9…約束

酒向side

その夜、仕事が終わり自室に戻ろうとすると


「酒向」


振り向けば蓮様が

手や頰に僅かに血が付いている


「蓮様、どうしましたか?」

「…今回の仕事だが」


蓮様が続きを言う前に、俺は頭を下げた


「仕事を受けた以上、私情は挟まず、何があろうと最後まで努めなければなりません

 ですが、栞さんを護りきれずにあんな事になってしまい、申し訳ありませんっ!」

「……、栞が自分で決めてやってる事だから、もう文句は言わねぇ

 今回だって…

 アイツはどんな怪我をしてても、周りの為に自分がどうなろうが関係無く動く

 誰が止めたって、自分を犠牲にして動いちまう

 それで最後には、良かったって微笑むんだから、どうしようもねぇよな

 ただ…」


蓮様は目前まで迫り


「アイツの心が悲しんだり苦しむ事があれば、酒向…、テメェでも許さねぇ」

「…」

「見ただろ

 アイツがそうなる時は、自分の大切にしてるモノのが傷付く時だ

 極道の人間に傷付くなっつうのも無理な話だけどよ

 酒向、お前は…組員で栞に一番近い存在だ」


蓮様が横を通り過ぎる


「だから、二度と栞の前では傷付くんじゃねぇ」

「…はい」


蓮様に体を向ける


「約束します、蓮様に…自分自身に」


蓮様はチラッと俺を見て、口角を上げて部屋に戻っていく

…待てよ


「ある、別のやり方が」