ドラゴン(3)

そして、数千年経った頃

言い伝えはもはや、御伽噺と言われ

その森は度胸試しの場となっていた…

 

 

ある日

酒場で若者達が和気あいあいと楽しんでいる


「今日は鹿を狩ってきたぜ!」


若者達の中で一番ガタイの良い男、ガント


「俺だって、この前2匹も捕まえたよ」


いつも冷静に物事を見る、レイヤ


「凄いなぁ皆。狩りが出来て」

「はぁ…、いい加減お前もさっさと成功しろよ。兵士も一緒に行ってるんだろ?

 何で出来ないんだよ?」

「僕が弓を準備してる間に動物達が逃げちゃうんだ。

 兵士達にも追い掛けなくていいって言ってるから」

「アルはいつも鈍臭いね」

「アハハハ…、そうだね」


僕はこのズメイ国の王族の、末にあたる王子だ

普段は王子として国民に振る舞ってるけど

こうやって、ただのアルとして接してくれる2人と楽しく過ごしてるのが

何よりの楽しみだ


そこに


「はいよ!」


頼んだ果実がテーブルにドンッと置かれた


「サンキュー!」


真っ先に食べるガント


「…あ?」

「? どうしたの?」

「コレ、いつもよりも甘ぇ」

「へ〜、どれどれ」


僕とレイヤも食べる


「! 美味い!」

「美味しい!」

「スゲェッ!何でこんなに甘いんだ!?」


会話を聞いてた店主が近寄ってくる


「ソレはな、あの森で取ってきたんだよ」

「あの森?」

「ほら、奥には入るなって言われてる森さ

 偶に知り合いに頼んで少し入ったとこで取ってきてもらってんだよ」

「それってさ、ただの作り話だろ?」


周りの客も話し始める


「あんまり果実を取り過ぎない様にってなぁ

 なんでも奥には、見た事無い果実があるって噂だよ

 でも数が無ぇから、入るなって話だ」

「俺は神様が祀られて神聖な場所だから近寄るなって聞いたぜ?」


古くから言い伝えられてるらしいけど、確かな事を誰も知らない

王族の僕でも御伽噺としか教えられてないし…


「…なあ?」


ガントが呟く


「俺達で行ってみねぇか?」