30…楼の弟、蓮

楼が部屋を出て行った


スタ…スタ…スタ…と足音が近づく

楼が来たか

…いや、今出てったばかり

早過ぎる


「兄貴、ちょっといいか」

「兄貴って、まさか!?」

「?」


紫音が慌て出す

兄貴…楼に弟なんていたっけ

とりあえずフードを被る


「入るぞ」


現れたのは…蓮!?

どうしてここに!?

蓮は私達を視界に入れ、一瞬驚いたがすぐに警戒する


「アンタ等、誰だ。ここで何してる」

「…」

「答えろ、それとも答えられねぇか?」

「…」

「ここの関係者は大体把握してるつもりだが、テメェ等は見ねぇな」

「…」


どうしよう

紫音もいるし


「テメェ等、俺がこんだけ聞いてるのにダンマリか?」

「…」

「悪い、遅くなった」


楼がやっと来た

蓮が振り向く


「兄貴」

「どうしてお前がここにいる」

「兄貴に、聞きたい事があって」

「何だ」

「それよりも、コイツ等…誰」


蓮が顎で私達を示す


「知り合いだ。おい、持ってけ」


楼が白い紙袋を差し出す


「兄貴の、知り合い?」

「ああ、俺が呼んだんだ。もう戻れ」


私は動揺してる紫音の手を引っ張り自室に戻る

 

 

楼side

栞と紫音が自室に戻るのを見送る


「今の奴等、何だ」

「言ったろ、俺の知り合いだ。」

「何も喋らなかった、名前すら答えなかったぞ」

「俺に聞きたい事って何だ」

「話逸らすなよ

    …旅行から帰ってきたら、視線を感じる

    組関係かと思って、知ってる事があれば教えてほしいと思って」


もう、来たのか


「組関係ではねぇが。蓮…夜に、もう一度来い。話と…会わせたい奴がいる」

「話?今話せねぇのかよ」

「俺はこれから出る、とにかく夜に来い」

「…分かった」

 

 

家に帰ってきても、不安そうな紫音


「ありがとね」

「え…」

「条件のんでくれて」

「…ホントなら、側にいたいけど」

「ゴメンね、紫音まで狙われる訳にはいかないから」

「ネックレスを着けてれば、大丈夫なんだろ?」

「うん、そう…だけど。紫音が心配だから」

「俺は、姉さんが心配なんだけどな」

「…そういえば、さっき蓮が楼を兄貴って呼んでた」

「!」

「楼に弟がいるなんて知らなかった、今まで見なかったし

    紫音は知ってたの?」

「あ…うん、知ってたけど。

    蓮はまだ組には関わってないから、話す必要が無いと思ってたんだ」

「…蓮はあそこに住んでるの?」

「さあ、どうだろ。蓮とは高校から知り合ったから」

「そうなんだ」


紫音が高校からしか知らないんだったら、私が関わってる訳ないか

…だったらどうして、蓮は私を探してるんだろ

紫音にあの事件を聞いてれば、同情や興味本位で探す人もいるか

まあ、とりあえず


「紫音、自炊出来る?」

「……あ」


家事は、奈緒さんにでも頼んどくか

 

 

紫音side

桜井組で、姉さんを誘拐した奴等が動き出したと聞かされた時

俺がこの手でっ…!

そう思った…けど、止められた

ホントなら、俺が叩きのめしたい

でも、記憶を消すと言った時の姉さん

あんな顔をさせるくらいなら…と渋々だけど受け入れた

 

問題なのはその後だ

前々から恐れてた事、蓮と桜井組で鉢合わせた

ローブを着てたから蓮からは何も分からない

でも《兄貴》って楼さんを呼んだ

姉さんには蓮の記憶が無い…前に俺が話した幼馴染の事も覚えてない

だから姉さんにとっては、居る筈の無い蓮が目の前に

そして楼さんの弟だと知った

色々と誤魔化したけど

姉さんの記憶は、いつ戻るんだ