2…モヤモヤ

その後、夜になっても栞は帰ってこない


「遅ぇな…」


いや、仕事の時は遅くなるのは時々ある

いつもの事だって、分かってんだが…


「…」


何だろうな、何か気になる…


モヤモヤして考えてたら、いつの間にか23時を過ぎてる

まだか、まだ帰ってこねぇのか?

すると

車のエンジン音が聞こえ、部屋に光が差し込む


「帰ってきたか」


栞が部屋に来るのが待てず廊下を歩いてるとエンジン音が車庫の方に

玄関に行っても、まだ入ってきてない

そっと戸を開け、隙間から覗いてみてると

月光に照らされる2つの人影が

こっちに背を向けてるのは、恐らく栞だ

もう1人が逆光で顔が全く見えねぇが、あの背丈は…酒向か?

暫く見てると

酒向と思える人影が、栞を抱き寄せた


「!?」


酒向!?

何やってんだテメェ!?

グッ!と戸を掴む手に力が入る

栞も抵抗しねぇし…っ

例え酒向だから…的な言い訳でも許さねぇぞっ!?

っつうか!いつまでやってんだっ!?

漸く2人が離れ、栞がこっちに歩いてくるのを見て、慌てて玄関から離れる

戸が開き、栞が入るのを確認した後

今その場に来たかの様にする


「おかえり」

「ただいま」


…普通に微笑んでる

酒向に抱き締められてたのに、俺と会っても全く動揺してねぇ

まさか、酒向と普段からああいう風じゃねぇよな…?


「蓮?」


気が付けば、栞が目の前に


「栞」

「ん?」

「…お前、」

「?」


栞が不思議そうに首を傾げる


「いや、何でもない。早く寝ようぜ」

「ん、寝よ」


部屋まで歩く中、栞に視線を向ける

急な仕事って、一体何なんだよ

酒向とお前に、強い信頼関係があるのは分かってる

けどさっきのは、度を越えてるだろ…っ!

モヤモヤは無くなるどころか、より一層増していった