16…姉さんと酒向さん

酒向side

栞さんが休まれた後、紫音君が風呂から上がる


「姉さんは?」

「先に休んだよ」

「そうですか、丁度良かった」

「?」


紫音君は真向かいに座る


「酒向さん、話の続きいいですか?姉さんと初めて会った時の」

「ああ、いいよ。その前に、夕飯を頂こうか」

「今日はいくらでも食べれそうです」

「それは何よりだね」


夕飯を食べ終わり、コーヒーを飲む

俺は栞さんと初めて会った時を思い出す


「初めて会った時、栞さん、男のフリしててね。

    ずっとフード被ってたんだけど

   『俺のサポートが出来る人間か確かめる』

   そう言ってフードを外し、俺と目を合わせたんだ

   普段は左目を隠してるけど、その時は隠してなくて

   栞さんの素顔を見た時、思った。

   綺麗な目をした子だなって」

「…それで、手合わせは勝ったんですか?」

「いや?瞬殺だったな」

「しゅ、瞬殺」

「あの時の栞さんは若と和士さんにしか心を開いてなくて。

    正直、なんで俺なんだろって

    若に聞いても何も答えてくれなくて

    そのまま初めて能力を見せてもらって、あの道場で

    凄い、こんな事が出来るんだ…って

    で、負けて倒れた俺は、こう思った

    15の男の子に負けるなんてって

    その時、栞さんが言った

   『俺の能力を見せて手合わせしても、バケモノだと思わないのはお前が初めてだ』」

「!?」


バケモノ…


「で俺は

   『バケモノだなんて思わない!君は普通の男の子じゃないか!

       この能力も、人とは違うけど、…凄い能力だ

       それに、君の目は綺麗だ』

    その時だよ、栞さんが無表情の中、一筋の涙を流したのは…」

「…」

「『ありがと』って小さい声だったけど、今でも覚えてる。

    俺は栞さんの、笑顔が見てみたいと思った。

    若に結果を報告した時

   『あ、言い忘れたけど…俺、女』

    言いながら男装を解いたんだ

    驚いたよ、若にうるせぇ!って怒鳴られて

    その後

   『俺が女でも、サポートする気はあるか?』

   そう聞かれた

   俺は栞さんが女でも、笑顔を見たいと…その気持ちは変わらなかった

   だから…

   『はい、俺に神崎さんをサポートさせて下さい』

   目を見て、そう宣言した」

「…」

「それからはずっと、俺が栞さんをサポートしてる。これからもずっとだ」

「酒向さん」

 

 

紫音side

俺は立ち上がり、頭を下げる


「今まで、姉さんをありがとうございます。」


顔を上げ、酒向さんと目を合わせ


「これからもお願いします」

「よろしくね」


こうして、俺の新たな生活がスタートした