ギルド(2)

早速私達はギルドを探し、受付に

ラルフは私の中に入ってる


「ようこそ!魔導士ギルド《ワイプシュ》です!」

「すみません、登録したいんですけど」

「はい じゃあこの紙に名前と希望の実地試験を書いてね」


紙が渡され、それぞれ書いて出す


「はい …3人共、討伐でいいの?」

「はい」

「…、あの、フードを被ってる貴女」

「何ですか?」

「貴女も討伐でいいの?」

「…どういう意味ですか?」

「討伐は危険な試験よ、探索か採取がいんじゃない?」

「…」


私だけ、舐められてる?

まあ、蓮と紫音が身長が高いから

私は弱く見えるのか

…まあ、女ってのもあるか


「討伐以外は時間が掛かります

 …それに、見た目で判断しないでもらおうか」

「…っ」

「確かに」


横から声が


「討伐なら隣の部屋で出来る

 手っ取り早くて、一番危険な試験だ」

「…アンタは?」

「試験官のラーガだ、着いてこい」


着いて行った部屋に入ると、床に魔法陣が

試験官は魔法陣の内側に立つ

 

 

試験官 ラーガside


「どいつからでもいい、陣の内側に入れ

 この陣は被害を外に出さない様にする為のモノ、コレから出たら即失格だ」


3人が目を合わせると

髪に緑色が入ってる男がニコッと笑顔で


「じゃあ、俺からお願いします」


男は剣を抜くが、ブラン…と下げたまま

…何故構えない


「…おい」

「はい?」

「何故構えない」

「これが俺のスタイルなんで」

「…フン、そうか。なら行くぞ…」


手を床に翳せば、新しい陣が浮かび上がる

《サモンズマジック(召喚魔法)》


「アンデットドッグっ!」


勢いよく飛び出したのは、血が滴り落ちる黒い犬の魔物

魔物は牙を剥いて真っ直ぐに男に向かう

だが男は剣を構えず、突っ立ってるだけ

魔物が目前まで迫った瞬間

ザンッ!と音と共に男が移動し、勢いの余った首無しの体は陣の壁にぶつかった


「「「…え?」」」


周りはポカン…と茫然とする

ここに来るんなら、この程度は誰でも倒せる

それでも周りが茫然としてるのは、倒し方だ

構えてなかったのに、気付けば斬っていた

男は剣に付いた血を振り払い


「次は?」

「…いいだろう、次はコイツだ。ダークエルフッ!」


魔物は魔法を放つ

先程よりも早い攻撃、…どうする

男は変わらず構えずに、フッ…と姿を消し攻撃を避ける


「あれ!?アイツ何処行った!?」


周りが騒めく中

男は魔物の死角から、斬った


「えっ…いつの間に!?」


何の構えも無く、一瞬で移動しやがった…

男はゆっくりと元の位置に


「次は?」


ニコッと笑顔を見せる

…、余裕こきやがって…


「ならコイツはどうだ?ガーゴイルッ!」


次はゴブリンに翼が付いた様な魔物


「うわぁっ!」


周りが恐怖で逃げ惑う

…いや、陣があんだから、お前等がビビってんじゃねぇよ

男はというと

ニコッと笑顔のまんまだ

しかも、髪に赤色が入ってる奴とフードのチビ

