5…倉庫へ(4)

蓮side

俺は茫然としていた

一瞬だけだったが、それだけでも分かった

なんて…冷たく、鋭い殺気

目先にナイフを突きつけられたかの様だ

紫音と朔と春也も驚いて固まってる

ただの女が、あんな殺気…出せる訳がねぇ


「少し出る」

「…分かりました」

「どこ行くんだ「ガチャ」…よ」

 

 

朔side

春也が言い切る前に出て行った蓮

春也は僕を見て


「どこ行ったのさ」

「彼女のとこでしょう」

「あんな女のとこに」

「…春也」

「「!?」」


声だけで分かる

紫音が…怒ってる


「な、何」

「雫を、あんな女なんて言うな」

「なっ紫音まで、どうしたんだよ」

「…」

 

 

蓮side

倉庫を出て辺りを見渡せば、いた

雫を追い掛け、あと数mってとこで雫は歩みを止め、振り向く


「何だ」


何だ、じゃねぇ

こっちには色々と聞きてぇ事があんだよ


「送るつってんだろ」

「お前が一緒にいれば、更に勘違いされんだろ」

「あ?」

「姫が送ってもらうのが当たり前なら、一人でいる奴を姫と考えにくいんじゃないか?」

「倉庫から出てきた女。それだけで十分に狙われる理由だ」

「…なら今、お前とこうしてるのは危険な訳だ」

「だから送るって言ってる」

「…それがか弱い女の子ならな」

 

 

蓮は怪訝な表情


「もう分かってるだろ。俺がどれだけ強いか」


総長なら、さっきの殺気で分かるはずだ


「ああ、そうだな。お前は…ただの女じゃなさそうだ」

「ただの女だぞ?喧嘩が強いだけのな」

「喧嘩が強いだけ…ねぇ」

「分かったら、お前はさっさと「蓮」…は?」

「『お前』じゃない、蓮だ」

「…桜井」

「名前で呼べ」


メンドくせ


「…蓮」

「おう。これからは、そう呼べ」


…な〜んか、デジャヴ感が…あ


小さい頃、年上の人は苗字で呼ぶ様に教わった

だから、楼にも聞いた事がある


ーー

「ねえねえ」

「ん?」

「楼君、桜井さんって呼んだ方がいい?」


楼は一瞬目を見開き、少し怒った顔で


「…苗字で呼ぶな、今まで通りでいい」

「楼君って呼んでてもいいの?」

「ああ、呼び捨てでもいい」


今度は笑顔で頭を撫でてくれながら


「楼って。これからも、そう呼べ」

ーー


「楼だ」

「ロウ?」

「…蓮」

「なんだ」

「これ以上、付いてくるな」

「無理だな」

「外で長時間、姫でもない女と総長が一緒にいてもいいのかよ」

「雫が姫だから問題無ぇ」


いつ姫になるっつったよ


「勝手に決めてんじゃねぇ。それに…お前は前にシオリって名で動揺してた

    きっと、お前にとって大事な女だろ」


私と蓮は初対面

シオリって名は同名なだけだろう


「大事な女がいるのに、俺を姫にする必要は?

    なったとしても、見せかけだろ。

    余計な女が寄り付かなくなる」

「…」

「そんなメンドくさいのはご免だし、既に…俺を良く思ってない奴は大勢いる。

    俺を姫にすると、マズイんじゃねぇのか?」

「雫…お前とアイツは何か繋がりがあると感じてる」


何を言ってんだ


「んなの、ある訳無ぇだ「いやある」」

「…根拠は」

「直感だ」



「付き合ってられるか」


歩き出そうとしたら


「逃すか」


また腕を掴まれる

なんか、コイツに毎度腕を掴まれてるな

…仕方ない

周りに風が舞い始める


「?  なんだ?」


蓮が私の腕を離し、両腕で顔を庇う

その瞬間《テレポート(瞬間移動)》

一際強い風が吹く

視界が開けば、もうそこは自室

 

 

蓮side

雫と話してたら風が吹き始め、咄嗟に両腕で顔を庇う

一際強い風が吹き、視界が開けた時には雫はいなかった


「!?」


辺りを見回すが、どこにも居ない

しかも


「気配が、無い?」


姿を消せても、気配を消すなんて

おかしい、あの僅かな間に


「どうなってんだ…」

 

 

自室に戻り、ベッドにうつ伏せに倒れる

意味が分からない

あいつ、大事な女がいるっぽいのに


「何考えてんだ、あの男は」


悶々と考える内に1日は終わった