5…倉庫へ(3)

まさか、紫音にだけ見せたのか


「やっぱり、雫…姉さんに「ストップ」」


遮ったのは雫


「紫音の部屋ある?」

「ある…けど」

「連れてって」

「「「「!?」」」」

「おい待て」

「邪魔すんな」


その口調、気にくわねぇな


「何で紫音の部屋に行く」

 

 

ここなら、使ってもいいか

目を閉じ《ヒュプノ(催眠)》

桜井達には、私と紫音はソファから動いてない様に

紫音には


「……1分だ」


桜井が許可した様に見せる


「紫音、さっき何て言おうとしてた」

「…雫の笑った顔は、姉さんに似てるって。それと…カラコンしてるよね?」

「…」

「本当は、左目は何色?」

「知ってどうする」

「俺は、左が青のオッドアイ。姉さんは赤」

「…」

カラコン、取って」

「俺の左目が赤だとしても、紫音の姉って証拠にはならない」

「…」

「確かに、オッドアイは珍しい。けど、いない訳じゃない、偶々、俺もそうなだけ」

「…」

「分かった?」

「分かった、でも見せてくれない?」

「…」


カラコンを外す


「これでいい?」

「…うん、ありがとう」


カラコンを入れ直す


「でも…」

「?」

「姉さん…じゃないの?」

「何故」

「笑った顔、素顔が…やっぱり似てる」

「…」

「ねえ、本当は姉「違う」」

「…お姉さんがいなくなったのは、いつ?」

「5歳。小さかったけど、あれだけは鮮明に覚えてる。

    姉さんは、目の前で誘拐されたんだ。」

「…子供の頃の記憶しか無いのに似てるって?」

「写真がある、家族で撮ったのと幼馴染で撮った。それと、俺の直感」

「申し訳ないけど…違う」

「そっか…そっか。

    ゴメン、早く姉さんを見つけたくて…、雫が笑ってくれた時、姉さんに重なったんだ。

    だから、ゴメン」

「いいよ。ところで、目の事は黙ってて」

「何で…もしかして、…何も言わないよ。だから俺は一緒にいる」

「そういう事じゃない。俺の都合だ。もし言えば、もうここへは来ない」

「…」

「俺が居なくても話したら、…分かるから」

「…分かった」


部屋を出る時

紫音にもう一度《ヒュプノ(催眠)》を掛ける


「時間は守ったな」


紫音とソファに座り

上手く話の流れを作り《ヒュプノ(催眠)》を解く

飲み物は飲んだし、帰ろ


「帰る」

「は?」

「え、もうですか?」

「帰るのか?」

「…」


それぞれ反応するが、前原は違う

前原は…警戒というよりも、嫌ってるな

無言で立ち上がり、ドアへと歩く


「おい待て」


桜井が近づき、真後ろまで来る


「…送る」


それだけの事だったら、近くまで来なくてもいいと思うが


「必要無い」


ドアを開けようとしたら、バンッとドアを押さえつけられ開かなくされた

ジロ…と睨む


「何してんだ」

「ドアを押さえてる」

「見りゃ分かる。何で押さえてるんだっつってんだ」

「一人で帰るな。だから送る」

「…何故」

「白狐の倉庫に来たお前は狙われる可能性がある、だから送る」

「姫でもないのにか」

「ここに来た時点で、姫じゃなくても狙われる」

「その危険性を分かってる上で、連れてきたのか」

「…ああ。だから送るっつってる」

「要らない心配だな」

「んだと…」


これまで、色んな奴に命を狙われてきたんだ

10代のガキに狙われても、どうって事ない


「一人で平気だ」

「…なら言い方を変える。女一人で帰らせる訳にはいかねぇ」

「……女一人…ねぇ」


他人から、女扱いされるなんて


「それでも、一人で帰る」

「これだけ言って、まだ「もう黙れ」

「!」

「それ以上続ければ、もう来ない」

「!?」


金輪際、来るつもりも無いけどな

ガシッ

桜井が私の腕を掴む


「なら、帰らせねぇ」

「…ッチ」


イライラするなぁ

桜井の目を見て、ほんの少し殺気を放つ


「離せ」

「…っ!」


桜井が驚いてる隙に手を振り払い、フードを被って部屋を出た

部屋を出た瞬間、色んな視線を浴びるが無視して倉庫から出る