試験開始直後から全く焦った様子も、今でなお…怯える様子も無い

お前等…


「コイツを前に、まだそんな顔が出来るのか」

「だって、コイツを倒さなきゃ受からせてもらえないんですよね?」

「…ふん、上等だ。そこまで余裕があるなら、見事に勝ってみせろっ!」


魔物は爪を立てて攻撃する

男が避け、床がドガンッ!と破壊される

男が剣で斬りつけるが、そんなのはコイツには効かねぇ


「ん〜、なら…」


男は攻撃を避けつつ、魔物の懐に入り込み

ズバッ!と切り裂いた

剣には、緑色の魔力が

周りがまたポカン…とする


「…試験、合格だ」

「「「お〜っ!」」」


一気に歓声が上がる

男は剣をしまい、仲間の元へ


「お疲れ」

「うん 次は蓮?」

「おう 行ってくる」


周りとは違って、はしゃがねぇな…

次も男か


「お願いします」


コイツは構えるんだな…


「試験開始だ」


最初はトロール

動きはトロいが、体が硬くてなかなか斬れねぇ

…だが

男は一振りで倒しやがった

次はダークゴブリン

すばしっこい上に魔法も使う

だが、またしても一振りで斬られた

最後は羊の頭をした魔物だ

コイツの魔法は強力だが、男は放たれた魔法を真っ二つに斬りやがった


「俺も合格か?」

「…ああ 合格だ」


歓声が上がる

コイツの攻撃には、赤色の魔力が見えた


「最後は栞だな」

「行ってらっしゃい」

「ん、行ってくる」


最後に、チビが陣に入る


「…え?ホントにあの子もやるのか?」

「男の子達は強いけど、あの子はどうなんだろ」

「っつうか、武器持ってねぇぞ?」


ヒソヒソと周りが煩い


「黙れお前等ぁっ!!」


ピタ…と静かになる


「どんな奴だろうと、試験を受けるか決めるのはコイツ自身だ!」


だが、こんなチビ…、ホントに大丈夫か


「おいチビ、お前本当にやるんだな?」

「…」


フード被って、しかも仮面着けてるから口しか見えねぇが、止める気は無ぇみたいだ


「では、試験開始だ」


最初の男は風属性、2人目は火属性の魔力を持ってるな…

呼び出したのはゴブリン

四つん這いで、勢いよくチビに走っていく

チビは、何もせず立ってるだけだ


「おい!?危ないぞっ!?」


周りは慌ててるが、男共はただ見てるだけ

次の瞬間

スパッと魔物の首がはねる


「(…?)」

「「「………、は?」」」


周りは何が起こったのか、いや…、俺でさえ分かってない

男共の攻撃には見えた属性の色が、見えなかったからだ

チビは何もしてない様に見えてたのに

魔物の首が突然はねた


「次は?」


ハッ…と我に返る


「…次はコイツだ。バジリスク…ッ」


次は巨大な蛇だ


「ああ、コイツの毒には気を付けろ。猛毒だ」


魔物は素早くチビに向かう


「危ないぞっ!?避けろっ!!」


周りが叫ぶが

普通に避けても、あの巨体からは無理だ

…さあ、どうする?

魔物が口を開き、チビを飲み込もうとする

バクンッ!ドガンッ!

