囚われの姫 4

1…捜査

俺は酒向 春

桜井組に属し、組の影である鷹…栞さんのサポートをしてる

…いや、していた

鷹はもう、存在しない

俺が、消したんだ

 

 

ある日

仕事関係の書類を持ち、若の部屋に


「若、書類を持ってきました」

「入れ」

「失礼します」


襖を開ければ、机に向かい書類仕事をしてる若が

近寄って、机の片隅に書類を置く


「本日の分はコレで以上です」

「分かった」

「では」

「酒向」

「はい」

「30分後、来い」

「…はい」


部屋を出て、自室へ向かう

…今回は、どんな案件なのか

組関係なら《仕事》と言われるが、《来い》とだけ言われた

つまり、今回は組として動かない

そういう案件の時、情報を把握するのは極限られた者だけ

他に知られない様、秘密裏に処理しなければならない仕事という事だ


指定の時間

若の部屋に入れば鷹の姿の栞さんが既に居る

栞さんの隣に並ぶと、若が案内状を取り出す

パッと見でも分かる位の豪華な案内状だ


「1週間後、このパーティーに潜入してこい」


《お互いの仲を深めよう!カップル限定パーティー!!》


「この不定期にやってるパーティー

 違法ドラッグが出回ってるとサツ(警察)が情報を掴んだ

 だが奴等はそれだけじゃ動けねぇから、こっちに依頼が来た

 パーティーでドラッグを見つけ、出来れば売人を捕まえる

 『パーティーに来てたら偶然、薬の売人を見つけた』と通報しろってよ

 …しかも、」


案内状を開けば、1枚の紙に携帯番号が


「通報する前に必ずそこに掛けて、指示を仰げと言ってきた」


若はニヤ…と口角を上げ


「どういう事か、分かるか?」


若が連絡を取る警察関係者は1人だけ、警察のトップ…つまり警視総監

そんな人がわざわざ番号を俺達にも伝え、かつ通報する前に掛けろという事は…


「そこに出入りしてる、ある人物と関わりがあるって事ですね

 しかも、その人物が薬を貰っている

 もしくは売人だと、おおよその検討がついている

 ソイツだけを奴等(警察)に捕まらない様に匿え、とでも言う気でしょうか」


つまり…


「情報提供者か、…身内か」


警察トップの身内が、ドラッグが出回ってるパーティーに出入りしてるなんて

世間にバレたら…

だが、


カップル限定なら、自分よりも蒼鷹が適任だと思うんですが」


蓮様は組に属していない為、関わらせる訳にはいかない


「いや酒向、お前に任せる。案内状の注意書きを見てみろ」


案内状を渡され、見てみると


「!」


隅に小さく書かれてる


「…歳の差カップル限定……」


若は溜息を吐き


「お前と鷹にしか出来ねぇだろ?」


栞さんを見れば、コク…と頷く


「分かりました」

「頼むぞ」


煌びやかな案内状と参加費用からして、来るのは恐らく…上流階級者

それならドレスコードが必要だ

…それに、栞さんと恋人のフリをしなくちゃいけない

薬と売人がすぐに見つかればいいが


「ああ。そういやぁ、尻尾を掴むまでは出席しろよ?」

「……え」

「依頼を受けた以上、薬と売人…どっちも見つけてこい」

「…分かりました」

 

 

1週間後

郊外に位置する豪邸の前で車が停まる

車内から外を伺えば、予想通り

鮮やかなドレスで着飾ったり、どう見ても格式の高い人達ばかりだ


「行こう、雫」


1週間みっちり練習したお陰で、口調と呼び方はスムーズだ

栞さんは微笑んで俺の手に自分の手を乗せる

 

潜入捜査、開始だ