7…姫としての高校生活(2)

問題は


「ちょっと神凪、ツラ貸せ」


ほら来た

前原に視認させる為に教室に寄ったら、数人女子が私を囲む

無視したら


「無視すんな!」


肩を掴まれそうになるのを躱すけど、男と違い手出しは出来ない

メイクが濃くって口調も荒いけど、一応女だからね

こういう時の女は無駄に結束力があって、厄介なんだよな

今逃げても、後からネチネチ追い掛けてきてメンドくささ倍増だし

…ここは大人しくしてみるか

躱すのを止めて、わざと捕まる


「やっと捕まえた、さあ行くよ!」


両肩を拘束され、どこかへと連れてかれる

視界の隅で、前原を見る

前原は一度目線を私に向けるが、すぐに逸らす


(お前なんか知るか)


ってとこかな。なるべく早く終わります様に


連れてこられたのは、体育館裏


「はぁ」

「あ?今溜息吐いた?」


あ、バレた


「生意気な事してんじゃねぇよ!」


バシッとリーダー的な女が頰を叩く、その後も何発か顔や体を殴られる

弱いな、でも痣とかにはなるかな

あ、口切れた

なんて考えてたらフードを取られた


「アンタみたいな淫乱女、蓮様に…白狐の方々に近づこうと思う事すら許されない」


いや、蓮が近づいてきたんだよ

グイッと髪が引っ張られ


「しかも何?男のフリして転校してくるって、頭可笑しくない?」


私が考えた訳じゃないんだけどな


「アンタなんか」


遠巻きに見てた他の女が、いつの間にか持ってたバケツを引ったくって

バシャッと水を掛けられる

何度も何度も

…流石に今の時期でキツイ

頭から足までびしょ濡れになったとこで漸く止まり


「アンタなんか、いなければよかったのよ!」


ガンッ


「っ!」


ズキッと頭に激痛が走る

女の手を見ると重そうな石が、しかも尖ってる部分でやったな

頭から顎に血が流れ、地面に落ちてく

ラクラしてきた

体も寒さで震えるし、手先の感覚が無くなってきた

体に力が入らなくなり、クタッと崩れ落ちそうになる

皮肉な事に、両腕を掴まれてるお陰で倒れない


「はぁ…はぁ…」

「ねえ、ちょっとヤバくない?」

「血、止まんないし。体冷たくなってるし、コイツ震えてるよ」


両腕を掴んでる女達が逃げる様に離す

同時に体が崩れ落ち、前に倒れる


「ねえ、マジヤバイって!」

「もしかしたら死ぬかもっ」

「やり過ぎたんじゃない!?」


意識が朦朧とする中、女達が慌て始める


「あ、アンタが悪いんだから!アンタが蓮様に近づこうとしなければ!」


煩い

文句言ってるだけだったら消えてほしい

すると足音が聞こえてきた


「おい、何をやってる」

「!?あ…あ、あなたは…!?」

「れ、蓮…さ…ま」


蓮?


「貴方達、彼女を白狐の姫だと知っての行動ですね?」


朔…


「ち、違いますっ!私達はこの女に、立場を分からせようと!」

「聞こえませんでしたか?

    彼女は白狐の姫、姫を傷つけるのは白狐を敵に回すって事ですよ?」

「潰す」


紫音…


「紫音。あくまで女、ですからね。手は出せませんからね、ここは頭を使いましょうか」


「雫!」


体がフワッと浮き、仰向けになる

少し動かされただけで気持ち悪い


「うっ…」

「雫!目ぇ開けろ!」

「神凪!」


辛うじて目を開けると、心配そうに見下ろしてる蓮と前原?

前原、泣きそう


「蓮…、前…原…」

「雫っ…」

「な、んで…」

「話は後だ、出血が多い。体もかなり冷えてる」

「…ふっ」

「なんで、笑うんだ」

「ま、え…原、知らね、のに…なって。ここ、に…居るって」

「!?…っ」


前原が顔を逸らす


「…とにかく話は後だ」

「…れ、ん…」

「何だ」

「助、かっ…た…」


保ってた意識を落とした