ドラゴン(4)【R-18】

次の日

約束した場所、森の手前で

ガントとレイヤが既に待ってる


「遅くなった〜!」

「ホントに遅いぞ!」

「ゴメンゴメン」

「まあいいさ。早速行こうか」

「え!?…あ…っ、あの…ちょ、ちょっと待ってっ!」

「何だよ」

「ほ、ホントに、行くの?」

「はぁ?当たり前だろ?」

「で、でも…、ここには入るなって、」

「んなもん作り話に決まってんだろうが」

「早く行こ」

 

森へ入れば、早速沢山の果実が目に入る


「うわぁ〜!」

「これは凄いね」

「話は聞いてたが、スゲェな!」


果実を取りながら、どんどん奥へと進んでいく

すると


「何だろ?コレ?」

「ん?何?」

「どうした?」

「見て、コレ」


目の前には、見た事無い果実が

手に取り、皆で齧り付く


「! うまっ!?」

「何コレ!?美味しいっ!」

「コレは美味しいね」


どんどん食べ進んでいき

気付けば奥深くまで来ていた


「ちょっと、2人共」

「あ?」

「? 何?」

「あれ、見て」


レイヤの視線の先には、祠が

ピタ…と果実を食べる手が止まる

無言で視線を合わせ、ゆっくりと近寄る

何千年…何万年と前からあると思わせる祠は、周囲が草木で生い茂り

扉には、古びた札が

ガントが扉の前まで行き、中を覗く


「ん〜?何か光ってるモノがあるぜ?」

「祠なんだから何かしら祀ってあるだろうけど…、にしても大きいね」

「2人共、止めようよぉ…」

「アル、お前は度胸が無ぇなぁ。大丈夫だって」


ガントが札をビリッと剥がし、扉を勢いよく開け一歩踏み入れた

瞬間


「! うあぁああああああああああっ!?」


ガントが頭を抱えながら叫ぶ


「「!?」」


ガントはよろけながら祠を出る


「「ガント!?」」


駆け寄ろうとすると


「うがぁああああああああああああっ!!」


ブチッブチッブチ!と何かが千切れる音が連続で聞こえた瞬間

ガントは目を見開き、体が四方八方に肉片となって飛び散る

ビチャッ!と顔や体に何かを浴び、何かで視界を塞がれる


「………、え」


緩慢な動作で、視界を塞いでるモノを取ってみると

赤い血が滴る…ガントだった肉片が

手が震える


「え、…待って?ガント、どうなったの?どこ行ったの?」


体が震え始め、次第に事実を理解する


「ガントが、ガントが…っ!うわあああああああああっ!!!」

「落ち着け!!」


ビクッ!と震えながらレイヤを見る

レイヤも手足が震えてる、けど、必死で剣を持って祠を見てる


「中には水晶しかないけど、どうやらここには魔物が居る様だね

 ここで退治しないと国に被害が出るかもしれない」

「レイヤ!?」

「アル!君は森から出ろ!」

「嫌だ!レイヤも一緒に!」

「俺は魔物を退治して、土産にあの水晶を持っていくよ」

「だったら僕も戦う!」

「君に何かあれば国王が黙ってないよ?」

「レイヤと僕なら勝てる。それに、男なんだから傷一つあったって大丈夫だよ」

「フッ、そうだね。なら、2人でやろうか!」

「うん!」


決起して2人で祠に入った瞬間

ブシュッ!グチャッ!

ビチャッ!と頰に何かを浴びる


「え、…」


思わず立ち止まる

何だ、今の音…

横を見ても、レイヤがいない


「…え、レイ…ヤ?」


周りを見渡し、後ろを見れば

体中を何かに切り刻まれ、両腕と両足、頭が…無い、人間だった…らしき、モノが

肉片が、増えてる…気がする


「レイ…ヤ、どこ…行ったの?」


剣を持つ手がガタガタと震える


「ガント、レイヤ…、2人共、何でいないの…」


ポタッ…ポタッ…

液体の落ちる音がする

咄嗟に足元を見ると

頭からズルッと何かが落ちる感触が

目線を上げた時、見えたのは

誰かの目玉

ボトッとソレが床に落ち、ソレの視線と合った


「あ…う…っ、あぁああああああああああっ!!!!」


ドサッと祠の床で尻餅をつく

死んだ!

ガントとレイヤがっ!

何で!?


「何で何で何で何でっ!?」


頭を抱え恐怖に怯える

ガントとレイヤが死んだ!

僕も死ぬ!

僕も死ぬんだ!!


「…あれ…っ」


そういえば、何でまだ生きてるんだ

ガントは祠に足を一歩入れた瞬間、レイヤも祠に入った時

僕は既に、祠に入ってる

なのに、何で死んでないんだ


「何で…」


その時


〔ほう、生きておる者がいるか〕


「!?」


どこからか聞こえてくる声


〔しかも、祠を穢れた血で汚しおって〕


正体が分からない声に、恐怖で体がガタッガタッと震える


「お、お…前…は、誰…だ…っ」

〔ふん、人間如きが…

 我の声を耳にしているだけでその震え様

 姿を現した時、正気を保っていられるとは思わんな〕


見下した言い方

僕は腹が立ち、手をギュッと握る


「みくびるな!僕はこの国!ズメイ国の王子だぞ!

