34…運命の日

翌日、雫をバイクに乗せ学校へ行ってる時だ

突然背中を叩かれ


「蓮!止まって!!」


慌ててバイクを止める


「どうした?」


雫は額を抑え、俯いてる


「おいっ?雫?」

「…ゴメン。何でもない、行こ」

「何でもないって…」

「大丈夫だから、行って」

「…分かった」

 

 

バイクに揺られながらいつも通り力を使ってると、突然視界がグニャッと揺れる


「!?」


急に気持ち悪くなり、力が使えなくなった

慌てて蓮の背中を叩く


「蓮!止まって!!」


バイクが止まり


「どうした?」


額を抑え俯く

気持ち悪いのは何とか治ったけど、力が使えない

何で…!?


「おいっ?雫?」

「…ゴメン。何でもない、行こ」

「何でもないって…」

「大丈夫だから、行って」

「…分かった」


どれだけ時間が経っても力は使えず、夜になった

今日は夕方から雨が降り始めた

普段は《サイコキネシス(念動)》で雨を凌いでいるから、今日はズブ濡れだ


「おい、雨が強いが…、濡れてねぇか?」

「…………ああ」


このやり取りも、当たり前の様になってきた

お願い…今日は、何事も起こらないで

 

そう、思った時だった


「!」


殺気が!?

今までだったら蓮が気づく前に潰してたが、今日は


「この殺気…!?」


蓮が襖を開け、外に出てきた

その時、シュッと僅かに聞こえた

まずい!


「蓮!」


叫んだ瞬間

ネックレスのルビーが光り、力が戻る

今なら!!

一瞬で蓮の目の前に移動し


「鷹!?」


蓮に覆い被さった

グサッ


「…ぅっ!」


胸に激痛が


「た…鷹…」


少し体を離すと、あれ…

蓮は固まってるし、何で私の顔に雨が

まさか…フードが取れてる?


「お、お前…雫、か…?」


バレた

でも、それより


「け…がは?」

「お、俺は…」


視線を下げれば、胸に刺さる銀色の剣先が

蓮には辛うじて届いてない


「良…かった。無事…で」

「やっぱり、雫…雫だよな…?何でっどうして!?」

「…せ、つめ…は、後…」


まだルビーは赤い

今の内に


「こんな怪我で…っ何すんだよ!?」

「大…じょ…ぶ」


何故か蓮は目を見開く

蓮が驚いてる隙に離れ、気配を探る

あそこか!

《テレポート》で一気に奴等の目の前まで


「な!?今は力が使えないはず!?」

「どういう…事だ」

「ふんっ!この殺戮人形…がっ…」


容赦無く、潰した

…奴等が、力が使えなくなってるのを知ってた、何故だ


“鷹、後は俺が片付けます。若の部屋に”


ルビーはまだ赤いけど、さっきよりも淡い

恐らく、あと1回《テレポート》したら、また使えなくなる

胸に刺さってるのを抜きたいけど…今、抜けば失血死だな


部屋に着けば思った通り、ルビーに光が無い


「…くそ」


呼吸する度に胸が痛い

剣先からポタポタと血が落ちる


「これは…まずい」


出血が多いと思った瞬間

ズキッ!


「うっ!?」


突然肩に痛みが走る


「うっ…、く…!」


手で抑え、痛みを堪えてる時

刺さっている剣が黒い霧状となって消えた


「!?」


これは…

刺さっていた物が消え、出血が酷くなる

あ、ヤバい、意識が…体がよろける


「離せよ兄貴!アイツ怪我してんだぞ!早く行かねぇとっ!!」

「行くってどこに行くんだ」

「俺なら気配を探れば分かる!…って、気配が…」

「やっと気付いたか、アイツなら俺の部屋に戻ってって…おい!」


廊下から声が聞こえドタドタと足音が聞こえ、バンッと襖が開く


「れ…」


蓮と言い切る前に、勢い良く抱き締められる


「…痛…い」

「戻ってきた、良かった…」


蓮が少し離れる


「雫、お前、やっぱり…」

「蓮、話は後だ」

「兄貴」

「桜井…さん」

「鷹、ご苦労だったな」

「あり…がと…ございま…」


体の力が抜け


「雫!?」


蓮の腕に支えられたところで、ギリギリに保ってた意識を手放した

 

 

蓮side

「雫!?  雫!!!」

「蓮、あまり鷹を動かすな」

「え…」


雫の体を見ると


「!?」


胸から血が、俺の服にも血が付いてる

見れば雫の立ってた床には血溜まりが


「あ…兄貴、どうしたら…」

「この状態では動かせない。和士を呼ぶ」

「和士さん…?」

「アイツ医師免許持ってんだよ」

「なら…早く、早く呼んでくれ!!」


兄貴が電話を掛ける

雫の体温が下がらない様に濡れてるローブを脱がせる


「雫…」


さっき雫の顔を見た時、左目が赤色だった

普段着けてるカラコンは、雨か何かで取れたのか

そして浮かび上がってたペンタクル

胸元で光ってたネックレス


「…」


兄貴がこっちを見てないのを確認して、雫の胸元にあるネックレスを手に取る

確か、あのネックレスは特注だったはず

次第に手が震える

もしかして…もしかして…

ネックレスを裏返せば、ルビーが


「やっぱり…やっぱり、お前が…」


声が…体が震える

このネックレス、赤色の左目、ペンタクル

そして、さっき見せてくれた…笑顔

一瞬だけだったが…作り笑顔なんかじゃない、本当の笑顔

幼い頃の栞の笑顔と同じ


「お前が……栞だ」