3…嫉妬(2)

早朝に仕事へ向かい、終えたのは23時になる頃

家の玄関に《テレポート》して、靴を脱ぐ


襖を開けると、蓮はこっちに背を向けて座ってる


「?」


おかしい

いつもだったらすぐに立ち上がって、おかえりって言ってくれるのに


「…ただいま」


不思議に思いながら蓮に近寄る


「蓮?」


肩を触ろうとした瞬間

その手を掴まれ、グラッと視界が揺れる


「!?」


ドンッと背中に衝撃が走り、反射的に目を瞑る

目を開けば、蓮の顔が目の前に


「れ、…蓮?」

「…」


蓮は無表情のまま

両手首をグッと抑え込まれ、覆い被さられてる


「蓮、どうしたの…」

「昨日帰ってきた時、酒向と…何してた?」

「? 春と?」


春は、仕事先と家まで車を運転してもらっただけ

帰ってきた時?


「春とは何も「無かった?」…うん」


グッ!と蓮の手の力が強くなる


「どうして嘘つく」

「え?」

「俺は見たんだぞ」

「…何を」

「お前が酒向に抱き寄せられて、抵抗しなかったのを」

「!?」


春と!?

一体何の話…っ!?


「栞、お前は…俺の女だ」


突然のキス

でも、いつもの優しいモノじゃなく

抵抗を許さない、乱暴なキス


「ん、あ…、ちょっ…、待…れ…っ!」


顔を逸らしてもグッと顎を掴まれ、怒りの表情を向けられて

思わずビクッと固まる


「逸らすな、俺だけ見てろ」


蓮が首元に顔を埋めると

ズキッ!


「!…っ」


鋭い痛みが走る


「これで酒向だろうと…他の奴なんか寄って来ねぇだろ」


蓮と目が合う


「栞、お前は誰の女だ」

「…」

「答えろよ」

「…蓮」

「そうだ、俺だよな?だったら…」


蓮の目がキッと鋭くなる


「俺以外の男に触られてんじゃねぇよ。例え、酒向でもな」


必死に蓮の今までの言葉を思い返す

蓮は、私が春に抱き寄せられて抵抗しなかった事に怒ってる

でも、春とそんな事をした覚えが無い

春は運転をしてくれただけ

抱き寄せられる、思い当たるのは…


「!」

 

 

蓮side

俺は帰ってきた栞を押し倒して、キスした

栞が顔を逸らして逃げようとするが、んな事は許さねぇ


「逸らすな、俺だけ見てろ」


今お前が見てんのは、お前にキスしてんのは…俺だ

首にもコイツは俺のだと、印を付ける

俺以外の奴が、栞に手を出さねぇ様に

例え、酒向でも…

すると

栞は何かを思い出した様で


「蓮」

「んだよ…」

「昨日、確かに私は抱き寄せられてた。でもそれは、春じゃない」

「あ?」

「アレはただの挨拶だから、気にしてなかったんだけど…」

「おい、どういう事だ」

「彼は、今回の依頼人

「…、依頼人?」

「うん。彼、普段海外にいるから。アレは、謂わば…挨拶だから」

「…」

「ただの挨拶だから、抵抗しなかった」

「普段海外にいる奴が、何で日本にいんだよ」


それに、ただの挨拶でも

栞が震えずに抵抗しないっつう事は

それだけ、栞に近い人物って事になる


「それは…」


栞が口籠る

ここから先は、話せねぇってか

…なら


「分かった」


栞の上から退き


「先に寝てろ」


部屋を出る

 

 

私はゆっくりと起き上がり

そっと…、付けられた首の傷に触る


『俺以外の男に触られてんじゃねぇよ』


あんな目を向けられたのは初めてだ

春との誤解は解けたけど、別の問題が蓮の中で起きてるみたい