9…護衛

紫音がお父さん達に上手く話してたお陰で

ここ数日は紫音と一緒に過ごしてる


数日後、楼に呼ばれた


「鷹、仕事だ。ある男を護衛しろ。狙われる立場になったそうだ」

「俺が護衛をする必要性は?」


ただの護衛なら、他の人間でも事足りる


「指名だ」

「…指名?俺に、ですか?」

「鷹に…と言うよりも、栞にだな」

「……何故」

「…実はな、依頼人は神崎修二だ」

「!?」

「久八高に知ってる後輩がいて、腕が立つのを知ったんだと」

「…」

「それとな、神崎家の当主になっただろ?住むのをこっちに替えるらしい

 ついでに言っとくとな?蓮と同じ大学なんだよ」

「!?」


よりによって…


「鷹、いや…栞、この依頼受けなくても構わねぇ

 話は聞いてる、断っても「やります」」


楼は目を見開く


「…いいのか?」

「仕事は仕事、私情は挟みません」


1つでも断れば恐らく、おヒレが付いて話が広がり桜井組の評価が落ちる

楼は少し思案し


「分かった。お前がそう言うなら、受けよう」

「はい」

「明日、顔合わせだ。それと、護衛中は男装しろ」


…男装?


「それは、どういう事ですか?」


私は影で動く存在、そんな事をする必要は無い


「付き人として護衛してくれとの依頼だ」

「………は?」

「元々蓮の付き人として行ってたんだ、表で動くなら変装するのは当然だが

 付き人が女だと、周りが煩いからってな」

「…分かりました」

「蒼鷹には俺から上手く話しておく。

 今勉強が忙しいだろうから、そっちに集中させとこう」

「はい」

 

 

ついでに

蓮の新しい付き人は元々付ける人ではなく、自ら立候補した人らしい

 


翌日

この人と、再会した

楼が着いていくと言ったけど断った

リビングに通され、真向かいに座る


「護衛する、桜井組の鷹です」


いつもの様にローブを纏い、フードで顔を隠す


「付き人としてって言っておいたよな?何で顔を隠してる」

「…本日は挨拶のみと聞いてますので」

「ふ〜ん?ああそれと、護衛中はこの家で過ごしてもらうぜ?」

「…はい」

 

ある程度の挨拶を済ませ

立ち上がり、リビングを出ようとすると


「おい、どこ行く」

「…ここで過ごす以上、戻って準備をしないといけません」

「日用品か?それなら大体揃ってる、問題無ぇだろ

 それよりも…フード、外せよ」

「…出来ません」

依頼人に顔を見せれないのか?」

「…本日は挨拶だけ、護衛は明日から「んなの関係無ぇよ」」


肩を掴まれ、ドンッと壁に押さえ付けられる


依頼人に口答えすんなよ、今日も明日も変わんねぇだろ

 さっさと顔を見せろ」

「…」


フードを外し、神崎さんに目を合わせる


「久し振り、栞」

「……今は、鷹です」

「ふっ、そうだな。ビックリしたぜ

 お前の素性を調べようとしたら何も出てこねぇし

 久八高の後輩に聞けば、桜井蓮が頭をやってた族の姫だし

 それに、女とは思えない程…腕が立つそうだし?

 しかも左目…オッドアイか、綺麗だな」

「…」

「でも、狙われる立場ってのは嘘じゃない

 だからちゃんとした依頼をしたんだ、お前が属してる…桜井組にな?」

「…」

「ああ、そういえば…桜井蓮とは同じ大学で学部も一緒なんだ

 今まで話し掛けた事は無ぇけどな?」

 

神崎さんは試す様な目で私を見る


「依頼を受けた以上、仕事は確実にこなします。

 私情は挟みません」

「へぇ。仕事…ねぇ

 なら、依頼人の言う事には従ってもらうぜ?どんな命令でもな?」

「…」


受理した以上、依頼者の要望に応えるのは当然の事

もし代わりに死ねと言われても、私なら偽装は可能だ

組に入る時

万が一、そういう要望をされたら偽装しろと指示を受けてる

まあ、この人ならそんな事は言ってこないだろう

 

神崎さんは唇を私の唇に寄せ


「キス、させてくれる?」

「!?」


神崎さんの指が私の唇をなぞる


「言ったろ?どんな命令でも従ってもらう」

「…」

「ああ、選択肢をやろうか。

 俺に従うか、拒否して自分の所為で…桜井組の評判を落とすか」

「…」

「さて、どうする?」

「…っ」


この人の前では、力は使えない

それに家族は、絶対に傷付けさせない

私が、耐えてればいいだけ

目を閉じて、気付かれない様に深呼吸する


「…分かりました。貴方の命に従います」

「ふっ、良い子」


顎をクイッと持ち上げられ、唇を塞がれる

唇に何かが当たり、無理矢理こじ開けられる


「あ…っ」


後頭部と腰に手が回ってて、離れれない

荒々しく舌を絡められたりして、呼吸出来ない

体に力が入らなくなっていき、やっと解放されたと思ったら

ガクッと足が崩れる


「おっと」

「はぁ…はぁ…」


神崎さんは頰にキスし


「これからよろしくな?」

「…」


こうして神崎さんの護衛が始まった