3…常連

会場から出る時、まだ何組かは残ってるのに気付く

何かあるのか?

立ち止まってると、スタッフが近寄る


「お客様、どうされましたか?」

「…いえ、まだ残ってる人達がいるなと」

「あの方々は常連様なんです。常連になられなすと、特別な催しに参加出来ますので」

「特別な催し?」

「はい。ぜひ参加して下さい」


どんな…と聞いても無駄か

俺はニコッと笑顔で


「では、また参加します」


会場を出て、車に乗って一息つく


「1、2回参加するだけなら普通のパーティーの様ですね」

「……ああ」


栞さんはシートに頭をつけ、力を抜く


「色々と、お疲れ様でした」

「…春も、お疲れ」

「家に着くまで寝てて下さい」

「……ん」


数分もしない内に寝息が聞こえる

無理も無い

大勢が集まる場が苦手な上に接触してくる人達を観察し

俺が口にするモノを警戒していた

今回の仕事は、予想以上に栞さんに負担が掛かる


「本当に、お疲れ様です」

 

 

家の裏口に車を停め、誰にも見られない様に忍び足で廊下を歩く

俺は自室に、栞さんは姐さんの部屋で着替えてメイクを落とす


それからも2、3回参加したが、何事も無く終わった


「薬すらまだ出てこねぇか」

「はい

 参加者には大方接触していますが、目ぼしい情報は何も」


若が栞さんに目を向ける


「飲食も普通か?」

「はい、至って普通のモノが出されています」

「分かった。引き続き調査しろ」

「「はい」」

 

そして、4回目のパーティーが何事も無く終わり

出入口に向かってる時


「すいませ〜ん!」


斜め後ろからの声に顔を向けると、ドンッと女性がぶつかってきた


「もう帰られるんですか〜?もっと話しましょうよ〜!

 出来れば2人っきりで〜!」


酒と、キツい香水の香り

女性が居たであろう場所に目を向けるが誰も居ない


「恋人はどうしたんですか」

「恋人?あ〜、彼は席を外してるわ〜。それよりぃ!」


女性はニヤァと妖艶な笑みで栞さんを見て


「この子よりも私の方が楽しくて飽きさせないわよぉ?」


上目遣いで俺を見る


“春、男が近付いてくる“


余計な面倒事は避けたい

女性の肩を掴み、グッと離す


“すみません”


断りを入れてから栞さんの肩を掴み、女性に見せつける様に抱き寄せる


「彼女以外、考えられないので」


女性が悔しそうな表情をする

恋人の男性に連れられていくのを見て、会場を後にした


車に戻り

思わず栞さんが震えてないか視認する

ホッと息を吐き


「すみません、急にあんな事して」


栞さんはニコ…と微笑み


「大丈夫。春は、大丈夫だから」

「…ありがとうございます」