そんな奴等を誰が倒したんだって、警備隊のお偉いさんも流石に動いたのよ

 …で、目撃情報に狼の面を着けた女の子ってのがあって

 そんなのはもうシオリしかいないでしょ?

 ここ等辺の住人はシオリを知ってるから

 聞き込みをすれば一発で、このギルドに所属してるって分かったらしいわ

 さっきまで来てたんだけど、貴方達は居なかったから

 代わりにラーガが警備所に行ってるわ」

「なあなあ、アンタに許可取ればクエスト行っていいのか?」

「ん?誰が喋ったの?」


あ、カウンター内に居るとギリギリカイが見えないか

ミルデが少し身を乗り出して、やっと2人の目が合う


「あら、君は?」

「俺はカイだ!」

「カイ君ね、その耳は…魚人族

 シオリ、この子はどうしたの?」

「その壊滅させた組織に捕まってた」

「…それを助けて」

「家族になった」

「へぇ、そうなの。私はここの受付をやってるミルデよ、ヨロシクね」

「おう!ヨロシク!」

「…で、相談があるんだけど…」

「?」

「カイを仕事に連れてっていい?」

「!?」


ミルデさんは目を見開いて、カイを見る


「…、カイを連れてくの?」

「おう!俺も行って、シオリ達の戦い方を見るんだ!」

「…」


ミルデさんは姉さんに視線を向け


「「…」」


少しの沈黙後


「…はぁ、つまり

 カイが行きたいって言うのを、私の判断に任せるって事?」

「そう」

「…、許可出来ないわ」

「え!?何でだよ!?」

「いくらシオリ達が強いとはいえ、子供を討伐クエストに連れてくなんて…」

「子供扱いすんなっ!俺だって強くなってるんだぞ!」

「おいおい、いつからここは託児所になったんだぁ?」


入口を見れば、ロギアとルト、キエラが

3人は近付いてきて


「おいチビ、ここはガキの遊び場じゃねぇんだよ

 ガキ連れてとっとと帰れ」

「…」


姉さんは3人を無視して


「さっきの話に出てきたラーガに聞いて、それで駄目だったら大人しく家で待っててね?」

「!? そんなぁ…」

「おい!聞いてんのかよテメェッ!」


ロギアが姉さんに掴み掛かろうとするが


「止めろロギア」


蓮が立ち塞がる


「この前の事、忘れたか?もうこれ以上、栞に突っ掛かるな」

「蓮、テメェこそ…、いつもいつもコイツを庇いやがって…っ」

「そりゃ庇うさ、栞は俺の嫁

 夫である俺が庇って何か文句あるか?」


周りが騒つく

蓮は皆に聞こえる様に


「この際だから全員聞いとけ!

 栞は俺の嫁

 今後栞に手を出せば、俺が容赦無くぶっ潰すからな!」

「弟である俺も、容赦しないからね?」

「俺だって!シオリを傷付けたら許さねぇぞ!!」


ギルドがシーン…と静まり返る

そこに


「おいお前等、今度は何を騒いでる」


入口にはラーガが

ラーガはカイを見て


「…そのガキは何だ?」

「私達の家族、クエストに連れてっていいか聞きに来た」

「…、そのガキをか?」


カイは姉さんとラーガを見合わせ


「このオッサンがいいって言えば良いんだな!?」

「…そうだね」

「おいオッサン!俺をクエストに連れてっていいって言ってくれ!」

「…」


ラーガは姉さんに視線を合わせ


「…ガキの子守をしながらクエスト出来るのか?」

「ガキじゃねぇ!」

「ガキをガキと言って何が悪い

 おいチビ、お前等が行くのはSSクエストだ

 そんな所にこんなガキを連れてくってのか?」

「…ホントなら留守番しててもらう筈だったんですけどね」

「……、クエスト出来んのか」

「問題無く。でも流石に上の人に話を通しといた方がいいと思って」

「…………、はぁ…。まぁ、テメェ等なら大丈夫か」

「ラーガ!?まさか許可するつもりですか!?」

「いつまでも付き纏われそうだからな

 …戦わせる訳じゃねぇんだろ?」

「勿論…、実践を見せた方が良い経験になるって言われたので」

「…ふん、確かにな。よし、許可してやる」

「! よっしゃあぁっ!」


両手を突き上げて喜んでるカイを横目に、ロギア達は舌打ちして出て行った


「だったら早くクエストに行こうぜ!」


エストボードを見に行こうとカイが走り出す


「ちょっと待て」

「何だよオッサン!!」

「オッサンって言うな!俺はラーガだ!」

「なら俺もガキじゃねぇ!カイだ!」

「…、…ッチ。おいチビ」

「…、私もチビは止めてほしいんですけど」

「あ!?…〜っ!クソッ!知るかっ!!

 お前等、クエストが終わったら警備隊が来るまでここに居ろ!

 ミルデから話は聞いてんだろ

 俺だって知らなかった事だから、うちのギルドのモンだってしか言わなかった

 お前等、人身売買の組織…壊滅させたそうじゃねぇか

 警備隊のお偉いさんが直々にお前等に会ってみたいとの事だ

 多分昼には来るだろ」

「昼って…っ、クエスト行かせてくれるんじゃねぇのかよ!?」

「大丈夫だ コイツ等なら大抵のクエストはすぐに終わらせてくる

 …ぜってぇに帰るんじゃねぇぞ?」


ラーガは奥へと消えていく

姉さんを見れば、面倒臭いって表情だ


「…とりあえず、クエスト行こうぜ」

「……うん」

「…だね」


そうして

カイを連れて討伐クエストに行き

俺達が魔物と戦ってる間、ゼルファがカイの側にいて

色々と解説?的な事をしたらしい

魔物を倒し終わった時には


「スゲェッ!」


目をキラキラ輝かせて、もの凄く興奮してた