魔物が口を閉じて床に激突した


「「「…っ」」」


周りが固唾をのむ中、チビは真上に

魔物の後ろに着地すると同時に、魔物が振り向き目を光らせる


「!? まずい!石化するぞ!」


だが、チビには何も起こらず…

そしてまた、何もしてないのに魔物の首をはねた


「(また見えなかった…。いや、違う)」


気になるのは、ソレじゃない…


「? 何で?石化、…してない」

「アレは仮面を着けてても、いや…、大抵の防御をしてても石化するのに

 一体、何で…」


周りの騒めきを他所に


「次が最後だな」


チビは元の位置に戻る


「お前…、何で動けてる」

「どうでもいい、次」


どうでもいいって…


「…はぁ 来い、ヒュドラ


また蛇の魔物だが、コイツは今の奴とは比べものにならねぇ

3つの頭を持ち、息には致死性の毒がある

周りは恐怖で立ち竦んでる

それもそうだ

今までで、コイツに挑もうとした奴はいない

コイツを出すのは、俺なりの慈悲だ


「棄権するなら今の内だぞ?」


流石にギルド内で死人は出したくねぇ

しかも、こんなチビを…


「まさか」


チビは俺の心配を他所に即答しやがった


「…」


…頼むぞ

魔物は口に魔力を溜め込み、チビ目掛けて一気に吐き出す

3つの紫色の光線がチビにぶつかる瞬間、四方八方に分散する

そして、1つの首がはねた

…だが、瞬く間に新しい首が2つ出てくる


「超速再生…」


チビがボソッと呟く

そう、コイツは…、ただ首を落とすんじゃ倒せねぇ


「そういえば、コイツは不死じゃなかったか?」

「え!?じゃあ何処を狙っても無駄じゃねぇかっ!?」


周りの言葉に、ピク…とチビが反応する

……今まで全く動かさなかったのに

片手を魔物に向けると


「なら、再生出来ない様にするまでだ」


瞬間

魔物の首が全てはねる


「だから駄目だって…」


周りが呆れる中


「…え」


思わず、声が漏れた

首が、1つも再生しない


「…え、何で…」

「何で再生しないんだ?」


周りが混乱する中、男2人は平然としてる

今までの試験もそうだ

コイツ等、初めっから焦りや怯え…不安が一切無い

魔物は再生出来ずにフラフラと動き、遂には倒れた


「これで私も合格?」

「…ああ お前も合格だ」

「「「…おお…っ!うおぉおおおおっ!!!!」」」


チビが仲間んとこに戻るが

やっぱり周りみてぇに、はしゃがねぇな

…こりゃあ、何年かに一度のスゲェ奴等が出てきたな

 

 

蓮side

無事に全員受かった

ゼルファに鍛えてもらったお陰だな

肉体を持たない精霊相手には、剣に魔力を纏わせる…魔法剣なんかが効果的だと教わった

紫音は魔力を纏って、風の如く素早く動き

俺も剣に魔力を纏わせた

栞は何もせずに倒してたが…


「栞」

「ん?」

「最初のを倒した時、何したんだ?」

「《サイコキネシス》を飛ばした」

「? あれって、色があったよね?何も見えなかったけど…」

「うん あれは「おい!アンタ等スゲェなっ!?」」


いつの間にか囲まれてる


「アンタ等名前は!?」

「どんな魔法を使ったんだよっ!」

「俺達のパーティーに入らねぇか!?」

 

ミクチャにされそうな時


「お前等大人しくしろぉっ!!!」


試験官の声でピタッと止まる

試験官は俺達に近寄り、ニッと笑う


「称号を与える

 3人共、文句無しの…SSランクだ」

「「「…っうおぉおおおおっ!!??」」


周りが煩ぇ


「後は受付でステータスカードを貰え

 それとチビ

 お前、本当に体に異常は無ぇか?」

「何も」

「へぇ…、大したもんだ」

「…あの」

「ん?」

「そのチビって呼び方、止めてくれませんか」


…うん

それは俺も気になってた

栞は別に背は低くない

俺達が高いから低く見えるだけだ

試験官は顎を摩り


「いや〜、俺にとっちゃあチビだからなぁ?

 これからもヨロシクな?チビっ」

「…」


まあ、とりあえず

ステータスカードを貰えて、俺達はSSランクの冒険者になれた

 

休憩をしようと未だに騒がしいギルドを出て、静かな場所に移動した

 

「で…、栞、どうやって《サイコキネシス》を見えない様にしたんだ?」

「ん〜、なんて言うか…

 この世界で使う魔力は属性があって、使う時はその色が出るでしょ?」

「そうだね。俺なら風属性だから緑色、蓮なら火属性で赤色が出る」

「そう でも私の元々持ってる力は、前の世界で言う《超能力》

 この世界でも同じ様な力を使える人がいても、それはあくまで属性魔法

 私が使うのはどの属性でもない、無属性魔法に分類されるらしいの」

「「無属性魔法…」」

「こっちに来た頃は赤と金が混ざった色が出てたけど

 勉強して無属性って分かったから

 試しに透明をイメージしてたら、出来たの」

「なるほどな…」

「じゃあもう1つ

 最後のって、ただ首を斬るだけじゃ駄目だったみたいだけど

 何で再生しなかったの?」

「あれは、首をはねた直後に氷魔法で切断面を凍らせたの」

「なるほどねぇ」

「そういやぁ、2つ目の魔物の時

 周りが『何で石化しない?』って騒いでたぞ」

「『大抵の防具をしてても石化する』って言ってたね」

「あれは単純に《サイコキネシス》で防いでただけだよ」

「…」

「それだけ?」

「そう 言ったでしょ?

 私の元々の力は無属性、きっと大体の魔物には効果がある」

「…きっと?」

「今まで鍛錬してきたのは属性魔法ばっかりだったから

 魔物に無属性を使ったのは久し振りで…正直賭けだったの」

「「…」」


まあ、結果オーライか


「そろそろ騒ぎも落ち着いてるだろうし

 ギルドに行ってみるか」

「ん」

「そうだね」


その後、予想を裏切られ

ギルドに入った瞬間に騒ぎ立てられ、色んなとこから勧誘を受け

落ち着けたのは大分経った後だった