27…蒼鷹の初仕事

ある日

家で紫音とくつろいでると


“鷹”


頭に直接、声が聞こえる


“何?春”

“若が今から蒼鷹(紫音)と来いと”

“分かった”


「姉さん?」

「紫音、これから楼のとこに一緒に来て」

「…分かった」

「手、繋いで」


《テレポート》

瞬けば、桜井組の自室


「さてと着替えようか」


クローゼットからいつもの服と紫音の分を取り出す


「はい、これ着て」

「コレが俺の?」

「うん、春に頼んでおいた」


私と同じ黒いローブ


「ソレを着てる間は、私は鷹、紫音は蒼鷹」


フードを被り


「じゃあ、行くか」


楼の部屋の前に着くと


「入れ」


部屋には楼と春

楼は柔らかい雰囲気は無く、桜井組の組長として対峙してる


「鷹、蒼鷹」

「「はい」」

「これから、敵対してる鬼島組を潰しに行く。

    薬や暴行事件を繰り返してるとこだ、遠慮はいらねぇ」

「桜井さん、俺は何をすれば?」

「実戦経験を積んでこい。俺達は15分後に出る、2人は先に行って見取してこい」

「ミトリ?」

「建物の見取り図とかあるだろ?

    鷹が建物の構造や人の配置・動きを把握して俺に情報を送る」

「行くぞ」

 

 

紫音side

姉さんに促され、俺は自室に戻る

部屋に戻ると姉さんが俺に振り返り


「蒼鷹」

「はい」

「今日のお前の仕事は、俺の仕事を見る」

「…見る?それだけ?」

「これから先、お前が踏み入れる世界を、ちゃんと見ておけ。

    今日は何もせず、俺から離れるな」

「はい」

「よし、行こうか」


《テレポート》で鬼島組の屋敷の近くまで移動した


「今は、普通の道に移動したが、普段なら目標付近の屋根に移動する。」

「じゃあ何で、普通の道に?」

「最初から屋根にいたら、お前がビックリするだろ?」


確かに


「じゃ、移るぞ」


瞬間、足場が屋根に変わり、思わず体制を崩す


「うわっ!」


落ちると思ったら、途中で止まり、ゆっくりと戻る

サイコキネシス(念動)》か


「ゴメン」

「初めてなんだから、しょうがない。さて、仕事だ」


姉さんが鬼島組に意識を集中する

今やってるのは《リモートネスクレヤボヤンス(遠隔透視)》

そして、建物は地面で繋がってるから

サイコメトリー(接触感応)》で透視してる物体等の情報を読み取る


「肩に手、乗せて」


《テレパシー(精神感応)》で姉さんの見ているモノが俺にも見える

他人にイメージを送るには、体に触れてないと駄目らしい

俺にイメージを送りつつ、楼さんにも情報を伝えてる

そして鬼島組の屋敷の窓にとまってる鳥を指差して


「あの鳥の体を借りるから、少しだけ頼むな」


《リプレイス(他の生物への憑依)》で姉さんが俺の腕の中に倒れる

恐らく、鳥がとまっている窓の部屋で誰かが喋ってるんだろ

周囲に動物がいなければ《メタモルフォシス(動物への変身)》を使うらしい

今、姉さんはいくつもの能力を同時に使ってる

仕事をする度に、いつもこれだけの事をしてるのか


「…ん」


姉さんが戻った


「ありがと」

「どうだった?」

「組長と側近が話してた。薬の出所とこれからの事…桜井組を潰そうとしてる」

「!?」

「動く前に、潰してやる」


数分後、鬼島組周辺に桜井組が来た


「俺等も行くぞ」


俺と姉さんは《ヒュプノ(催眠)》で鬼島の屋敷に入っても誰にも気付かれない

周りを見れば、至る所で組同士の抗争が

思わずゴクッと唾を飲む


これが俺が入る世界


姉さんは組の人間だけで片付く様なら、基本何も手出しはしないらしい

サイコメトリー(接触感応)》で武器や危ない思考を持つ人間がいれば

《プレコグ(予知)》で防ぐ

でも、やりたい時はある様で《ヒュプノ(催眠)》で幻覚、幻惑を見せる

時には痛覚とかの身体的感覚も相手の精神に与えれるから、殺す事も出来る

そして基本的に使うのは《サイコキネシス(念動)》

攻撃や身体能力の強化、戦闘の第一線で使える力だ


鬼島組との抗争はすぐに終わり、俺と姉さんは一旦桜井組に戻った

今日は見てるだけって言われてたけど…見てるしかなかった


この世界に入ると、自分で決めた

姉さんを護るって決めたけど、姉さんは強い

逆に俺が護られそうだ

そう考えてたら、いつの間にか楼さんの部屋に居た


「ご苦労だったな」

「いえ」


楼さんが俺に目を合わせる


「蒼鷹」

「は、はい」

「どうだった?」

「…圧倒されました。

    決して、軽い気持ちで…護ると言った訳ではないのに…

    そもそも、俺が護られそうで…」

「まあ、初めてだからな。無理もない

   それに鷹に護られるのも、お前の役目だ」

「?  どういう事ですか?」

「コイツは今まで仕事は一人でやってきてる。

    春もサポートしてるが、側にいる訳じゃない。

    そこで、お前だ。

    コイツは平気で無茶する、でも…お前が側にいれば」

「…ストッパー」

「チッ」


あ、姉さんが舌打ちした


「蒼鷹、鷹を頼むぞ」

「はい」

「今日はもういい、帰って休め」


桜井組から帰ってきたら、疲れがドッと来る


「お疲れ様、休んだら?」

「そうする」


俺の初仕事?が終わった