6…白狐の、偽りの姫(1)

それから、ほぼ毎日


「雫、姫になれ」


私を見つけては何度も言ってくる

今まで会わなかったのが嘘みたいに

自分には拒否反応が出ないと分かってるから、わざと気配を消さずに来る

学校では力を使えないから、見つかれば諦めるしかない


「おい」


一応今は授業中だろ

屋上に居るところを見つけられる

無視してると、あろうことか隣に来て座る

蓮と2人の時はカラコン以外の変装は解いてる

そうじゃないと煩いから


「いい加減、姫になれよ」

「…」

「そんなに嫌か」

「授業出なくていいのか」

「話逸らすな、お前も人の事言えねぇだろ」

「…なら逆に聞く」

「あ?」

「何でそこまで俺に拘る。白狐の姫になりたい女なんか、いくらでもいるだろ。

    なんで、俺なんだ」

「前にも話しただろ、お前とアイツには何らかの繋がりがある。

    そう感じたんだ。だから「はっ」」

「ふざけるな。それと姫に何の関係がある。

    姫になったとしても、それは偽りの姫

    白狐の…お前の道具になると「おいテメェ」」


グッと胸元を掴まれ、蓮の方に向かされる


「ふざけてんのはお前だ。偽りだとか、俺の道具だとか…散々言いやがって」

「事実だろ」

「確かに、そう思う奴もいるだろうな。

    だがな、アイツを見つけるには、お前はぜってぇに離しちゃいけねぇって感じるんだ」


…何で、ここまで


「その女…よっぽど大切なのか」


胸元を掴んでる蓮の手が緩む


「大切なんて言葉だけじゃ足りねぇ。

    胸ん中に穴が空いてるみてぇで、ずっと頭から離れない。

    大事な…大事な、俺の…」


蓮は手を膝の上でギュッと握り、俯く


前に蓮が動揺してたのは《シオリ》って私と同じ名前


「おい」

「んだよ」

「その女、苗字は」

「は?」

「お前が話してる時、よく出てくるからな。」


同名なだけか、それとも


「栞、神崎栞だ」


神崎栞

蓮が探してるのは私なのか

蓮に関わってれば、記憶が戻るかもしれない

なら、白狐の姫を利用させてもらおう

私は立ち上がり、蓮を見下ろす


「白狐現総長桜井蓮」


ピクッと蓮が反応し、私を見上げる


「姫になってやるよ」


蓮は目を見開く


「雫…」


立ち上がり、私を見る


「今さっきまで嫌がってたのに、何でだ」

「これ以上、付き纏われるのが面倒、それだけ」

「…お前の言う、偽りの姫になるんだぞ」

「それはそっちの問題だろ。

    他人なんて、どうとでも思わせておけばいい。

    俺はもう…どう見られようが、何を言われようが……勝手にさせとけ」

「…なら、姫として白狐の奴等の前に出ねぇとな」

「それはいい」

「は?そうはいくか」

「なら、幹部にだけ伝えておけ

    勝手に広がるだろ

    探してる女が見つかれば、俺は消える」

「一度姫になった奴が勝手に消えれると思ってんのか」

「思ってる、俺にはそれが出来るからな」

「その時になって…俺が認めないと言ってもか」

「お前の意見は関係無い。その時になれば分かる。」

「…どういう「これからよろしくな、蓮」

「ああ」


なってやるよ、偽りの姫に