26…雫の謎

旅行から帰ってきて

ひとまず倉庫に行き皆で話してると


「あ、あ…あーーーーー!?」


春也の叫びが倉庫に響いた


「どうしましたか」


春也は朔に顔をギギギ…と動かし


「夏休みの課題…!」

「?  終わらせてますよね?旅行に行く前に終わらせると決めてましたから」

「1つ、忘れてた…」

「何を?」

「読書感想文!!」

「…さて、荷物を片付けますか」

「いや待って!?助けて!?頼むから見捨てないでーーー!!!」


2人のやり取りを無視してると


「雫は!?大丈夫なの?忘れてる課題とか!!」

「お前と一緒にするな」

「ウソ〜〜〜」


春也が落ち込み、朔と紫音が弄る

前にもあったな、この状況

すると、蓮が私の腕を掴みグイッと引っ張る


「!」

「…ちょっと来い」


紫音は気づいてない

そのまま、蓮の部屋に連れてかれる

 

部屋に入ると、ドアを背に私を見る蓮


「何」

「…」


スタ…スタ…と無言で近づいてくる

何だよ

後ろに下がり、距離を取るが

トン…と背中に壁が当たる

しまった

そう思った時には遅く、蓮と壁に挟まれる

何なんだ

思わず溜息を吐きそうになると


「雫、お前一体…何だ」


いきなり何を言う


「久八高に転校してきて、何故か男のフリしてた

    女なら喜ぶだろう白狐の姫も頑なに拒んだ

    屋上で俺の蹴りを避けもせず、相殺した

    紫音だって、お前が変えたんだろ…いや変えたんじゃない、本来のアイツに戻したんだ

    そして最近の紫音の戦い方

    俺等…いや高校生の喧嘩の仕方じゃない

    大人の…組の人間のやり方だ」

「…」

「雫、お前…ただの女じゃねぇよな?」

「…」

「答えろ」

「…」

「答えろよ!」


ダンッと蓮の拳が、顔の横の壁を叩く


「コレも…普通の奴ならビビってる。女なら尚更、何で平然としてる

    お前は一体、何の目的で…久八高に来た。」

「…」

「……何で、何も答えてくれねぇんだ。

    もう、俺に関係無かろうがどうでもいい。

    ただ知りてぇんだ、お前を…」

「前にも言った、私は…いつか居なくなる。お前等の前から消えるんだ

    だから何を教えたって無駄だ」

「消えさせねぇっつったら?」

「お前がどう考えようと、何をしようと私が居なくなるのは変わらない」

「何でだ、何でそんなに俺達の前から消えようとする」

「私は、お前等みたいな人間の側で生きる人間じゃない」

「俺達みたいな?」

「これ以上は話さない。退け」

「断る」

「退けよ」

「断るっつってんだ」

「退けよ!  !?」


蓮の手が私の頰を包む


「何で、そんなに辛そうなんだ」

「!?」

「ずっと気になってた。表に感情を出さなくても、辛そうだ

    …お前が抱えてるもん、少しでもいい、俺にも「言える訳ない」」

「私に関わってれば、ロクな事にならない

    お前自身の為にも、これ以上…私に関わ「煩え」」

「!?」


ギュッと抱き締められる


「聞いてりゃ全部、俺達を…俺を護ろうとしてる様にしか聞こえねぇ。

    自分の身は自分で守る、それ位は出来る

    雫、お前は何かに怯えてる、

    わざと自分を遠ざける様に仕向けてる。」

「…」

「俺達は強い、だから…もっと頼れ。」

「頼る?お前等を?」


グッと蓮の胸を押し、距離を取る


「それこそ、無理な話だ」


ドアへ歩こうとしたら、ガシッと腕を掴まれる


「まだ話は終わってねぇ」

「これ以上、話す事は無い」

「れ〜ん?雫〜?」


春也が呼んでる


「…ッチ、逃がさねぇからな」


蓮は先に出て行った


「…これだけ話してても、何も思い出さないか」


蓮を見てても、懐かしいとか…そんな感情は無かった

どうやったら思い出すんだ

 

 

?side

とある部屋に1人の男

男の目先には、女が多くの人を殺めてる映像が流れている

コツ…コツ…

後ろから男に近寄ってくる女


「マスター、見つけました」

「思ったより手間取ったな。やっと見つけた…俺の人形、すぐに迎えに行ってやる」


男はニヤッと口角を上げ、映像を楽しげに観ている


「今すぐには無理です、お待ち下さい」

「何故だ」

「力を使われ、連れ戻すのは失敗します」

「ならば、どうする?」


男は少しだけ女に振り向き、目を細める


「人形には、大切な男がいる筈。

    記憶を消す時、泣いて呼んでいましたから。

    確か…レンと」

「ソイツをどう使う」

「人形の弱みは、そのレンという男。記憶を失ってても、側にいる様です」

「ソイツを狙えば、自分から戻ってくると?記憶を失ったままでか?」

「タイミング良く思い出させればいいのです。その後に男を使えば、簡単に事は運びます」

「出来るのか?お前はただのコピーだ。オリジナルに勝ると思ってるのか」

「……っ、はい。お任せ下さい、必ずマスターの元へ連れて参ります」

「クククッ、アレは…アレは俺の物だ…!」


部屋を出て、長い廊下を歩く


「私は、あの女のコピー。

    コピーだから…使える人間だから、マスターの側に置いてもらえる。」


手を目の前に挙げ、グッと握る


まだ完全じゃない

完全な力を手に入れれば、マスターはあの女よりも私を選んでくれる


「あの女の全ての力を奪えば…殺してしまえば…!」


ニヤァと思わず口角が上がり、歩調も早くなる


「待ってなさい、私が必ず殺してあげるから!」