36…栞と蓮(1)

「…う」


目が覚めると、視界に入るのは天井


「…私…」


敵を潰して、楼の部屋に戻ってきて

横を見ると紫音が

心配して来てくれたんだ

私の手を握って寝てる、泣いた痕も


「ごめんね」


反対を見ると


「!?」


蓮も寝てる

そういえば、蓮に抱き締められて気を失ったんだっけ

そうだ

蓮に、鷹は雫だってバレたんだった

…とりあえず、水飲みたい

起き上がろうと動いたら

ズキッ


「うっ…!」


ドサッと倒れる

胸を触ると包帯が、和士でも呼んだかな

試しに力を使ってみるけど、何も出来ない

これは、奴等が関係してる

もうそこまで来てるんだ、私を連れ戻す為に

ここから離れよう

私以外の犠牲者が出る前に

…とにかく水が飲みたい

痛いけど、我慢してゆっくり起き上がる

紫音は丁度寝返りをしてくれて、握ってた手が外れた

ゆっくりと立ち上がり、襖まで壁伝いに歩く


「はぁ…はぁ…はぁ…」


これだけの動きに息切れするなんて

襖を開ければ、もうすぐで夜が明けそうな空が


「少し、休んでから…「どこ行くんだ」」

「!?」


振り返れば、蓮がすぐ後ろに


「れ…蓮」

「そんな体で、どこ行くんだよ」


怒ってる様な、心配してる様な表情と声色


「水、飲みたくて」

「なら俺が持ってくる、動くんじゃねぇぞ」


私が返事する前に行ってしまった


「はぁ…」


正直、助かった

思った以上に動けない

襖に手を掛けたままズルズルと座り込み、蓮を待った


「おい…おい…」


誰かに肩を揺すられる


「…姉さん、布団に戻ろ」

「ん、紫音…」


紫音の呼び掛けに答えたものの、体が動かない

するとフワッと体が浮き上がる

紫音に持ち上げられてる?

ポン…と柔らかい布団に降ろされ、やっと目を開く

目の前には紫音が


「ありがと、紫音」

「姉さん、礼を言うのは俺じゃないよ」

「え…」


そういえば肩や背中、誰かに支えられてる

上に顔を向ければ


「蓮」

「…」


蓮は無言で私を見てる

そうだ

さっき起きた時、後ろから声を掛けられて

水を持ってくるって


「…水」


蓮がそれだけ言って、水を目の前に出してくれた


「あ、ありがと」


手を出そうとすると

ズキッ!


「ぅっ…」


体に痛みが走る


「…口開けろ」


蓮が手伝ってくれてゆっくりと飲み切り、やっと落ち着いた


「姉さん」

「何?」

「蓮…」

「うん、バレちゃったね。あの時、雫って呼ばれ「違う」」

「蓮?」


違うって、どういう意味


「姉さん…」


そういえば、蓮がいるのに紫音が姉さんって…


「ま、まさか…」

「……栞」


ゆっくりと蓮を見ると、泣きそうな表情で私を見てる


「れ、蓮」

「栞…だよな?」

「…」

「お前は、神崎  栞なんだよな?」

「…」


どうする

今…力は使えない


「姉さん、もう…いんだよ。俺が全部、話した」

「!?」

「思い出した訳じゃねぇが、記憶を消すなんて、お前しか出来ねぇだろ…栞」