新たな家族(3)

紫音side

姉さんがアイツから読み取った、2つの拠点の1つ…ドグって奴がいる方へと向かう

カイは少し辛そうだからラルフに乗って


「なぁ、シオリ」

「ん?」

「どうやって背中の消したんだ?」

「それはね、レノに調べてもらって出来たの」

「…レノ?」


姉さんの隣にレノが出てくる


「!?」

〔初めまして、カイ。私は光の精霊…レノです〕

「…光の、精霊…」

「カイの背中にあった魔法陣は、呪術っていう…悪い魔法だった

 そういうのはレノが一番適してるの」

「そう…なのか、ありがとう」

〔いえ これからもお願いしますね〕

「…おう」

〔我も挨拶しておこうか〕


ゼルファが子竜で出てきた


「!? ドッ…ドラゴンッ!?」

〔人の姿にも変わるぞ?〕


ゼルファが姿を変えると、カイはまたポカン…としてる


〔我はゼルファだ!宜しくな!カイ!〕

「お…、おう。…よろしく」

「「「…っ…」」」


これから敵陣に行くってのに、思わず笑みが溢れる


暫く進むと


「あ…、あそこだ」


カイがある建物を指差す

俺達は物陰に隠れて、様子を伺う


「カイ、これから潰してくるけど

 ここで待ってる?」

「嫌だ!

 シオリ達が俺の為に動いてくれるのに、じっとなんてしてられるか!」


姉さんはクス…と微笑み


「じゃあ、1つ約束してくれる?」

「何だ?」

「私から絶対に離れないで」

「分かった!」

「よし、じゃあ私とラルフで正面から行く

 蓮と紫音は裏口から攻めて」

「「了解」」

 

 

カイside

レンとシオンは裏口に行った

俺とシオリ、ラルフは正面から

ゼルファは


「我が出るまでもないな」


そう言って、シオリの中に入った


「そういえば、私は舐められやすいんだっけ…。ラルフ」

〔はい〕

「下手に動かれない様に威嚇を」

〔承知しました。カイ〕

「何?」

〔我が大きくなっても驚くなよ?〕

「わ、分かった」


シオリに続いて入ると


「何の用だぁ?嬢ちゃん?」


ドグと他の奴等が武器を持って警戒する


「あ?犬に乗ってんのはクソガキじゃねぇか?

 おいっ!そこで何やってんだっ!?」


怖くなってラルフの毛をギュッと持つと

グググ…とラルフがどんどん大きくなる


「…っな…!?デカくなりやがった!?」


ドグ達はラルフに怯えて下がっていく

すると


「ギャアッ!」

「何だテメェ等っ!?」


奥から叫び声が

ドグが俺達と後ろを交互に見て


「なっ!?お前等…っ何しやがった!?」

「ここと、お前等の根城を潰しにと、お前の持ってる魔水を貰いに来た」

「潰すだとぉっ!?何ふざけた事言ってやがるっ!?」

「私に言わせれば、お前等の方がよっぽどふざけてるけどな」


シオリが一歩前に出ればラルフも一歩進み

ドグ達はジリジリと後ろへ


「奥は片付いたぞ〜」

「後はここだけだよ、それと…」


レンとシオンの声

シオンはヒラヒラと何かを見せてくる


「多分コレ、取引関係の書類じゃないかな?

 これで証拠はバッチリだね」

「!? テメェ等…っ俺の部屋に勝手に入ったのか!?」

「入ってないよ 

 何人か倒したら、たまたまアンタの部屋っぽいとこも壊れちゃって

 風に乗って紙がヒラヒラしてたから、ソレを取っただけだよ」

「壊しただぁ!?テメェ等…っ俺達に喧嘩売ってただじゃおかねぇぞっ!!」

「ただじゃ済まさねぇのは俺達だ」


レンの拳には、火が


「子供を、逃げられねぇ様に酷ぇ傷を付けて

 モノ取りが上手くいかないと殺すとか…」


火がゴウッ!と激しく燃え、レンの目には…怒りが


「よくもまぁ、そんな下衆な事が出来るもんだ」

「…っ、フン、自分の物に印を付けておくのは当たり前だろうが

 それにな?あのガキは俺がわざわざ貰ってやったんだ

 俺様の命令に従うのは当たり前の事だろうが!

 簡単な事もロクに出来ねぇ奴なんか、殺すしかねぇだろうがよっ!?」


瞬間

ゾクッ…!と体が何かに怯える

他の奴等も同じみたいだ

レンとシオンだけがシオリを見て、…焦ってる?

