20…蓮と南雲

次の日になっても栞は目覚めない

俺は栞の頭を撫で、キスをする


「…ゆっくり休んでろ。お前は、俺が護る」


家から出て、少し離れた人気の無い場所に行く


「いるんだろ、出てこい」


ソイツは音もなく、栞と同じ力で現れる


「…南雲」

 

南雲はニヤニヤして


「へぇ?気付いてたのか」

「…家から、栞が作ったシールドから出たらすぐに分かった

 だからわざと、この場所まで誘導したんだ

 テメェを栞から少しでも遠ざける為にな」

「ふ〜ん?…で、俺を誘い出して、どうする?話し合いでもするか?」

「…自分の大事な女をあんだけ痛めつけた奴を、話だけで済ませると思ってんのか」

「確かに可愛がってやったが、ちゃんと傷は治させた。

 体に痕は残ってねぇし、綺麗な体でお前等の前にいただろ?」

「…っ、そういう問題じゃねぇっ!!!」


怒りでどうにかなりそうだ

 

「体の傷は治せても!心に負った傷は簡単には治せねぇんだよ!!

 栞はテメェから受ける暴力にただただ耐えてっ、血も吐いてっ!

 傷は消えても痛みは消えねぇっ!

 栞は心ん中で泣いてんだよ!!苦しんでんだよ!!

 テメェの所為でボロボロになってんだよっ!!!

 …栞は言ってたっ

 俺達をテメェから護る、例え…自分が殺されるのを分かっててもってっ!」

「ああ、そうだな。

 昔は鴉間に止められてたから、可愛がるだけだったが今は違うな。

 今度こそ、アイツを死ぬまで可愛がって遊んでやる」

「…テメェなんかに栞は殺させねぇっ、栞は、俺が護る」

「はっ、お前が栞を護る?俺から?…ッハハハ!!

 何の力も持たねぇただの人間が、この俺からアイツを護るだと?笑わせる

 アイツは俺の可愛い妹、人殺し人形だ

 お前にアイツは護れねぇよ」

「……れ」

「あ?」

「黙れ!」

「んだよ」

「アイツを人殺しなんて!人形だなんて二度と言うな!!

 お前の妹?っざけんじゃねぇよ!!!」

「…アイツは人殺しだ。鴉間の元で数えきれない人間を殺してる

 人殺しを人殺しと言って何が悪「殺す」」


もう何も考えねぇ

コイツを殺す、それしか頭に無い

 

一心不乱に腕を振り上げる

南雲は簡単に躱し、俺の拳を流す


「…ッ、クソッ!」


南雲の顔に殴り掛かると、パシッと受け止められる


「!?」

「はい、残念」


俺の手を掴んでる南雲の手から黒い光が

バチッ!


「!」


黒い光が赤い光に弾かれ、南雲の手から逃れれた


「っつ…」


南雲は手を振り払い


「小賢しい、俺に勝てると思ってんのかっ!」


雰囲気が変わり、攻撃してくる

ギリギリで躱すが、防戦一方だ

次第躱せなくなっていき、南雲が目の前から消えた瞬間

ドスッ!

鳩尾に激痛が走る


「がはっ…!」


体に力が、入ら…ねぇ

崩れ落ちる途中、南雲が手を掴む


「どれにしようかなぁ」

「ゲホッ…何を、言って」


ボキッ


「!?あぁああああああっ!!!!」

「ギャアギャア騒ぐなよ、指の一本位で」


ボキッ


「!!うぁあああああああっ!!!!」

「煩いなぁ」


南雲は腰を下ろし、俺の首を掴む

ギリッと締め付けられる


「うっ…」

「いいか?」


南雲は無表情で


「今お前は、俺が少し手に力を込めるだけで死ぬんだ

 でも殺さない、何故だか分かるか?

 お前は、栞にとって…最大の人質だからだ

 人質は生かしてこそ価値がある

 お前を殺すのはアイツを存分に可愛がって殺してからだ」

「!」

「ほら、来たぞ?」


南雲に後ろを向かされ、目に入ったのは


「!?しお…り…!?」

「…」

「待ってたぜ?栞」