44…俺は、受け入れる(桜井 蓮)

あの時は、何を言ったらいいのか分からなくて咄嗟に


「その行動が鍵になったのよ。

    坊やだって、誰だってこんなのと関わりたくないでしょ?

    人を殺すのに躊躇わない…こ〜んな殺戮人形なんかに」

「!?  違…俺はそんな事っ!」

「思ってなかったって?今ならどうとでも言えるわね〜

    坊やはあの時、人形と目を合わせなかった

    言ったでしょ?

    坊やの組で、人殺ししてんのよ?

    それを聞いて、目を合わせなかった、何も言わなかった

    この女を受け入れられないって言ったのと同じなのよ!」

「お…俺は…」

「蓮!ソイツの話に乗るな!!」

「紫…音…」

「確かに、姉さんには過ちがある。

    でもっ、この女が言ってる事には嘘がある!

    桜井組で人殺しなんかしてない!それは楼さんが証明してくれる!

    姉さんはずっと悔やんで苦しんでるんだ!!

    今までずっと一人でそれを耐えてきたんだ!

    その姿を知って、蓮は何を思うの!?」

「俺は…」


今までの栞を思い出す

神凪雫として出会った時は何をしても無関心で、俺と関わろうとしなかった

紫音と仲良くしてるのを見て、モヤモヤして…イライラした

白狐の旅行で絡まれた時や、服を捲った時に見た体の傷

何でそんなに傷だらけなんだと思ったが気持ち悪いなんて、一瞬も考えなかった

記憶を消される時も『蓮の為に』って俺を想ってくれた

その後、白狐の姫として俺の側にいるって言ってくれた時は…かなり嬉しかった

そしてあの日、俺を庇い怪我をした時…栞だと気付いた

和士さんと紫音から話を聞いて、傷痕を見られて不安になる栞を見て…改めて思った


俺が栞を護る

俺自身に誓ったんだ、もう離さないって


「蓮」

「兄貴…」

「自分自身に誓ったんだろ。

    栞に会えてからも、傷を、過去を聞いても…それは変わらねぇんだろ」

「ああ」

「つまり、栞を受け入れてるって事だ」

「…兄貴」

「ボサッとしてねぇで、さっさと栞を連れ戻せ」

「ああ…分かってるよ!」

 

 

紫音side

迷いのある目から…真っ直ぐな目になった

良かった

これなら姉さんを任せられる


「ふん…な〜んか、坊やが吹っ切れた話になってるけど…。

    アンタ等に勝ち目は無いわ」

「栞は返してもらう」

「言葉だけだったら何とでも言えるわね〜。試しに来てみなさいよ」


蓮が女に向かって走る、俺も走り出そうとした時だ


「え…待って、アンタ…まさか、キャッ!」

「「「!?」」」


女が栞から出たシールドで弾かれ、ガンッと壁にぶつかり、気を失う

姉さんを見ると、目はまだ虚でフラフラと今にも倒れそうだ


「栞!」


蓮が駆け寄り、肩を触ると


「…れ……ん……」


膝から崩れて落ち、息を絶え絶えに蓮に寄り掛かる


「栞!」

「姉さん!」

「はぁ…はぁ…う…蓮、紫…音」


女が、俺達が認識出来ない様にしたって言ってたけど


「栞、意識があったのか?」

「今…さっき…まで…は、無かっ…た。

    あの…女の…ち…からは…完全じゃ、ない。

    だ…から、何度…も、私…を、殺そうと…して…た」

「今、何つった。栞を…殺す…?」

「そうだ」

「「!?」」