26…おかえり

蓮と一緒にいるのを選び、気付けば朝に

幹部室を出れば、紫音は倉庫内のソファで寝てる

近寄って


「紫音…」


肩を揺する


「ん…」


薄らと目を開く紫音

私の隣に蓮がいるのを見て


「…良かった」


微笑んでくれる


もし、紫音が私と一緒にいてくれてなかったら

蓮とは…、二度と会えなかった

それ以前に、紫音からも私の記憶を消してたら

私は既に死んで、この世にいない

紫音がいたから、どんな時でも側にいてくれたから

今の私がいて、蓮と

これから先…一緒に未来へ進める


「「紫音」」


思わず蓮と顔を見合わせる


「2人揃って、どうしたの…」


紫音を横目で見て、お互いに微笑む

言いたい言葉は、《一緒》って分かってるから


「「ありがとう」」


紫音は目を見開き、ニッと口角を上げながら泣きそうな表情に


本当に…ありがとう

 

 

倉庫を出て、家までの道をのんびりと歩く


「そういやぁ蓮、朔に報告しとかないと」

「!そうだな、心配掛けちまった」


蓮が朔に電話すると、春也も一緒に居るらしくスピーカーにしてみる


『3人の声が聞けて良かっ『お〜い!紫音!栞!昨日は楽しかったんだぜっ?

 今度はぜってぇ会おうな〜!』』

『春也、少しは静かにして下さい』

「おう!次はぜってぇに行くから、すぐに潰れんじゃねぇぞ!」

『ゲッ…、蓮から聞いてんのかよ。おい朔っ!』

『蓮?』

「おう」

『おい無視すん『無事に記憶が戻って良かったです』聞けよ!!』

「おう、ありがとな」

『蓮まで何普通に喋ってんだよ!?』

『紫音、栞さん。今度こそ、久し振りに会えるのを楽しみにしてますね』

「おう!」

「うん」

『じゃあ、これで『おい朔!何勝手に切ろうとして『プツッ』』


ツー、ツー、ツーと電話が切れた

紫音は笑顔で

 

「久し振りに声が聞けて良かった」


蓮はグッと背伸びして


「よし、さっさと帰るか」

 

 

蓮side

暫く歩き、家が見えてきた

そういえば…


「親父達の記憶はもう戻ってんのか?」

「まだ」


栞が桜井家と神崎家の真ん中に立つ


「蓮が朔と春也で居酒屋に行ってたから、その帰りでいい?」

「朝帰り…、まあ仕方ねぇな。頼む」

「ん」


栞がそれぞれの家に片手ずつ翳すと

家を包む赤いドーム状のシールドがポロポロとカケラになり、空へと消えていく

栞が両手を下ろすと、俺達に顔を向け


「帰ってきたよ、私達の家に」

「「おう(うん)」」

 

 

玄関を通れば、春が率いる組員達が


「居酒屋に行ったっきりで、どこに行ってたんですか!?」

「心配したんですよ!」


組員達が騒がしくしてると


「お前ら少しは落ち着け!」


春の声で、辺りがシーンと静まる


「3人とも、おかえりなさい。

 朝ご飯がまだなら、今なら間に合いますよ」


きっとこの中で一番、私達に質問をしたい筈なのに

春に目を合わせ


“ありがと、春”

 

春はニコッと笑顔で


“いいえ”


春の言葉で、組員が持ち場に戻っていく

春も仕事に戻っていった


そして

部屋に入れば、お母さん達が


「アンタ達、居酒屋に行ったっきりで連絡も無かったから心配したわよ?」

「酒も良いが、程々にしとけよ」

「「「はい」」」

「栞、蓮や紫音が一緒だからよかったが

 これからはちゃんと父さんか母さんに連絡をよこすか

 あんまり遅くなり過ぎずに帰ってきなさい」

「はい、ゴメンなさい」


一通り謝ると

お父さん達は笑顔で


《おかえり》

《ただいま》