36…栞と蓮(2)

蓮side

昔、栞と遊んでた時、遠くの物を取ろうとしてソレを宙に浮かした

栞が持ってる特殊能力


「あの時しっかり見たからな、力使って左目にペンタクルが浮かぶのが」

「…っ…」


打つ手が無ぇって感じだな

間違いねぇ


「紫音との事も、これでやっと納得がいく。

    なあ、もういいだろ?

    俺を騙すのはもう、諦めろ。栞」


栞は辛そうな表情だ

どうか、本当の事を言ってくれ

支えてる手に力が入る

栞は顔を上げ、目を合わせる

諦めた様な…悲しそうな表情

やっぱり、本当に…本当に…


「私は、蓮が探してた、神崎栞だよ」

「…っ、栞!」

 

 

蓮が力強く抱き締める

記憶は戻ってない、けど…もう隠せない

紫音は気を使って部屋から出て行った


「栞…!栞!栞!!」

「蓮…」

「やっぱりっ、栞なんだな!やっと!やっと見つけた!!」


蓮が肩に顔を埋める…紫音の時と同じだ

背中に手を回してポンポンと叩くとギューッと痛い位に抱き締められる


「今まで、どこに居たんだ!あの日からずっと!ずっと探してたんだぞ!!」

「ごめん」


紫音には話せたけど、蓮にはまだ…

記憶が戻らない限り、何も話せない


「…ごめん」


蓮は顔を上げ、目が合う


「栞、お前に言いたかった事があるんだ。ずっと、ずっと言いたかった事が…」

「蓮…」

「栞、俺…お前の事がずっと好「ごめん」」

 

 

蓮side

栞はさっきから謝ってばっかだ、大事な言葉も遮られた


「ゴメンはもういい、お前に伝えたい事があんだよ」

「蓮…今は、何も聞けないし話せない」

「?どういう事だ」

「…」

「栞?」

「今の私は、蓮の記憶が無い」

「………は?俺の記憶が、無い?」

「…」

「一体、どういう事だよ」

「…ごめん」

「説明してくれ、記憶が無いって…栞!?」


栞は気を失ってクタッと頭が垂れる


「栞!  栞!?」

「姉さん!?」

「紫音っ」


紫音が、栞の頰に触る


「体が、精神が疲れてる…休ませよう」

「分かった、紫音」

「何」

「俺に話してない事、あるよな?」

「…」

「全部、話せ」

「……分かった、けど。楼さんと和士さんにも同席してもらう

    あの2人が俺よりも分かってる」