14…組の影、鷹(1)

紫音side

桜井さんが射抜く様に俺の目を見る


「これから話す事は、誰にも話すな。バラせば幼馴染でも、始末しないといけなくなる」

「!?  は、はい」

「影ってのは名の通り、組での影の存在だ、名は…鷹。

    組関係やらの仕事をする時に使う名だ

    俺の命令次第で、色んな事をな。抗争にも参加する」

「抗争って…」

「下手すりゃあ、銃やら薬やら…相手を潰す為なら最悪何でもありだ」

「…っ、そんな所に、姉さんが…」


思わず姉さんを見る


「心配するな、参加っつっても、護り専門だ」

「組員は、姉さんの力を知ってるんですか?」

「知ってるのは、極僅かだ。

   相手からも味方からも隠れさしてる…つもりだけどな、こっちは」


桜井さんが姉さんを見る

俺も姉さんに視線を向けると、姉さんはそっぽを向いて


「つまんない」

「「…」」

「でも、気づく人はいるんじゃ…」

「大丈夫だ、なあ?」

「銃だったら、弾が着弾するまでなんか目視出来ない

    軌道を逸らすか、弾自体を消滅させる」

「《サイコキネシス(念動)》?」

「そう」

「…姉さんは自分の意思で、影の仕事をやってるの?」

「うん」


姉さんがそんな危ない事をしてるのは反対だけど、止めないだろうな

なら…俺は


桜井さんを見る


「俺も影にして下さい」

「!?」

「な、何言って!?」


姉さんが俺に近寄り、手を握る


「紫音っ何を言ってるか分かってる!?」

「うん、分かってる」


声が震えてる、手も

姉さんは俯いて


「紫音は…紫音だけはっ、普通の生活を…!」

「そうだ、紫音

    こっちの世界にわざわざ踏み込んでくる事はねぇ。

    …人間の汚ねぇもんを見ちまう。

    お前はこっちには来るな「姉さんは」」

「姉さんは、もう…散々見てきてる。これからも…」

「私はいいの、でも紫音…紫音だけは「姉さん」」

「ここの人は、姉さんの存在を知らない」

「それがどうしたの」

「姉さんはどこでも、いつも1人で苦しんでる。」

「…」

「なら、こっち側でも姉さんの隣にいる

    いつでも隣にいて、気持ちを分かち合う」


姉さんが顔を上げる

俺は姉さんの手を両手で包み込む


「言っただろ、もう姉さんとは離れない。何があっても」

「紫音」


姉さんの目から涙が流れる

そっと指で撫で、そのまま頭に手を回し抱き締める


「俺が、姉さんを護るから」


姉さんが俺の服をギュッと握る