8…俺は、受け入れる(前原 春也) (2)

数日後、やっと雫が目を覚ました


「雫っ」

「雫さん!」

「雫!」

「…っ神凪」

 


目を開ければ白狐の幹部が揃って私を見てる…いや、1人遠いか

ナースコールで医者が来て、検査へ

目は覚めたけど、体がまだ上手く動かないから、もう少し入院するらしい

検査が終わるまで待ってた蓮達、ホッと安心した表情の中、1人俯いてる

前原は顔を上げ


「ごめん!」


頭を下げてきた


「何で」

「何でって、俺…お前が宮園達に連れてかれるのを黙ってた

    蓮に報告しなかった、その所為でこんな事にっ…!」

「…そんな事」

「おま、そんな事って」

「前原、俺の事嫌いだろ」

「!?」

「たまたまお前が同じクラスだから、蓮への報告担当になっただけ

    それにあの時、わざと捕まったんだ。

    結果こうなった、自己責任だ。お前等は巻き込まれただけだ」

「雫」


一番近くにいる蓮を見ると、…怒ってる?


「何」

「わざと捕まったって、どういう事だ」

「メンドくさくなって、アイツ等の納得するまで大人しくしてた方が楽だと考えただけ」

「お前は、もっと自分を大事にしろ」


蓮は病室を出て行く、それを紫音が追い掛けて行った

今度は前原が


「神凪、今まで悪かった。」

「…」

「蓮に言われた、雫は今までみたいな女じゃないって。」

「…」

「俺はお前を受け入れる」


前原が私に初めて笑顔を見せた


「…どうも」

「それと」


まだ何か


「雫って呼んでいいか?俺も春也でいい!」

「……好きにしろ」

 

 

蓮side

病室を出て、屋上へと来た。

フェンスに凭れてると紫音が来た

紫音は俺の隣まで来て、暫く沈黙が続く


「蓮」

「何だ」

「今井が言ってた事」

「…」


『雫はお前等を信用してない』


「雫、姉さんに似てるから。本人からじゃなくても、ああ言われるとショックだな」

「そう、だな」

「雫が心を開いてくれたら…か」

「…そういえばアイツ。倉庫にいる時は本読んでるな」

「ああ、そうだね。あ、前に読んでたの…蓮が持ってる本だった」

「何の本だ」

「〜」

「今度、話してみるか」

「俺も、前にお菓子食べてる時、何が好きか聞いてみたんだ。

    そしたら抹茶系が好きだって、今度作ってくる」

「流石、茶道の名家…神崎家の跡取りだな」

「俺は跡取りじゃない」

「?  お前が継ぐんじゃねぇのか?」

「二十歳になった時、姉さんが見つからなければ、継ごうと思ってる。」

「そっか。そん時はあの家に戻るのか」

「でもまあ、それまでに姉さんが見つからなければの話だから。

    絶対、姉さんを見つけて、一緒に…」

「…いや、一緒には暮らせねぇかもしれねぇぞ?」

「何で?」

「栞が見つかったら、俺がもらうからな。そうなりゃ、暮らすのは俺んちだ」

「少しは姉弟水入らずにしてよ。でも蓮のとこででも大丈夫だよ、隣同士なんだから

     幼馴染なんだから、いつでも会える」

「ああ、いつでも会えるな。だから…」

「「絶対に見つける」」