1…始まり(3)

二宮朔side

僕は二宮朔(ニノミヤサク)

白狐現副長で情報収集を担当してます

今日は倉庫で過ごすつもりでいました

蓮からも


『(学校の)本借りてから行く』


この連絡があったので倉庫で待ってました

蓮の場合、本を買ったり学校以外で読もうとするとちょっとした騒ぎになりかねるので

でも


『倉庫に行かねぇ』


そう連絡があり、それなら僕達もと

行く用意をしてたところ


「あー!今井の(授業の)単位忘れてた!」


春也が慌て出しました

学校に着き、春也が走って教室に向かう中、僕と紫音がゆっくり後を追って

途中で蓮にも合流してたところ、肝心の今井先生が不在だった様で


「ウソ⁉︎なんで⁉︎今日実習じゃないでしょ!?」


ガ〜ンなリアクションをしてます


「転校生が来て、ソイツ紹介だけして今日は実習って」


…来た意味がありませんね


「転校生!?実習!?ウソ〜!?」


それにしても煩い…


ここで僕がメンバーの紹介をします

煩いのが前原春也(マエハラハルヤ)

これでも一応、白狐現幹部


僕とのんびりしてるのが神谷紫音(カミヤシオン)

白狐現幹部

無口で蓮以外とはあまり喋りません


そして桜井蓮

白狐現総長です

総長ともなれば、いずれは…白狐の姫を迎える立場

中学からの付き合いですが、一切彼女をつくる気はありません

だからある時、聞いてみました


『彼女はつくらないんですか?』


蓮は悲しい表情で


『俺にはもう、決めてる女がいる。』


決めてる女性がいる

でも、今まで姿を見た事が無い

今は離れてるという事でしょうか


『その人は今どこに?』

『…俺が7歳の頃から行方不明なんだ』

『え…』

『神崎栞、幼馴染で紫音の姉だ。俺や紫音の目の前で誘拐された』


そんな事が


『紫音が喋らないのは、その事件が原因ですか』

『ソレもある。

    当時はマスコミやらに事件の事を聞かれたり、親戚の中には財産を狙う奴等もいて

    周囲の所為で人間不信になって、誰とも関わりたくないって

    お前と春也にも、直接話せるまで随分時間が掛かったよな』

『そう…だったんですね。

    蓮はそんな幼い頃から、その人が好きなんですか』

『自覚したのは中学入ってからだ。アイツ以外は、考えられねぇよ。

    このまま見つけられずに歳を重ねて成人して、いい年した大人になっても、

    アイツ以外と一緒になる気は無い』

『紫音は…』

『知ってる。紫音はあれから別人になっちまった。

    俺にさえ、無理した笑顔しか見せてくれねぇ…見せれねぇんだ

    紫音が本来の姿に戻るとしたら、栞の事だけだ。

    その紫音が俺になら任せられるって…

    もう後には引けねぇ。引くつもりも無ぇがな』


この時、蓮がそれまでに見せなかった、男として求める目を見せた

僕も決めました

彼に、この真っ直ぐな目と意思を持つ彼に着いていくと

蓮の幼馴染で、紫音のお姉さん…栞さんを2人はずっと探してます


『栞は絶対に見つける。犯人が分かれば、俺が潰す。

    死んだ方がマシだと思う位の地獄を味合わせてやる』


その目、その雰囲気は…まるで、狂気

この時程、蓮に恐怖心を抱いた事はありません

紫音にも


『その時には俺も混ぜてよ』


初めて紫音から聞いた、感情が籠もった言葉でした

僕にも何か、


『僕にも手伝わせて下さい。情報収集なら自信があります』


事情を知った春也も


『俺も、俺にも出来る事があれば何でもする!』


紫音は蓮を見て、蓮が頷くと僕達を見て


『ありがと』


と頭を下げました

慌てて頭を上げてもらうと、ほんの少しだけ微笑む紫音

全員の心が決まりました

栞(姉さん、さん)を必ず見つけ出す

 

 

蓮side

朔達と合流した

あの後、走り去った神凪は追わず図書室に居た

ここ(久八高)なら、転校生は話題になる

わざわざ調べなくても、勝手に話が耳に入ってくる

教室には行く気無ぇし、屋上行くか

職員室にある屋上の鍵のスペアを持ってるから、好きな時に行ける


「屋上行くぞ」

「そうですね」

「…」

「行く〜、あっ今井が来たら俺に連絡して!」

 

 

屋上で気持ち良く寝る…筈だったけど目を開ける

複数の気配が近づいてる

ここには来させないって言ったのに

さて、どうするか…どうしよ

屋上に隠れるとこなんて無い、とりあえずフードを深く被る

足音がドアまで近づいてきた

チッ…正、覚えてろよ

直後、屋上の扉が開いた

 

 

蓮side

屋上まで歩いてる時


「今日は天気が良いからずっと屋上に居ても良さそうじゃない?」

「屋上に居るのは今井先生が教室に来るまでの間ですよ?

    と言っても、春也だけが戻ればいいだけですから、

    僕達だけでも屋上でのんびりしてますか」

「…すみませんでした」


まあ確かに、今日は天気良いしな

本も読めるし

話をしていたら屋上まで着いた

鍵を取り出し、ドアノブを掴むと僅かに動いた


「!?」


おかしい、開いてるのか

屋上は基本閉まってるはず


「僕等以外の誰かが勝手に居る」


警戒心を出す春也


「…」

「一体誰が」

「行くぞ」


俺の…俺達の人生が、変わる