 お前如きにこれ以上の失態は見せない!

 さっさと姿を見せろ!」

〔ふん ならば言葉通りにしてやる〕


すると

水晶から白い光が溢れ、祠が光で埋め尽くされていく


「な、何だ、コレは!?おい!何をしてる!?」

〔黙っておれ〕


瞬間

祠が爆発し、風圧で外に吹き飛ばされる


「ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!…っ、一体、何が…」


顔を上げ、祠があった場所を見ると


「!?」


そこには1匹の


「ドッ!?ドラ…ゴ…ンッ!?」


青色の目に白い鱗、体全体が…白い光で覆われてる

だが、それ以前に


「この地に居たドラゴンは、ずっと昔に…死んだ筈じゃ…」


御伽噺にあった

人間を襲ったドラゴンは、深傷を負って死んだと


〔その原因が何か、知っておるか?〕

「え、…人間を襲った時に、深傷を負ったからって…」

〔ふん 都合の良い様に語り継ぎおって…、これだから人間は穢れておる〕

「なっ…どういう事だっ…!?」

〔少しは己で考えたらどうだ〕

「なにぃっ…!」

〔我は襲ってなどおらぬ

 人間が、我を襲ったのだ…

 お主等人間は卑劣な手段を用いた、穢れた種族なのだ〕

「卑劣な…手段…?お前だって…、そうじゃないか

 お前も!僕の友達を殺したっ!卑劣なやり方で!

 お前が殺した!」

〔今まで殺めた者は、欲深き人間のみだ

 貴様の友というのは、我の祠を汚した血の者共だな?

 1人は何か目ぼしい物はないかと欲を出し

 もう1人も水晶を持って帰ると欲を出した…、過去の者共も同様だ〕

「…っ」


こんな恐ろしいドラゴンがっ…!

こんな近くに居たなんて…っ!!

御伽噺の、森の奥には入ってはいけないって…っ


「まさか、こんなの…、ただの作り話じゃ…」

〔遥か昔に1人だけ森から抜け出しておったのに…

 それを作り話とは、滑稽な話だ〕

「…え」


ちょっと待って


「お前は死んだんだよな?ずっと昔に…」

〔そうだ〕

「なのに…、何で今生きてるんだよ」

〔…ッ、ハハハハッ!〕

「っ…な…っ!」

〔無知とは、真に滑稽な事だ。一度力尽きた位で死なぬわ〕


死なない…っ!?

…でも、僕の友達は死んだ


「…どうして?僕の友達を…っ!どうして欲が出ただけで殺したっ!?

 欲は誰でも持ってるモノだっ!

 祠にあった水晶を欲しがっただけで殺しただと!?

 ふざけるなっ!!!」


ドラゴンの目がピク…と動く


〔貴様…〕

「…っ!」


空気が重い

睨まれるだけで、体が竦む


〔何も知らぬというのは、あまりにも滑稽で…、腑が煮えくり返るモノだ

 己で考えもせず、思った事をただぶつけ、納得しなければ勝手に怒り狂う〕

「…っ」

〔それを聞くのなら我の問いにも答えよ

 欲深き貴様等人間は、我を殺せば不死が手に入るなどと勝手な考えで我に毒を飲ませた!

 動物を囮に使ってまで!

 救いを差し伸べたのに、それ以上の欲をかきっ

 あまつさえ欲の為だけに我を殺したのだっ!

 欲が出ただけで何故殺しただとっ!?

 それを貴様等人間が怒り問うのかっ!!!〕

「…っ…」

〔やはり人間は、己の都合が良い様にしか物事を考えぬ…愚かな生き物よ〕

「! 何だと!?」

〔喚くな、我は事実を言ったまで〕


ドラゴンが空を見上げる、どこかへ飛ぶのか!?


「おい!どこへ行く気だ!?」

〔ここに居たのは水晶の状態で回復する為

 貴様等が好き勝手に狩りをする所為で、この地の護るべき動物は去っていった

 我がここに居る理由は無い〕

「な!? 別の所で人を殺す気か!?」

〔…そんな愚かな考えしか出来ぬのか

 言っておくがな、貴様には呪いが掛かっておる〕

「!?」

〔我の意図した所ではないが…

 我の水晶を欲した欲深き人間の血肉を浴びたであろう、…皮肉だのう

 恨むのなら、欲をかいた友を恨め〕

「…っ!…ど…っ、どんな呪いだよっ!?」

〔不死の呪いだ〕

「ふし、…不死!?そんなのが呪いなのか!?」


死なずに済む呪いなんてあるのか!


〔…貴様、まさか…、喜んでおるのか…?〕

「当たり前だろ!不死だぞ!?死なないなんて、皆が羨ましがるぞ!」

〔…やはり、人間は、…愚かな種族よのう〕

「ドラゴン!お前は今まで多くの人々を殺してきた、だからお前は死んで償うべきだ!」

〔…〕

「けど今の俺じゃお前は殺せない。いつかこの手で殺してやる!!」


僕はその場から走り去り、そのまま城へ戻った

 

 

ドラゴンside

人間が走り去った


〔人間は…、何故あの様な考えしか浮かばぬのか…〕


羽ばたき、天空へ舞い上がる


〔あれから随分経ったが、人間はいつの世も変わらぬ…

 あの様な思考を持っている上に、その犠牲を払うのは他のモノだ〕