恐る恐るシオリを見ると


「…っ!」


髪や服が、風じゃない何かで揺らいでる

 

 

蓮side

ドグって奴が、栞にとって…恐らく、一番タブーな事を言いやがった

栞は感情を抑えようとしてるが、魔力が反応して周りに圧を掛けてる

ビリッビリッと体が感じるコレは…、殺気


「な…っ、何だよ…っお前…っ…」

「それ以上…」

「あ?」

「それ以上…、喋るな」

「はぁ?何言ってんだテメェ?」

「…レノ、ラルフ」

〔〔はい〕〕

「面が壊れない様にと、強力なモノを建物全体に」

〔〔承知しました〕〕

「蓮、紫音…、私の後ろに

 巻き込んじゃうかもしれない」


俺達は壁を足場に、避難してるラルフとカイの側に行く


「レン!シオリは何するんだ!?」

「…アイツが、栞がキレる言葉を散々言っちまった

 死にはしねぇが…、アイツは覚悟しねぇとな…」

「!?…な、シオリがキレるって…っ、何でだよ?」

「カイ、姉さんは昔…、カイと同じ様な環境で酷い事をさせられてたんだ」

「!?」

「だから、さっきのアイツの言葉が…、君に対しての言葉が、相当頭にきてるんだよ」


俺と紫音は仮面越しでも表情が見えてる

だから

栞がどれだけの怒りを必死で抑え込んでるのかが、分かってんだ

 

 

傍観者side

栞に薄らと黒い魔力が纏わり付き、ブワッ!と衝撃波が放たれる


「な…、何なんだ…っ、お前…っ」

「…」

「クソッ…!お前等行けっ!!」


数人が栞に襲い掛かるが

ダァンッ!と横の壁に吹っ飛ばされる


「!? な…何、したんだよ…っ!?」

「…」

「…クソッ!」


ドグは魔法を放つが、栞に当たる寸前で弾け消える


「クソッ!クソッ!クソがぁっ!!!」


何発撃とうが、無意味


「クソッ!テメェに当たんねぇならっ!!」


ドグが蓮達に手を向けると


「おい」


栞がドグの前に一瞬で跳躍し、手を捻り上げる


「うっ!?ぐぁ…っ!」

「今、誰に攻撃しようとした?」


ミシッミシッと骨の軋む音が


「ぐ…っ、テメッ…離せ…!」

「これ以上…、俺を怒らせるな」


ドグの横腹に蹴りが入り、ドゴッ!と壁に激突する


「ぐ…っ、ゲホッ!…ゴホッ!」


ドグが顔を上げれば、殺気を向けてくる栞が

ガタガタガタッとドグが震える

栞はドグの胸に足を乗せ、グッと力を込める


「…っぐ…!止め…、ろ…っ…!」

「だったら、魔水を寄越せ」

「…っ、無ぇよ、んなモン」

「…」


サイコキネシス》を足に纏い、更に押さえつける

ミシッ…ミシッ…バキッバキッ!


「! あぁあああああああっ…!?」

「さっさと答えねぇからだ

 早く言わねぇと…、肋全部折るぞ」

「…っ、クソ…ッタレがぁっ!!」

「…へぇ」


栞がドグの右肩に指をトン…と付けると

ズバッ!

ゴトンッ…とドグの右腕が床に落ちる


「!? うぁああああああああああっ!?!?!?」


ドグは悶え、体を動かそうとするが

栞が動きを封じてる所為でロクに動けない


ちなみに、蓮達には死角になってる為

腕が落ちたのは見えていない


ドグはあまりの激痛に意識が飛びそうになるが

栞が《テロメア》を使って強制的に意識を保たせている


「これでも、まだ無いって言うか?」

「…あぅ…、ぐ…、もう…」

「あ?」

「も…う、止め…て、く…れ…」

「止めてほしかったら、さっさと出せ」

「…お…れの…、部屋…、金…庫…」


栞は蓮達に向き

 

「コイツの部屋の金庫、お願い」

「俺が取ってくる」


紫音が奥へと消えるのを見届けて


「カイの背中にあった魔法陣は消した

 もうあの子を、お前の好き勝手にはさせない」

「…はっ…、それ…で?ガキを…どう、しよって……だ」

「それは私達が決める事じゃない」


栞はカイを見る


「どうしたいかは、カイ自身が決める」


ドグに向き


「他人がどうこうしていいもんじゃねぇんだよ」


紫音が慌てて戻ってくる


「無い!」

「!? おい、この状況で嘘吐いてんじゃねぇよ」


ミシッ…ミシッ…バキッバキッバキッ!


「…っ!」


ドグが言葉にならない悲鳴を上げる


「さっさと言え、本当はどこにある」

「…っ、違…っ、ボス…が、持…て、たん…だ…っ」

「ボス?」

「ほ…とに、1…個、あっ…た……」


ドグがチラッとカイを見る


「俺…は、ボ、か…ら、貰って…、が…

 あの…ガキの…親…か…ら、奪…てた…モン…だ…って…」

《!?》

「ボ…ス…が、親か…ら、ガキ…を、盗…ん、だ…」

「…その親は?」

「…っ、ゲホッ!」

「答えろっ!!」


ドグはヒューッ…ヒューッ…と息も絶え絶えになっている


「栞、これ以上は無理だ…」

「…っ」


栞はドグの頭に手を置き、記憶を探る

 

 

蓮side

どれ位経ったか…

栞はドグから手を離すと、ドカッ!と思いっきり殴る

ドグは気絶したみてぇだ

栞はこっちに戻ってくるが、怒りは収まってない

…寧ろ、殺気立ってる


「本拠地に行く、頭をぶっ潰す」