ドラゴン(2)【R-18】

ある時

幼い子供が鳥を追い掛け、祠の地まで入っていった

村人や親が駆け付けた時には、子供は祠の中にまで入っていた

…だが


「坊や!?」

「! お母さん!」


子供は祠から出てきて、母親に抱きつく

皆が驚いた

過去に、扉を開けただけで恐ろしい死に方をした者がいた

なのに…


「坊や!?どこか痛いところは無い!?」

「お母さん?どうしたの?」


子供には、一切の傷が無い


「無事ならいいわ。さあ、お家に帰りましょう」


村人は茫然と親子が帰っていくのを見送る


『(何故だ、何故あの子は死ななかった?)』


1人の男が、開きっぱなしの祠を見ると白く輝く水晶が

男は一瞬でその水晶に目を奪われた


『(…欲しい)』


そう思い、祠に一歩踏み入れた瞬間


「! うわぁああああああああああああっ!?」


男が頭を抱えると、手足からブシュッ!と血が噴き出す

服が内側から血で赤く染まっていく

続け様にガンッ!と硬いモノ同士がぶつかった音が

男が後ろによろめき、祠から少し離れたところでバタンッ!と倒れる

男の姿を見た村人は戦慄した

頭は何かに殴られた様に大きく凹み、目を見開いている

服では吸い取りきれない程の血が、地面に広がっていく

村人が恐怖で震える中


「あ…が…う…」


男は、まだ生きている

指先だけを動かして助けを求めるが、誰1人動かない


「(もし近付いて同じ事になったらっ…!)」

「(子供は無傷だったのに、どうして…っ!?)」


そんな考えが村人達に駆け巡る

すると

ブチッ…、ミチッ…

何かが千切れる音が


「…あっ!?…ぁ…っ!」


男が掠れた声を発しながら、のたうち回る

その音は鳴り止まず

見開いている目や耳からも血が流れ、男の周りには致死量以上の血溜まりが

そして

男の首に赤い線が走ると、ボトッ…ボトッ…ボトッ…

首と四肢が体から取れた


やはり、祠には…っ!

ここには来ては行けないっ!!


「「「う…っ、うわぁああああああああああっ!!!」」」」


村人達は縺れる足で必死に森から逃げていった

そして再び、《祠には近付くな》と言い伝えられる様になった


しかし、何故あの子供は無傷で帰れたのかと考えた後

その子供には不思議な力があるとされ、村人達は崇める様になった

大事に育てられ、時が経って大人になり、子供が出来た

最初に崇められていた男が死んでも、不思議な力はきっと受け継がれていると

村人達はその一族を崇め続けた


それから数百年の時が流れ、村は発展し国となった

その一族は王族となり、国を治めている

建国する為に周囲の森を伐採したが、唯一…祠のある森には一切手出しはしなかった